紙の本
これは児童書?
2003/06/23 11:54
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:二児のママ - この投稿者のレビュー一覧を見る
久しぶりに泣ける本でした…。
児童書というには重いテーマ。すぐれた児童文学に贈られるガーデアン賞を受賞している作品です。
第二次大戦中のイギリス、ロンドンから田舎へと疎開した9歳の男の子(ウィリー)の物語。ウィリーが預けられた家の主が、トムさん。ウィリーもトムさんも“心の傷(ウィリーは心以外にも 泣)”を持っている。そして、二人が出会うことでその傷が少しずつ癒されていく…まあ、簡単に言うとそういうお話なんですが…もう後半はティッシュ片手に涙ふきふき、鼻かみかみ状態になるくらいグッときちゃうお話なんです!
411Pの児童書としては多少厚めの本なんですが、ウィリーのことが気になって一気に読みきってしまいました。感情移入して「これ以上ウィリーに辛い思いをさせないで!」と何度思ったことか(泣)
感動の物語です、悲しいお話はちょっとという方にはお勧めできませんが…そうでないかたは是非読んでみて下さい!
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傷を抱えた2人の血のつながりを越えた絆にあたたかくなる。
トムさんが『父さん』と言われて泣いたとき、一緒に泣きました。
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実は仕事の課題で読んだ児童書なんですけど、
児童書のくせに500ページ以上あって字も小さいんですけど、
なんという深い感動。
虐待を受けて育った少年と、疎開先のおじいさんとの心温まる物語。
じーーーん
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児童文学。
戦争と虐待と田舎暮らし。
こう書くと悲惨な物語のような印象を受けるけど、それほどでもない。
ほのぼのとした田舎暮らしの場面が多し。
文化が違うなぁって思った。
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記憶にある限り、私がもっとも泣いた作品。人間嫌いの老人と親に虐待されてきた少年が出会い、やがて血を越えた親子になっていく過程がとても丁寧に描かれている。
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『第二次大戦が始まる直前から戦中、イギリスの田舎リトル・ウィアウォルドでの出来事。
60代後半で一人暮らしのトマス・オークリー(トム)の家にロンドンから来た疎開児童がやってきた。いつ戦争が始まるかもしれない状況で、政府が都会から田舎に子供たちを疎開させる措置を取り、トムの家にも一人割り当てられたのだ。子供の名前はウィリアム(ウィリー、ウィル)・ビーチ。
ウィリーはひどく怖がりで小さい声でしか話せず、やせていて体中傷だらけの子供だった。今まで充分な食事を取っていなかったためか食事のあと吐いてしまったり、夜はうなされて寝小便をしたり・・・・。
トムはそんなウィリーをひとつも責めずに、淡々と後始末をして一緒に暮らす。最初は怖がった犬のサミーにも慣れ、ウィリーはだんだんにトムとの生活に馴染んでいく。
何人もの疎開児童の中でウィリーに積極的に近づいてきたザックと友達になれ、他にも遊び友達が出来た。ウィリーには絵の才能があることも分かった。
心の傷も体の傷もやっと癒されたというのに、母親が病気なのでウィリーに帰って来て欲しいという手紙がきた。ロンドンに帰ったウィリーを待っていたのは・・・・。』
孤独な男と不幸な少年が出会い、互いに癒されていくというストーリーはありふれているともいえます。そのありふれた王道の物語を、これほど素晴らしく描いていることに感動しました。
トムが引き受けた疎開児童が手のかかるウィリーだったからこそ、もし叶うことだったらやってやりたかった自分の子供が赤ちゃんだった頃からの世話を最初からやったような感じで、ぽっかり空いてしまった心を埋めることができたのでしょう。妻が死んでから長い間孤独だったトムは、家族というものを、擬似家族であるにせよウィリーのおかげで持てたのです。
戦争は多くの人を不幸にしました。この物語でも何人もの人が死に、家族や友人に悲しみを与えました。
でもウィリーに限っていえば、戦争のおかげで過酷な運命から逃れることが出来たのです。もし疎開という措置がなければ、ウィリーは自分のおかれている状況が不当なものであることも分からないままだったでしょう。
皮肉なことですが、戦争が新しい運命を開くきっかけになったのです。
最初のうち疎開児童が何人も親元に帰っていくとき、いつウィリーも帰ることになるのか心配でした。そして想像していたよりもっとひどいことになり、どうなるのかどきどきでした。
トムさんは素晴らしい人です。何が一番大切なことなのか、どう行動すべきかちゃんと分かるのですから。
