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人類史上での大きな出来事を取り上げた書。なぜ、ヨーロッパ大陸に発生した文明が、現在の覇者となりえたのか、何が重要であったのか。平易で読みやすい。日本やアジアの扱いについて、もうちっと言及があるとなおよかった。
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プロローグ ニューギニア人ヤリの問いかけるもの第1部|勝者と敗者をめぐる謎第1章 一万三千年前のスタートライン第2章 平和の民と戦う民の分かれ道第3章 スペイン人とインカ帝国の激突第2部|食料生産にまつわる謎第4章 食料生産と征服戦争第5章 持てるものと持たざるものの歴史第6章 農耕を始めた人と始めなかった人第7章 毒のないアーモンドのつくり方第8章 リンゴのせいか、インディアンのせいか第9章 なぜシマウマは家畜にならなかったのか第10章 大地の広がる方向と住民の運命第3部|銃・病原菌・鉄の謎第11章 家畜がくれた死の贈り物
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文明の生態史観を読んだときも感銘を受けたが、今回はそれ以上だ。歴史本なので軽い気持ちで読んだのだが、極めて論理的で説得力がある。なぜ地域によって格差が生まれたのか?それを環境決定要因で説明するあたりが強引に感じられるのだが納得させられてしまうのである。また、読んでる最中に次々沸き起こってくる疑問を予想されてたかのように解決していく文章構成も見事!ちょいと長すぎるので最後読むのがつらいところもあった。(2006/1/14読了)
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・異なる歴史の経路をたどったのはなぜだろうか。
・何かの経緯を解明することは、その結果得られた知識をどう役立てるかとはまったく別の問題である。
・子供時代に刺激的な活動が不足すると、知的発育の阻害が避けられない。
・歴史は、異なる人々によって異なる経路をたどったが、それは、人びとのおかれた環境の差異によるものであって、人びとの生物学的な差異によるものではない。
・近代において人口構成をもっとも大きく変化させたのは、ヨーロッパ人による新世界の植民地化である。
・情報は記述されることによって、口承よりもはるかに広範囲に、はるかに正確に、より詳細に伝えられる。
・食料生産を他の地域に先んじて始めた人びとは、他の地域の人たちより一歩先に銃器や鉄鋼製造の技術を発達させ、各種疫病に対する免疫を発達させる過程へと歩みだしたのであり、この一歩の差が、もてるものともたざるものを誕生させ、その後の歴史における両者間の絶えざる衝突につながっているのである。
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とても刺激的。「持てる者」と「持たざる者」を生み出した原因について追求している。農耕と家畜を飼うようになったあたりの章が面白かった。下巻が早く読みたくなる本。
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文句無しに面白く挑発的な書。ニューギニア人社会とヨーロッパ白人社会に見られるような現代の社会集団間にある富や権力の不均衡は、何故生じたのかという疑問に始まる。その不均衡の起源を1500年頃からのヨーロッパ人による植民地支配に求めている。この本の題名はスペインがインカ帝国を征服できた要因に由来する。ここまでが、単なる導入である。では、何故これらの銃・病原菌・鉄はヨーロッパにあり、インカ帝国には無かったのか?そのような文明の格差はどのようにして生じたのか?この疑問を巡り、人類の文明の歴史に決定的であった要因を、博覧強記に検証している。その膨大な量の知識には圧倒されるが、個々の事例が具体的であり、結論に導く課程が明快であるので、非常に知的興奮を味わえる事は間違いない。最終的に、ユーラシア大陸が東西に伸びている事と最大の大陸であった事を、各大陸のでの分明の格差の最大の要因として結論づけている。このような視点を私は始めて知ったが、説得力は強く、以降の定説になるであろう。
個々に細分化された学問を総合した希な傑作である。
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進化動物学者の著者が鳥類調査のために訪れたニューギニアで現地の住民に尋ねられる
「ニューギニアとヨーロッパの産業と経済の侵略の不均衡を生み出した原因は何か?(要約」
その質問に著者が答えた本。
著者は人種間(白人と非白人)の能力差を解答とせず、何となく思考停止してしまいそうな座りの良い解答を導かない。
不思議で一見意外な解答を著者は用意する。
それを知ると、まぁそうなのかも、、と肯首。
はたして、現代の不均衡を生み出した原因は?
