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みんなのレビュー98件

みんなの評価3.2

評価内訳

94 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

あやめなミステリーはあやめのうちに

2008/03/28 13:01

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る

アガサクリスティの名著『そして誰もいなくなった』を下敷きに、密室殺人、孤島殺人といったお決まりのパターンにのっとったミステリーかとおもいきや、そうではない。

ごく普通の男女4人ずつ計8人の若者達が無人島でバカンスを過ごす。
緩やかな関係をなんなく保っていたはずの8人、不満も不自由も、逆に格別楽しいことがあるわけでもなしに穏やかな休日を、世間から隔絶された僻地でたった一週間すごすだけ・・・のはずだった。そこに一人、又一人と死人が出る。
犯人探しをする者、推理をする者、脱出を試みる者、泣く者、怒る者、傍観する者・・・次第にヒートアップするお互いの憎悪、混乱ともなればお決まりのミステリーらしい展開が想像されるのだが、そうならなかったことに拍子抜けとも意表をつかれたともいえる不思議な感覚が残った。
勿論みな恐怖する。犯人は誰だと、凶器は何だと、探すし討論もする。
しかし、どこか冷めている。それは語り手(主人公)が何事にも無感動であるからだ。 無感情、というべきか?
どこか人並みの感情の起伏をもてない、情緒をもてない主人公あやめ。
「あやめもわかぬ」のあやめ。物事の道理や分別、人間としての筋を知らぬ人間が語り手なのだ。だから全体に流れるように進むストーリーだし、どこからどこまでが「正常」なのか、後半を読むにしたがってそれは徐々にあやふやになっていく。

ゆめうつつの物語、というには写実的過ぎる。リアルな物語かといえばそれほど現実味があるわけでもない。ただただ人が死んでいき、一人が犯人として登場し、物語が終わる。そこに、日常に簡単に潜めてしまえる程度の、しかし殺人を起こしてしまうほどの狂気が犯人にうずいていたことを、あとあと知るだけである。
淡白だがその淡白さの中に静かな狂気に充足している彼らがいる。
どこかねっとりとした単語表記(カーテンではなくカアテン、アルコールではなくアルコオル)がこの淡白さに粘りを付けて読むものをはなさない。
ミステリーとしてだけでなく恋愛モノとして、この冷めた不気味さは読むに値する。

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紙の本

無邪気が抜けた風船は、やがて地面へ堕ちて行く

2001/01/11 17:13

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:竹井庭水 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 文の動きが面白いですな。「グレエプフルウツ」やら「カアテン」といった言葉使いとか、ふわふわした比喩を使うなと思ったらバッサリ斬る表現が来たり。はてさてどんな展開になるのやら、と思ったら。え?孤島で連続殺人事件?これまた古風な。

 喫茶店を切り盛りする野坂あやめ達が慰安旅行に出発。常連やその友達も巻き込んで、向かった先は無人島。6泊7日波瀾含みの男女8人の旅。そんなバカンス気分は2日目の朝に吹っ飛んだ。鍵のかかった室内。硝子越しに血まみれで倒れている参加者は、あやめの元不倫相手の妻だった。連絡の途絶えた孤島。また一人、また一人と…。

 クローズドサークルのお手本のような設定。しかしこれをそのまま書いたのでは名が廃る。ふわふわした主人公の語り口、新興宗教が残した建造物、海と空と風の青。非日常の中に現れる非現実な死体。手垢のついた設定を乳白色の霧に埋め、読み手を飽きさせません。やがて物語は非現実から現実へ、否応無しに着地して行きます。このフェードインの使い方が上手いなぁ。

 うーん、最後のネタは特殊なだけにちょっと人を選ぶか。最後ちょっとバタバタした気がして、これ以上殺す事もなかったん違うかなぁと思ってみたり。この聿使いなら連続殺人じゃなくても十分ひっぱれると思うのだけれども。張り巡らされた愛の糸。凍えたのは島か心か、はたまた人か。

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2005/02/15 09:26

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2006/03/15 16:35

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2006/09/04 17:06

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2007/05/14 11:10

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2007/08/09 12:11

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2007/11/03 00:09

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2007/12/13 17:56

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2008/07/24 15:25

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2008/11/05 11:56

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2008/11/24 17:30

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2009/01/14 02:23

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2009/03/15 23:27

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2009/07/16 15:59

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