紙の本
賢者は何処へ?
2001/05/22 00:54
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投稿者:加賀 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ケネディが集めた「最良にして最も聡明」なエリートの「賢者」たちは、ベトナムの歴史的条件を全く理解せず、自分たちの能力に疑いをもたず、偏見に支配され軍事的経済的攻撃のみを信じ大破壊を行った最低の「愚者」であった。
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ずいぶんと昔の本なので、少し季節はずれのような印象がしますが手に取ってみました。ベトナム戦争の事情をほとんど知らないものにとってはなかなかとっつきにくい本でした。文庫3巻で長いし。それでも何かを感じ取ることができる本です。
著者は従軍記者でもあったので、ベトナムの泥沼が描かれるのかと思っていたら、政権内の人物描写と争いが、おそらくは意図的に延々と描かれいました。
優秀な個々人が、強烈な自己意識のもと自身の権力を保とうとする努力が総体として道を誤らせたということなのかもしれません。個々の権謀というよりも権力一般が必ず内に含む陥穽のようなものな印象を受けました。
あまり軽々に判じるものではないのかもしれないが、読み進むにつれて感じる印象はイラクとの相似性です。(ブッシュ政権のメンバーは、大統領含めてケネディ政権のメンバーほど優秀だとされてないようですが...)
「ジョンソンは自信に欠けるがゆえに忠誠を求めたが、ケネディは自信に満ちているがゆえに、忠誠を求めた」
ハルバースタムの描くジョンソン大統領が必ずしも正しいと限らないとしても、またケネディとの比較があまりにも不公平であるにしても、どんなレベルの組織でもこのような言ってみれば違う形の「忠誠」があるように思います。
ベトナム戦争の本というよりも、ワシントンについての本。ベトナムで何があったのかを知るためには別の本も読まないといけないですね。
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知的興奮に満ちた本です。最良で優秀といわれたJFケネディとその閣僚たちディーン・ラスク、マクナマラ、マック・バンディ、ウィリアム・バンディといった男達が世界を変えようと戦うノンフィクション。それぞれの育ち、ベトナム戦争における苦悩が書かれています。
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インドシナ戦争の教訓に何も学べずベトナム戦争をぐだぐだ続け、国民を殺しまくった「優秀な人たち」の情けない一代記・全3巻。市民意識がアメリカに比べ四半世紀ぐらい遅れている日本なら、この本の内容あたりで今ちょうど親近感がわき肌感覚に合うんじゃないでしょうか。
こういう良ノンフィクションが、今後、アメリカはもとより日本でも決して世に出ることはないです。
文が長いから、売れない。
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書名は聞いたことがあったけど、どういうわけかアメリカの青春学園小説と思い込んで全く読む気なしだった。が、ベトナム戦争のノンフィクション物だと知って、古本屋で探し出した。登場人物の描写が濃厚で司馬遼太郎の小説っぽい。わかりやすい。一方で出来事に関しては散漫な感じがしてとらえにくい。分析はおもしろい。
・当時は共産主義に対して生ぬるいと批判されないことが政治家の行動原則だった様子がよくわかった。「ベトナム戦争はマッカーシズムの対価」というのは印象的だった。
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『なぜ、優秀な人々があつまっても、泥沼の戦いを防ぐことができなかったのか?』
これが、デイヴィッド・ハルバースタムの名著「ベスト&ブライテスト」に一貫して流れる通奏低音である。
この本の中には、煌びやかな経歴を誇る俊英・秀才、そして策士が次々と現れてくる。そして彼らが様々な糸で絡み合いながら、歴史は紡がれていく。
この本を読むたびに思うのは、すぐれた「編集力」を持てなかった組織の脆弱さである。
組織は、様々な人の集合体である事はいうまでもない。組織を効率的に稼動させるには、統制色の強い、ヒエラルキーを内包した組織体系の中でフローを構築する事になる。これはとても強固な仕組みで、日本でも、これだけ批判がありつつも、なかなか変質しない中央/地方政府組織を見れば明らかだ。
そういう中で「個の自発性」だとか「発想の転換」という事が叫ばれても、そもそもそれは、政府系組織にあるような官僚的組織には、そもそも相容れない、厳密に言えば「一部の人以外の大多数」には相容れない、のだ。
「一部の人」とはだれか?無論、役責者だ。
この「ベスト&ブライテスト」の中にも、多くの役責者が出てくる。いや、殆どがそういう人達の話だ。
「ごく一部の」役責者が「発想の転換」をするのに、果たして官僚的組織は適しているのか?というパラドキシカルな問題がここでは浮上してくる。
「編集」という概念は、ここで決定的な役割を果たすと私は思う。
無論、従来より「編集」という営為は官僚機構の中でも行なわれてきた、それもかなり効率的に。しかし、それは本当の編集ではなかったのではないだろうか?
かつて「Web2.0」という言葉が巷間に広まったが、そのコアの考え方、根底には「利他」という考えがあるように思う。私が一時期深く関与した「業務用オープンソース」のビジネスモデルが、最も近しいように思う。
うまく結論めいたものを導き出せないのだが、そういう発想が仮に広まっていたとしても、「ベスト&ブライテスト」の中にある彼らが、アメリカをヴェトナム戦争から救う事は出来なかったような気がするのだ。
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絶版のため中古を購入。「コールデストウィンター(朝鮮戦争」を先に読んでいたのだが、「コールデスト…」の方は、戦争体験者のインタビューによる戦争場面の再構成が随所に挟まれていて、それがスパイスになっている気がしたが、こちらはあくまでも戦場の話は出てこず、ワシントンのどたばたが話の主流。それをどうみるか、なんでしょうね。一般にはこちらの評価の方が高いのでしょうが、私には冗長さが際立っているように感じました。訳文はよくこなれていて、名文だと思います。
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[目次]
第1章 ケネディとエスタブリッシュメント;
第2章 リベラルと非リベラルのはざまで;
第3章 凡庸にして無難の効用;
第4章 ワシントンに参集した超エリートたち;
第5章 賢者の愚行の発端;
第6章 合理主義と行動の時代;
第7章 反共主義という幻想の遺産;
第8章 ベトナム・コミットメント;
第9章 分岐点・ケネディの妥協;
第10章 奈落に向かう渦巻き
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ケネディが、そしてのちにジョンソンも学ぶように、軍部はいったん敷居をまたがせると、一筋縄では言うことを聞く相手ではなかった。その後あらゆる時点で、軍部による見通しは誤りを犯したが、そのことで遠慮をするような軍部ではなかった。普通ならば、彼らは信用を失い、その圧力も減退していくものと考えられるのだが、軍部については事は逆転であった。圧力はむしろ高まり、要員、兵器、攻撃目標すべてについて要求は増大していった。核兵器の使用に至らぬ限り、軍部のツケはすべて文官に回されるのである。