紙の本
内向と幻視の70年代
2001/06/16 04:33
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投稿者:Ayuki - この投稿者のレビュー一覧を見る
ニューウェイヴも一段落した70年代からの収録作品11篇は総じて内向的で幻視的。流暢な語り口で雰囲気たっぷりに書いてくれるのはいいけれど、センス・オヴ・ワンダーにはやや欠ける気がする。逆に主流文学寄りに一皮むけたSFとも言え、テーマに興味さえ持てれば誰でも読めることだろう。これもSFの楽しみの一つであり、ぼくはそういうの結構好きだ。
以下気になったものをいくつかピックアップします。
ティプトリーJr「接続された女」
このシリーズにはサイバー美女モノの話がいくつも収録されているのだが、この表題作は少しヒネってある。ただ、今読むと語りは垢抜けないし、ストーリーも予定調和的で寓話みたいではある。
ジーン・ウルフ「デス博士の島その他の物語」
主人公の少年が家庭内の問題から逃避するため、作中作の冒険小説「デス博士の島」をなぞった幻想にとりつかれていく話。奇妙な話法を読み解く鍵は最後のセリフにあると思ったのだが、どうだろう。SF味は薄いが、本書最高の一篇と思う。
ル・グィン「アカシア種子文書の著者をめぐる考察ほか〜」
蟻語で書かれたアカシア種子文書を読み解く前半、行き過ぎた擬人化の馬鹿馬鹿しさが楽しい。
ジョン・ヴァーリィ「逆行の夏」
本書でいちばんSFらしい作品。灼熱の水星を舞台にしたエキゾチックな未来社会の一断面と登場人物の葛藤のドラマを、短い紙数の中に描き切っているのが素晴らしい。
クリストファー・プリースト「限りなき夏」
これ、「センティメンタリズムはすべてに優先する」風のやや御都合主義的な作品なのだが、20世紀初頭の若者の恋がとてもとても瑞々しいので、許す。
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4巻は70年代。
気に入ったのは
・『デス博士の島その他の物語』……ウルフ
・『洞察鏡奇譚』……ベイリー
・『あの飛行船をつかまえろ』……ライバー
・『七たび戒めん、人を殺めるなかれと』……マーティン
らへん。
でも、『七たび戒めん、人を殺めるなかれと』はラストがよくわからん。どういうこと?
ウルフは『アイランド博士の死』も読みたなった。SFマガジンを探すか。
・『接続された女』……ティプトリー
・『変革のとき』……ラス
・『情けを分かつ者たちの館』……ビショップ
あたりが、70年代の社会を写してるのかな。
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40年も昔に書かれた小説だとは思えなかった。
接続された女、自分の本当の姿なんてそりゃ見たくないよなあ。
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『接続された女』が圧巻。文体の乾き方といい、冷徹な視点といい、かっこいいというか鳥肌が立つ。
ヴァーリイ、プリースト、ビショップ、マーティンも好み。
ル・グインおばさん(と呼んだら射殺されそうだけど)……笑かしてもらいました。
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1940年から90年まで、年代別にそれぞれの時代を代表するSF作家の短編がまとめて読める贅沢なシリーズ「20世紀SF」の70年代。
フリークス萌えなので、『情けを分かつ者たちの館』を偏愛。未来を舞台にしたSFなのに、どこかゴシックな雰囲気が良かった。
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20世紀の英語圏SFを年代別に集めたシリーズ第4巻の1970年代編短編集。
表題作の「接続された女」や「デス博士の島その他の物語」、「情けを分かつ者たちの館」が特に哀愁を感じさせ読み応えがあり良かった。
「接続された女」は、広告が極端に制限された世界で、半ば神格化した美少女アイドルを遠隔操作する女性の皮肉で悲しい恋愛物語でありつつ、大衆メディアについての風刺でもある。
「ニュースに出るのは、やつらが大衆に知らせたいことだけさ。...」で始まるセリフは、インターネットが普及した現代でも十分通じるものがあると思うし、かっこいい文章である。内容に古さは感じませんでした。
「アカシア種子文書...」は、真面目にふざけているのが最高に面白かった。
また、このシリーズ全般に言えることですが、「解説」に各年代における時代背景やSF小説のトレンドが分かり易く書かれており、勉強になりとても良い。
【収録作品】
・接続された女(ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア)
・デス博士の島その他の物語(ジーン・ウルフ)
・変革のとき(ジョアンナ・ラス)
・アカシア種子文書の著者をめぐる考察ほか、『動物言語学会誌』からの・抜粋(アーシュラ・K.ル・グィン)
・逆行の夏(ジョン・ヴァーリイ)
・情けを分かつ者たちの館(マイクル・ビショップ)
・限りなき夏(クリストファー・プリースト)
・洞察鏡奇譚(バリントン・J.ベイリー)
・空(スカイ)(R.A.ラファティ)
・あの飛行船をつかまえろ(フリッツ・ライバー)
・七たび戒めん、人を殺めるなかれと(ジョージ・R.R.マーティン)
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「接続された女」が抜群に良かった。
コレ系の走り、と目されていると解説かどっかで読んだが、
悪趣味な仕組み、ラスト、ともに良かった。
素敵。
あとは、「情けを分かつ者たちの館」「逆光の夏、ライバー、マーティン、ラファティが好き。
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いっぺん読んだだけじゃ分からなくて、何回も読み返す作品が多かった。そんなこともあって、読み応えのある一冊。好き。
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http://shinshu.fm/MHz/67.61/archives/0000319399.html
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アンソロジーシリーズ「20世紀SF」の第4巻。個人的には4巻まで読んできて、ようやく自分に合う年代に出会えたという感じだ。時代が比較的新しい(それでも40年くらい前)ので、現代の思考に近いからかもしれない。面白かったのは「接続された女」「デス博士の島その他の物語」「逆行の夏」といったところ。
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「逆行の夏」ジョン・ヴァーリィ著(F&SF 1975年2月号) クローンの姉が月から水星にいる、ぼくに会いにやってくる。ぼくは飛行訓練学校へ入学しようとしている、冥王星など太陽系間の飛行士になりたいのだ。
接続された女 / ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア
デス博士の島その他の物語 / ジーン・ウルフ
変革のとき / ジョアンナ・ラス
アカシア種子文書の著者をめぐる考察ほか、「動物言語学会誌」からの抜粋 / アーシュラ・K.ル・グィン
逆行の夏 / ジョン・ヴァーリイ
情けを分かつ者たちの館 / マイクル・ビショップ
限りなき夏 / クリストファー・プリースト
洞察鏡奇譚 / バリントン・J.ベイリー
空(スカイ) / R.A.ラファティ
あの飛行船をつかまえろ / フリッツ・ライバー
七たび戒めん、人を殺めるなかれと / ジョージ・R・R・マーティン
2001.5.20初版 図書館
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図書館で借りたこの本は、地元のSF作家梶尾真治氏が寄贈したもの。読んで驚くのは、年月が経っても色褪せないSFの魅力。時間を超越する物語。表紙絵も秀逸。