紙の本
玄人受けする凝り過ぎの作品集
2003/05/18 20:44
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1940年代から90年代までの、英語圏のSFを10年毎にまとめた、全6冊のアンソロジー・シリーズの第5巻である。サイバーパンクとニューウェーブの後火のような作品とその後の変化を示すような作品が、12収録されている。このシリーズはちょっと捻ったような小粋な作品多かった。しかしちょっとずれると、玄人受けするような凝り過ぎの作品になってしまうし、一般読者には何処が面白いのか分らなくなる。そんな短編が半分もある。編集者の好みがもろに出ている感じで、本当に1980年代を代表する作品なのか、もっと別なものもあったのではないか、と思えてくる。ただしこの時代の社会的状況も反映された作品もあり、一種の社会批判的な面も出ている。
紙の本
収録作品一覧
2001/02/13 18:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:bk1 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ウィリアム・ギブスン「冬のマーケット」
オースン・スコット・カード“Fat Farm”
グレッグ・ベア「姉妹たち」
ブルース・スターリング“The Beautiful and the Sublime”
ルーディ・ラッカー「宇宙の恍惚」
イアン・ワトスン「世界の広さ」
コニー・ウィリス「リアルト・ホテルで」
ジェフ・ライマン「征たれざる国」
ガードナー・ドゾワ“The Peacemaker”
ポール・ディ・フィリポ「系統発生」
マーク・スティーグラー「優しき誘惑」
スタン・ドライヤー「ホウレンソウの最期」
投稿元:
レビューを見る
今回はとうとう80年代。
自分でリアルに感じられる十年間。
パックス・アメリカーナな時代であり、科学は長足の進歩する反面カルト教団が台頭してきた時代でもある。
この短編集からは、体制にまさに反抗するカウンターカルチャーや、
コミュニティ内部だけの符牒のようなもの題材にしている……のかどうかはわからないけれど、
どれもけっこう気に入った。
収録作は
・『冬のマーケット』……ウィリアム・ギブスン
・『美と崇高』……ブルース・スターリング
・『宇宙の恍惚』……ルーディ・ラッカー
・『肥育園』……オースン・スコット・カード
・『姉妹たち』……グレッグ・ベア
・『ほうれん草の最後』……スタン・ドライヤー
・『系統発生』……ポール・ディ=フィリポ
・『やさしき誘惑』……マーク・スティーグラー
・『リアルト・ホテルで』……コニー・ウィリス
・『調停者』……ガードナー・ドゾワ
・『世界の広さ』……イアン・ワトスン
・『征たれざる国』……ジェフ・ライマン
この中で特に印象深いのは、『系統発生』『やさしき誘惑』『征たれざる国』あたり。
SFなのだから異様な世界を描くのはここに始まったことじゃないけれど、
80年代は異様と言うか、異質な世界。
ベアの『ブラッドミュージック』が80年代版『幼年期の終わり』と言う謳い文句がやっとわかった様な気がする。
『系統発生』はドゥーガル・ディクスンの『マン・アフターマン』を突き詰めたような話。ウイルス化した人間の末裔たちのビジョン。
『やさしき誘惑』はナノ・マシンものだけど、そこに描かれる意識の変容は『攻殻機動隊』を思わせる。
そして、『征たれざる国』。凄い。
沓澤龍一郎の描く異形のアジア風景はイラストじゃないと表現できないかと思ってたら、見事なまでに文章にしている。
暑さも匂いもすべてが感じられる傑作。
投稿元:
レビューを見る
ギブスンはギブスン、スターリングはスターリング、ラッカーは相変わらずバカだ ヽ(゚∀゚)
ベアとライマンのが正当的な物語でわかりやすかった。
投稿元:
レビューを見る
「征たれざる国」には衝撃を受けました。内戦に巻き込まれ夫を無くし放浪する妻の物語がなぜこれ程心に訴えかけてくるんだろうか。
投稿元:
レビューを見る
20世紀SFの中で一番好き。
「姉妹たち」が最高傑作。
ジーンリッチ物はいくつか目にしているけど、これだけきっちりとまとめているものは見たことがないし、ファイナルアンサーな気がする。
彼女が見た光景も美しいし、リメイキングエデンの見た先の世の中である本作が実現するかしないかはわからないけれど、
似たような時代は来るのかもしれないと思った。
そして「優しき誘惑」もじわじわくる。
一言残した愛が終盤に効いてくる感じがたまらない。
そして自分も最終的にこんな存在になれたらいいのにとさえ思う。
「征たれざる国」には心打たれた。
橋の上のシーンが忘れられない。
コニー・ウィリスは好きだが複雑すぎてうまくコメディとして理解できなかったし、
ギブスンは初めから理解不能だった。
そこだけ残念。
後は全部好き。
私史上最高のSF短篇集。
投稿元:
レビューを見る
http://shinshu.fm/MHz/67.61/archives/0000333263.html
投稿元:
レビューを見る
最初の2編がサイバーパンクでヘコんでましたが、この後は快走中~
特筆したいのは、ルディ・ラッカー「宇宙の恍惚」。
このハレーションを起こしている素敵な日本語は、一体どなたが・・・と思ったら、大森望氏の手になるものでした。お見事。PDFですが、原文が公開されています。比較すると二度おいしい。
(Rudy Rucker,Rapture in Space )
http://www.scribd.com/doc/28054079/Rapture-in-Spac..
