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日本人の食と世界の食のこれから、食料生産の検討…といった、最近とみに取り沙汰される「食料」についての入門兼研究書としては良い著作に思う。農地獲得に走る先進国とアグリビジネスに賭ける後進国、クジラ、マグロといった漁獲量問題は、どこかで一度は耳にしたことがおありだろう。食の今昔を知りたい方にもお勧め出来る。
【蛇足】
世界三大料理と言えば、中華、トルコ、フランス料理であるが、日本人ならばこの3つが並んだ時点で酷く違和感を覚えられるのではないか。西洋の料理は、なににつけても小麦、ジャガイモ、トウモロコシ、肉であり、その食文化の未熟さは今更取りあげて批判することもないほどだ。
世界中の料理が中国の影響を受け、香辛料によって左右されてきた以上、独自の発展を遂げた食文化はほぼ存在しない。パンがどうのと言ったところでその食文化の起源はエジプトであるし、食器などで食文化を表現しようとしたところで、未だに手掴みで食べる事も多く、マナーと言いつつも立食も一般的な西洋の食文化は、中華料理に大きく水を開けられている。そもそも、フランス料理はイタリア料理からの派生に過ぎず、これを認めるのであれば、日本料理を入れる方が適当だろう。この三大区分は、西洋、東洋、中東と、1つずつ無理して選び出し、偉ぶっているだけである。本来ならば世界一大料理とすべきところだ。
米も小麦もシルクロードを通った以上、一大料理、一大食文化に対して批判は困難だろう。そのような中で、新たな食文化、主食として認知されている物がある。それは、小麦食文化の一部ともみなされるが「即席麺」である。既に米、小麦に継ぐ地位を確立しており、これが食文化、主食としての地位を確立したと考えるならば、世界1と1/2料理として、日本料理(インスタントラーメン)を掲げることもできよう。
様々な食文化を持つということは、様々な食材を食べるということだ。つまり、様々な食材を得なければ食文化は成立しない。昨今の日本を取り巻く食についての諸問題をこれを機に考えてみてはどうだろうか。これを足がかりにすれば、欧米人のマグロ、鯨食に対する批判にも抵抗できるようになるだろう。マグロは黄色人種差別と、鯨は日本人差別に直結しており、合法的にジャパン&チャイニーズバッシングが出来るという魅惑の議題である。などと語れるようになる頃には、日本人として恥かしくない食への認識を手に入れている事だろう。