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初版の出版が1997年、日本版は2000年になる。日本版の刊行後すぐに読んだので、約20年ぶりに読み返したことになる。最初に読んだときの新鮮さは薄れ、こんなに単線的な本だったのかというのが二度目の読後の印象である。それは、この本に影響されて、さまざまないわゆるグローバルヒストリーの本が世の中で出版され、それらの話が耳から入っていたからかもしれない。そういった意味で、新しい分野を切り拓いた先駆的な本でもあったのだと思う。
著者は、プロローグの最初においてフィールドワークの対象地域であったパプア・ニューギニアの状況について言及をした後、次のように語る。
「こうした歴史的な不均衡は、現代の世界にも長い影を投げかけている。それは、金属器と文字を持つ社会が、金属器を持たない社会を征服し、あるいは絶滅させてしまったためである。こうした地域間の格差は人類史を形作る根本的な事実であるが、なぜそのような差異が生まれたのかという理由については、いまだに明らかになっておらず、議論が続けられている」
この問いに対する著者なりの答えを示したのがこの本である。
本書を著者の言葉を引用してまとめるとすると次のようになる。
「歴史は、異なる人びとによって異なる経路をたどったが、それは、人びとがおかれた環境の差異によるものであって、人びとの生物学的な差異によるものではない」
上下巻の二冊に渡る非常に長い本だが、著者が言わんとしていることとロジックが明確であるため、非常に読みやすい。そのロジックとは、上巻の最初の方で、すでに著者が図象化しており、ほとんどそれが全てである。簡略化すると、それは次のようなものである。
東西に伸びる大陸
↓
適性ある野生種の存在、種の分散の容易性
↓
多くの栽培植物と家畜の存在
↓
余剰食糧、食糧貯蔵
↓
人口が稠密で、定住している人びとの、階層化された大規模社会
↓
馬、銃・銃剣、外洋船、政治機構、文字、疫病
つまり、人種的な優劣や文化の差異ではなく、地理的な偶然によって、文明化と呼ばれる環境の差異が生まれたというのが、著者の主張である。「文明」に属する技術は、天才的な発明の才のある個人によって生まれるのではなく、自然の気づきよって促され、累積的に蓄積されるものである。また、その発明が伝播される範囲においては相互に拡大するという効果が生まれるのである。
その累積的な積み重ねの結果が地域間の差異として現れた代表的な例が、スペインによるインカ帝国の収奪である。ピサロによるインカ帝国の侵略における鉄製の武器と甲冑および騎馬の圧倒的な威力に対して、インカ帝国の人びとはあまりにも無防備であった。無防備という点ではさらにヨーロッパ人が運んできた病原菌に対しても彼らは無防備であった。天然痘などの病原菌は、南北アメリカ大陸の住民の95%を死に至らしめたという。
「ピサロを成功に導いた直接の原因は、鉄器・鉄製の武器、そして騎馬などに基づく軍事技術、ユーラシアの風土病・伝染病に対する免疫、ヨーロッパの航海技術、ヨ���ロッパ国家の集権的な政治機構、そして文字を持っていたことである。本書のタイトル『銃・病原菌・鉄』はヨーロッパ人が他の大陸を征服できた直接の要因を凝縮して表現したものである。しかし、銃や鉄がヨーロッパで作られる以前においても、あとの章で見るように、西ヨーロッパ系の民族が同じ要因を背景に自分たちの勢力範囲を拡大していた」
【食料生産】
文明の発展の序章として、それまでの狩猟生活から農業による食糧生産および定住生活への移行が非常に重要であった。本書では食料生産に関わる謎、なぜある地域では早く農業が始まり、ある地域ではそうではなかったのか、を紐解いていく。
簡単に言うと、農業の開始は、栽培植物と家畜化可能な野生祖先種の存在に依存し、その伝播には似た気候がつながる東西に広がった大陸が有利に働いた。食糧の伝播によるコミュニケーションのつながりは、その後の他の技術の伝播、文字を含む、にも有利に働いたという。
特に肥沃三角地帯の植物は地中海性気候に応じた一年草で、高さではなくそのエネルギーを大きな種子をたくさんつけることに費やすことができた。このことは、高さを得るための茎や樹脂の繊維(人間の食用には向かない)に費やすところが少ないということであり、栽培に有利な植物種を多く得ることにつながったのである。