ただ、めちゃめちゃ重いです。
お覚悟を。
投稿元:
レビューを見る
このアンソロジーシリーズを読んでいると、1980年代なんて最近のことのように感じるが、もう30年以上前のことだ。新しいようで古い作品が収録されている。時代はサイバーパンクの終焉が告げられ、新しいSFが誕生しようとしている時だ。そのためか、古い感じはせず、現代につながるSFがこの時代に生まれたことを感じさせる。気に入った作品は、「宇宙の恍惚」「肥育園」「ほうれん草の最期」「リアルト・ホテルで」といったところ。なんだ、笑える作品ばかりじゃないか!
投稿元:
レビューを見る
1980年英語圏SF短編集
後にサイバーパンクと呼ばれるようになったのが出てきた時代だそうだが、パンクか否かの分類はよう判らん…
バイテクな研究者を志していた80年代だが、「系統発生」で種の存続を目指すより、「やさしき誘惑」のナノテクや、電脳世界でハッピーになりたい
投稿元:
レビューを見る
80年代といえばサイバーパンクなのかもしれませんが、個人的にグレッグ・ベアの『姉妹たち』に感動しました。デザイナーベビーが現実になりそうな今、改めて読みたい好短編だと思います。
投稿元:
レビューを見る
「冬のマーケット」ウィリアム・ギブスン著(ヴァンクーヴァー・マガジン1985年11月号) ゴミが主題。内容にはちょっと入っていけなかったが、著者のギブスンは日本に関心があるのか、はいている靴は「日本製で、新品の上物、銀座モンキー・ブーツ」。そして東京はゴミを埋め立て「夢の島」を作ったが、さらに「新夢の島」を作り、現在では太平洋の中に新日本が隆起しつつある、という記述。ここがおもしろかった。
「やさしき誘惑」マーク・スティーグラー著(アナログ 1989年4月号) レーニエ山のふもとに住むごく平凡な女性が、結婚し孫も生まれ、やがて最新技術の装置を使い若返り、意識の世界で木星にすむ孫と交友をはかる。さらに意識の世界で、はるか昔のコンピュータを仕事にしていた男に思いをはせる。その男は彼女に「やがて君はヘッドバンドをするようになる」と言ったのだった。彼女が老年に達する頃、ヘッドバンドという装置をつけると意思疎通も図れ、はるかかなたの景色も見える。さらにある錠剤をのむと体が若返り病気も治る、という世の中になっていった。
著者のスティーグラーは1954年うまれ。文中、彼女が25歳の時には時代遅れのフリートウッド・マックがお気に入りだった、という所があり作品中唯一リアルに実感できる所。
「系統発生」ポール・ディ・フィリポ著(ポール・ゼロウスキー編集のアンソロジー<シナジー>第3集1989年発表) 宇宙を舞台にしたウイルスの増殖の話。コロナの現在、ちょっとぞっとるする。
冬のマーケット / ウィリアム・ギブスン
美と崇高 / ブルース・スターリング
宇宙の恍惚 / ルーディ・ラッカー
肥育園 / オースン・スコット・カード
姉妹たち / グレッグ・ベア
ほうれん草の最期 / スタン・ドライヤー
系統発生 / ポール・ディ・フィリポ
やさしき誘惑 / マーク・スティーグラー
リアルト・ホテルで / コニー・ウィリス
調停者 / ガードナー・ドゾワ
世界の広さ / イアン・ワトスン
征たれざる国 / ジェフ・ライマン
2001.7.20初版 図書館