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祈りの海 みんなのレビュー
- グレッグ・イーガン (著), 山岸 真 (編・訳)
- 税込価格:1,056円(9pt)
- 出版社:早川書房
- 発行年月:2000.12
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紙の本
不死社会の中の死?
2001/04/24 21:42
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キュバン - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは中短編集だが中でも特に「ぼくになるために」に焦点をあてる。
脳の情報をそっくり全てコンピューターや他の脳に写すことで肉体は死んでも意識の不死性を獲得する、という設定のSFは数多い。だがこれは真の不死性の獲得だろうか?
生き残るのはあくまでもコピーであり、自分自身の意識ではないことは明らかに思える。−−−命題1
一方この技術が実現し普及した社会を考えてみよう。本体が死んだ後に生き残ったコピーにとって自分は本体が物心ついてからの全ての記憶を持つ本体自身としか感じられない。そしてその記憶には死んだはずなのに生き返った経験も含まれている。このコピーにとってはもう一度死んで別のコピーが生き残ることは真の不死としか感じられないだろう。まして他人にとってはコピーと死んだ本人の区別はできない。
結果として命題1を正しいと考える人はいなくなり、この技術は不死を実現する素晴らしい科学の勝利ということになり、この社会は存続する。その影で何億もの意識が殺されていることは誰にもわからない。本体が死ぬのが寿命なら良いが「本体の性能が落ちる前に」処置されるとなると事は深刻である。
この状況は相当リアルで深刻な恐怖だが、命題1の恐怖を正面切って描いたSFを私が読んだのは本書「ぼくになるために」が初めてである。他の作家がよほど脳天気なのか?イーガンが鋭いのか?
本作品は一応はハッピーエンド?なのだが。
実は脳のハードウェアを少しずつ置き換えた場合を想定すると命題1も必ずしも正しくないかも知れない点は付記しておこう。
他の作品にも触れると、「キューティ」「繭」は社会派作品と言えるが極近未来に、いやもう既に実現しうる状況を描いている点で衝撃が大きい。この2作は既に未来小説ではなく現代小説である。
「誘拐」も考えさせられる作品だ。見方によっては人形に魂を感じる感性は昔からあるじゃないかとも言えるのだが。
「イェユーカ」は社会悪との対決の物語でラストは感動的。奇しくも現実の世界でもエイズ治療薬のゾロ品問題が起きたが。
「祈りの海」のテーマは「月があばただらけの岩の塊とわかったらロマンがなくなるのでは?」というのと同じテーマに思えて新鮮味は感じない。設定された社会と人々の描写はおもしろく読める。
紙の本
これが本当のハードSFなのかもしれない
2017/04/29 14:34
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投稿者:コスモス - この投稿者のレビュー一覧を見る
前々から気になっていたハードSFの作家グレッグ・イーガン。
一回読んだだけでは、内容が全く理解できないかもしれませんが、そこであきらめてはいけません。僕は二回読んで内容を理解することが出来ました。
内容を理解できた時に感じられるセンス・オブ・ワンダー、それでいて徹底的に科学的な厳密性を追求し、なおかつ人間のアイデンティティーを問う内容に、読者はいろいろなことを考えさせられるでしょう。
電子書籍
すこしふしぎ
2015/03/30 21:34
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投稿者:えむ - この投稿者のレビュー一覧を見る
難しかったけれど、面白かったです。
間抜けな感想ですみません・・・。
どの話も近未来のありえそうな状況に主人公が悩む、というものです。
個人的には“キューティ”のお父さんと“繭”の捜査官?さんが好きです。
宗教や思想が絡むものはちょっと理解が追いつきませんでしたか、
また読み返して噛み砕こうと思います。
紙の本
新鮮な驚きに満ちあふれた短篇集
2001/09/30 04:48
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投稿者:トリフィド - この投稿者のレビュー一覧を見る
イーガンの作品には、SFというものは、本来みんなこうでなくてはいかんのではないかと思わせるところがある。
イーガンの作品に触れて驚嘆した時、イーガン最高! イーガン素晴らしい! とイーガンをたたえるだけでなく、ほかのSF作家たちもこういうところまで突っ込んで書いてほしいと思ってしまうのだ。
イーガンは、現実に私たちが将来見ることになりそうな世界を描く。そこに登場するテクノロジーは、現在のテクノロジーの延長線上にあるオーソドックスなものであり、その世界は、私たちの進路の真正面にある世界なのである。
そしてそこで登場人物たちが遭遇するシチュエーションというのも、別に読者をあっと言わせる超絶的なプロットの妙技によるものではない。「あ、そういうことになるのか」と思わせる順当なもの、ほとんどその前提から導かれる必然とでもいうべきものだ。だがそれがなんと驚くべきヴィジョンを繰り広げてくれることか。
オーソドックスなテクノロジーの先にある異様な状況と驚くべき結果を、つまりわれわれの進路の真正面にあるこの驚異を、イーガンほどまっすぐに正面から見据えて、突っ込んで考察し描く人は少ないのではないだろうか。
というわけで、本書は、ここ何年かでもっとも驚きに満ちた、もっとも素晴らしい短篇集である。SF者は全員読め級である。
「SFなんて読み飽きたなあ、現実の方がSF的だよ」とぼやいている最近倦怠期を迎えた古くからのSFファンにもおすすめだ。ねぼけまなこがぱっちりしてしまうような新鮮な驚きに満ち満ちた本である。
紙の本
壮大な自分探し
2001/08/17 20:02
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投稿者:猫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最新の物理理論などを駆使しているそうだが、そのあたりの良し悪しはわからない。共感できるのは、自分自身への懐疑と世界への漠然とした不安を、丁寧に描いているから。最先端のSFと評価されているようだが、半端な作品よりよほど読みやすい。