意外に思うかもしれないが、栽培に向いた植物というのはそれほどありふれたものではなく、家畜化可能な大型動物はさらに稀である。実際に家畜化された哺乳動物は14種類しか存在せず、そのうちの多くが西南アジアに集中しており、アメリカ大陸やアフリカ大陸にはほとんどいなかったのだと説明する。この指摘が、この本の特色であり、著者の主張を支える重要なポイントである。
「ユーラシア大陸の人びとは、たまたま他の大陸の人びとよりも家畜化可能な大型の草食性哺乳動物を数多く受け継いできた。このことは、やがてユーラシア大陸の人びとを人類史上いろいろ面で有利な立場に立たせることになるが、この大陸に家畜化可能な大型の草食性哺乳動物が多数生息していたのは、哺乳類の世界的分布、進化、そして生態系という三つの基本的要素がそろって存在していた結果である」
【文字の利用】
文字を持っているかどうかは、その社会の発展に与える影響が大きいとされる。文字の有無は、情報量の差につながるのである。インカやアステカの皇帝は、征服者であるスペインに対する正確な情報を持つことがなかったがために、誤った対処を取ることとなったのである。
それでは、文字を生み出すことができなかったインカやアステカの人びとは劣っていたがゆえに文字を生み出すことができなかったのか。著者の答えはそうではない、である。文字が利用されるためには、当初は表現力の観点で限定的であった文字の必要性とそれを使う余剰人員が必要であった。その必要条件は食料生産とそこから生まれた人工稠密な社会であった。また、文字の発明という比較的稀な出来事が広まるためには、それまでに食料交換などを通して東西のコミュニケーションが確立しているユーラシア大陸が有利に働いたのだ。
「このように、文字が誕生するには、数千年にわたる食料生産の歴史が必��だった。ちょうど集団感染症の病原菌が登場するのに食料を生産する社会が必要であったように。最初の文字が、肥沃三日月地帯、メキシコ、中国で登場したのは、それらの地域が食料生産の起源とされる地域だったからである」
これだけ便利なのだから、言語あるところに文字というものは自然に生まれてきたのではないかと誤認されるが、実際にはそれほど何度も文字は発明されなかった。実際に、文字のない社会というものは珍しいものではない。しかし、一度そのメリットが認識されると、それは多くの場所で受け入れられる。著者は、「アイデアの模倣」により新しい文字が生まれている例をいくつも示し、その伝播性の重要性について述べる。すなわち、食料だけではなく、文字の伝播に関しても大陸の形状に影響されるのである。
著者はまた、技術の進歩の差が生まれる理由として、天才の存在、ひいては人種間の才能の差を否定する。
「われわれの考察の結論は、つぎの二つである。技術は、非凡な天才がいたおかげで突如出現するものではなく、累積的に進歩し完成するものである。また、技術は、必要に応じて発明されるのではなく、発明されたあとに用途が見いだされることが多い」
「発明は必要の母」であった、と著者は結論づける。
本書内では、他にもパプア・ニューギニアやオーストラリアで何が起きたのか、それらの差はなぜ生じたのかを考察する。また、ヨーロッパよりもある観点では進んでもおかしくはなかった同じユーラシア大陸に存在する中国や東アジア、人類発祥の地であり、したがってっとも長い人類の歴史をもち、またもっとも多様な遺伝子的要素を擁するアフリカ大陸が欧州の文明によって植民地化されたのかについても分析をしている。
出版より20年をして、すでに古典の風格もあるジャレド・ダイアモンドを今の地位に押し上げた著作。広く読まれるべきだし、また読まれたら広く受け入れられる著作でもある。
そして、さらなる考察については、下巻のレビューにて。
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『銃・病原菌・鉄 (下) ― 1万3000年にわたる人類史の謎』(ジャレド・ダイアモンド)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/479421006X
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〜06年:
