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紙の本
虐待の状況、そして背景、原因など母親の虐待をさまざまな視点から描かれた秀逸のルポ
2005/08/27 18:39
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:チャミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
今まで、虐待を取り上げた本が数々出版されているが、これはとても丹念に取材し、1件1件の事件を丁寧に描いた秀作。メインは母親たちによる虐待。
登場する母親は4人。最初に登場する「亜紀子」の話はとても悲しいエピソードだ。再婚した継子をしつけようとして、それがいつのまにか虐待になり、ついには子供を死に至らせてしまう。継母いじめと世間に思われたくなくて、自分の子供と同じように怒ってあげなきゃならないから…勝手でしかし、一生懸命になろうとすればするほど、母親の追い詰められていく様子が痛々しい。。。そして、母親の虐待の背景にあるのは、子供の時に受けたいじめ、そして再婚を失敗させたくない気持ち、夫への気遣い…。
虐待はいけないこと。虐待する親っていったい何を考えているんだろう。子供の虐待のニュースが流れるたび、私は疑問が湧いてくる。そこまで、子供を痛めつけなくてもいいじゃないか…、そして疑問は怒りに変わる。。。
だが、この本に登場する母親たちはどこにでも、友達の中にでもいそうな平凡な母親たちばかり。劣悪な環境で育ったわけでもなく、貧困にあえいだ生活をしているわけでもない。
ただ、子供のしつけが行き過ぎた…歯止めがかからなくなった、夫に振り向いて欲しかった、両親からのすれ違った愛情をどう受け止めていいかわからないなど、ほんとうに身近でありふれた生活なのだ。
著者が、最後にこう記している。
「母親は家庭の中で子供と向き合い逃げ場がないが、父親は仕事をはじめ外に逃げ場を持っている違いは大きい。虐待で母親たちが敏感に反応しはじめているのに対し、父親たちの自覚のなさが、皮肉にも父親たちの虐待を見えにくくしている。父親たちを虐待問題と正面からむき合わせ、意識を変革していくことがもっと叫ばれていい」
そう、虐待は母親だけの問題ではない。母親を裁いたところで虐待は解決しない。父親も自覚し、虐待から目を背けず、向かいあわなくては幼い命を守ることは不可能だ。そして、医療、教育、司法などが虐待に関してもっと積極的にかかわることを著者は希望している。
これは、子育てをしている母親だけでなく、父親にも読んで欲しい一冊である。
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