これを読むきっかけになったのはこの作者の、「イングリッシュローズの庭で」を読んですごく感動したからです。そういえばイングリッシュローズも戦争で疎開したことがきっかけで、自立した女性に成長していく二人の少女の話でした。
これが書かれたのは30年くらい前なのですが、時代設定がもっと前だということもあり、かえって少しも古さを感じませんでした。最近児童虐待が問題になっていますが、以前からあったことなんだなあと考えさせられました。
大変感動しました。お勧めです。
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この作品の本国での発表は、1981年。今から、30年以上前なんだよな。
児童虐待を扱った児童書。戦争による児童疎開でトムじいさんのところに来たウィルには、虐待の傷があった。妻子を失くし偏屈なじいさんとウィルは徐々に心を触れ合わせ、絆を深めていく。
ウィルの母親は精神的な病を負った狂信的な人物として描かれる。ウィルが、疎開先から母親のところに戻った後、トムじいさんに発見された時の状態がかなりショッキング。
大阪の児童2人遺棄事件を連想してしまった・・・。
トムじいさんとウィルが何の葛藤もなしに絆を深めていくというのが、ちょっとリアリティがないような気もするけれど・・・。でも、トムじいさんの、ウィルを思うが故の奪回の行動は、感動的でさえある。
周囲の人物も興味深い。
同じように疎開児童で、両親が役者だという外交的で個性的なザック、村で初めての女子のハイスクール進学者となったキャリー、夫を戦争で失ったと思われるアニー・ハートリッジ、などなど。
ウィルとトムじいさんの心の結びつきの過程やウィルが悲惨な体験から回復する過程にそれほど葛藤がないことにちょっとリアリティが感じられないような気もするけれど、児童書ということを割り引いて考えればこれでいいのかも。
とはいえ、この本、子どもが読んで面白いのだろうか。
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小学生の頃に読んだ、実に思い出深い作品。
図書館の片隅で陽に褪せていたこの分厚い本を、よくぞ手にとったものだと思う。
読んでみてあの頃の私は本当に衝撃だった。
こんな苦しい世界があるなんて。
でも、読んでいて自分が浄化されていくような感覚を味わった。
本を読んで泣いたのは、あの時が最初だったような…
その後、家族で回し読み。全員ハマった。
あまり世に知られていない本なのが非常に残念。
映像化したのを見たい気もするけど、陳腐な映画にされてしまいそうな気も。
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第二次世界大戦がはじまる1940年、ロンドンから疎開してきた少年と田舎の頑固な老人の交流。
「切りとられた時」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4900590355でちょこっと触れられてたので読んでみた。
昔、素人の知り合いがかいたお話を読んだことがある。
探偵小説を読んで描き始めて、ファンタジー映画を見て妖精を出して、恋愛ドラマにはまって生き別れの兄弟を出し、任侠漫画に影響されてドンパチになった。
お前影響されすぎだろ。
この本もそんな感じに、題材がどんどん変わる。
秘密の花園みたいな世界でハイジみたいな話を描きたかったんだろうと思う書き出しから、ダニエル・キイスの虐待ネタに影響されたような中盤、とってつけたような終盤へ。
興味を持った素材を取り入れたはいいけれど、途中で飽きてそのまま次へ移ってしまうような印象。
戦争と子供、被虐待児と頑固な老人、識字の喜び、勉強したい女の子、劇や絵という表現、宗教の違い、みんな中途半端。
原著が1981出版ってことはシビルとかが流行ってたころか?
いかにひどいことをされたかを競うような虐待ネタ流行りのころの匂いがする。
私のいる今からすれば古い「現在」の価値観で描かれる「過去の話」は座りが悪い。
トムさんはどうやって生計を立てているんだろうとか、悪い意味で適当な部分がたくさんある。
なかでも都合良く出たりひっこんだりする母親の扱いが一番不愉快。
訳がとにかく読みにくい。
言葉をひとつずつ対応させて訳しているような印象で、文章として通して読むと疲れる。
「寒くはないね」「いいえ」とか。寒くないですの意味なんだけど、日本語ではここで「いいえ」じゃ変だろう。
「親子といえばこうだと思うでしょ?でも~」というあとがきにもうんざり。
文章自体がわかりにくいのはもともとのせいもあるかもしれないけれど。
階段をあがったはずの人が隣にいたり、額をこすったら鼻の頭が汚れたり、暑いのにあられが降ったり、日曜日に「まるで日曜日のような」服を着たり。状況がわかりにくい。
ホームズの相棒やアルプスの少女や文豪が、ウォトソン、ハイディ、ディッケンズといった独自の訳し方をされているところを見ると、訳者はあんまり日本語の文章を読まない人なのかな?