テーマとしては非常に刺激的。人種的な差異に帰結させがちな(特に、おそらく欧米学会において)、「なぜヨーロッパにおいて、産業が進展し、経済の侵略の不均衡を生み出したのか?」という疑問に答えており、ユーラシア大陸が東西に伸びている事と最大の大陸であった事をして、その最大の要因としている。
その結論に至るまで膨大な事例を引いて論証を試みているが、メッセージに直感的に納得してしまったので、繰り返される事例に飽きて、上巻途中で放棄。
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学際的な著者の視野にとりあえず脱帽した。私の知識不足で著者の言うことをそのまま信じていいのかどうか判断できないが、すくなくとも興味深く読める本ではある。
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第1章から3章までになぜヨーロッパ諸国が新世界を征服し得た理由が簡潔に述べられています。銃やテクノロジー、病原菌、彼の地へ送り出すだけの中央集権的な国家が理由であるとしています。
残りの章はすべて食料生産の発展がいかにして人類の文明発展と拡散についてに費やされています。
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1998年ピュリッツァー賞一般ノンフィクション部門受賞作品。
前半を読んでいる時は「ヒットし過ぎてその後当たり前になってしまい、今読んでも面白くない」作品かと思っていた。
後半の人類史の話になってくると面白かった。
タイトルの「銃・病原菌・鉄」とはスペイン人がインカ帝国を征服することの出来た直接の原因。
何故、そういったものがスペインにはあってインカにはなかったのか、そういった違いを産んだ究極の原因はなんだったのか、というのを地理的条件から探る本。安易に人種を理由に挙げないので安心して読める。
上巻では主に、食料生産について見ていく。
ところで。
ヨーロッパを旧世界、アメリカ大陸を新世界、という言葉で表すのは、普段そういった言葉を使わない日本人の私からみると奇妙な感じがどうしてもしてしまいますね。
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ナショ・ジオのDVDを購入できないので、書籍でがまん。
DVDと本では、中身が結構違うのかもしれない。
でも、なぜ農耕が行われるところとそうでないところが
起こったのか、文字を持つ部族とそうでない部族がなぜ
生じたのか。
なぜ、ピサロたちが少数でインカ帝国を滅ぼすことが
できたのか。
ひとつの考え方としておもしろいし、よく理解できる。
結論が、ダーウィンの進化論的にまとめてあるのも、
納得感の高い終わり方。
ガラパゴスで起きたカメその他の動物の違いを、
人類という種にたとえて、生まれた大陸の差により
進化・適応の方向が進んだというのは、なるほどと思う。
なかなかこういう本を読まなかったので、たまには良い。
★★★
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文明崩壊がなぜ文明崩壊するのか書いた本だとするとなぜ文明が発展していったのか書いた本が銃・病原菌・鉄。本当はこっちが最初に書かれたからこっちから読めばよかったかもしれない。基本的に文明崩壊と主張は似ている。世界の地域間の格差を生み出したのは別にヨーロッパ人が優れていたのではなく環境によるものだということ。それにしてもこう読んでくると環境がその人の成長を促すのにとても重要なポイントなのがわかる。
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今ある世界の格差がなぜ、どうやって生まれたかを考察している。
考察の内容は、地理学・生物学・言語学と多岐に渡っていて面白く読める。
わかりやすい比較(オーストラリアとニュージーランド)も行っていた。
今ある格差は人種的な必然ではなく、今住む地球が生み出した必然的なものだと言えるかもしれない。
印象的な地理的な情報格差の項目をみてそう感じた。
ふと思うのが情報化の現在。地理的な環境に左右されず情報が行き来する現代に人はどのような進化を進んでいくのだろうか。
前に読んだ情報化の本と絡めて考えてしまう。