インテンシティ 新書判 上 みんなのレビュー

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投稿者：ひろぐう　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

　プロットそのものは取り立ててどうというほどのものではない。ほとんどのアイディアは彼の過去の作品の中にあるものの焼き直しといってもいい。しかし、そのストーリーテリングの神業的巧妙さ、読者の心臓をわしづかみにして物語の世界の中に引きずり込むパワーというものは尋常ではない。小説としての完成度も最高級で、サイコ／ホラー小説のひとつの到達点といってもいいほどの出来栄え。
　特に面白いのは、追う方のサイコと追われる方のヒロインの生い立ちが、通常とは逆であることだ。健気に見ず知らずの少女のために自己を犠牲にして奮闘するヒロインの方が、歪んだ家庭の中で心に傷を受けながら育ち、一方のサイコの方は何の問題もない家庭から生まれた、ナチュラル・ボーン・キラーのような怪物であることだ。そのことが、マザコンやストーカー系の凡百の異常者よりも、理解不能な殺人マシーンのようなコワいサイコ像を作り上げることに成功している。