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中学時代、初めて本を読むことに夢中になった、思い出深い一冊です。
いろいろあった時代に、本を読むことの楽しさを教えてくれたこの一冊に感謝。
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開戦まで秒読みのイギリス。
ロンドンに住む人たちは、子どもを田舎に疎開させる。
村の人とほとんど交流をしない偏屈な老人であるトム・オークリーのところにやって来たのは、やせっぽちで怯えている少年・ウィリーだった。
実はウィリーには父親がいず、母親に虐待されている子だった。
「悪い子」だと言われ、体中にあざや傷が残るほど折檻を受けていたウィリーには、世の中は怖いものだらけだった。
しかし偏屈な老人のはずのトムは、愛する妻を亡くした痛手から40年立ち直れなかっただけで、本来は心優しく思いやりの深い人だった。
少し食べただけでもどしてしまう、毎晩おねしょをする、風呂の入り方も知らない傷だらけのウィリーが癒されるまで、じっと待ち続けるトム。
普通の子よりずっと手のかかるウィリーの世話を嫌がることなく、ウィリーの様子を見守るトム。
トムや近所の人たちからウィリーは初めて優しい言葉や温かいまなざしをかけられ、差し伸べられる手を通して人の善意を知ることになる。
友達と楽しく遊ぶこと。大人の手伝いをすること。本を読んでもらうこと。絵を描くこと。
徐々に自分を肯定できるようになったウィリー。
旅芸人の子どもザックや、女子のくせに(!)勉強が好きで進学を目指しているキャリーなど、それぞれの子が自分らしくあることで、他人を尊重できるようにもなる。
しかし戦争は始まり、ウィリーの母が病気になりロンドンに呼び戻されたり、ウィリーの周囲にも死の影は忍び寄ってくるのだった。
ウィリーの心が動きを止めてしまうような衝撃的な出来事が二つ起こります。
トムがどれだけウィリーを大切に思い、守ろうとしているか。
法的な正解ではなく、ウィリーにとっての最適解をトムはウィリーに与えます。
“「あのひとたちはおまえを、子どもを養育する施設に入れようとしていた。しかしわしはお前をここに連れて帰りたかったんだ」
「どうして?」
「どうしてってーそれは」(中略)「それはおまえがかわいかったからだ。それだけのことだよ。おまえがいなくなって、とても淋しかったのさ」”
それは、ウィリーが一番欲しかった言葉なんじゃないだろうか。
ハイスクールに進学したいキャリー。
“「変人扱いされてもやりたいことをやる方が、当りまえの女の子の生活を送りながら惨めな気持ちでいるより、よっぽどいいもの」”
ウィリーが一つの大きな試練を自分の力で乗り越えた時、ウィリーは言う。
「ぼく、ずいぶん大きくなったみたいだ!」
苦く苦しい部分もあるけれど、親子、友情、ジェンダー、戦争、信仰、芸術などいろんなことを考えさせられた。
読んでよかった。
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第二次世界大戦中のイギリスが舞台。
ロンドンから田舎に疎開した9歳のウィリーは一人暮らしの偏屈なトムさんの家に預けられる。
トムさんの辛抱強い献身的な子育て、村の人々の親切、友だちもでき少年らしい明るさを取り戻し、心を開いていく姿が詳細に描かれている。
その中でウィリーが母親から受けてきた驚くべき実態が明らかになってくる。
環境が違うと子どもはこれ程変わるのだと苦しくなる。
ウィリーが生き生きと幸せになっていく過程を祝福しながら読んでいると中盤、母親から戻ってくるようにと手紙がくる。
不安で読む手は止まらない。
心に深く沁みる良い話だった。
トムさんが素晴らしい。待つこと、教えること、自信を持たせること、そして愛情を注ぐこと、子どもに接する理想的な姿だ。
トムさんがウィリーが寝る前に本を読み聞かせ、おやすみなさいを言う場面が静かで愛と祝福に満ちていて、泣きたくなる。
苦しくなる辛い場面があるが、子どもたちの日々の描写が生き生きと明るく楽しいことに救われる。子どもの楽しい日常に涙がでるほど幸せを感じる。
1981年にイギリスで出版された。