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紙の本
衣の匠の美たち。
2002/07/25 21:47
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投稿者:凛珠 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「文化」は全てが素晴らしいというわけではなく、よく知れば中には陰惨だったりするものもある。だから昔のものや文化というだけで全て肯定してはいけない。しかし、本書に収められた着物群がどれも素晴らしい作品だということは一目瞭然だろう。白、藍、緑、紅、黒、……絢爛豪華というのではなく、割と地味めであっさりしながらも、しばし息を呑むような力のある作品ばかりだ。涼しげなものが多く、もし出来ることならば夏にはこうした着物を身にまとって、縁側の障子を開け、畳に寝転がってみたいと思う。
紙の本
工人たちを愛しぬいた白洲正子のみごとなきもの讃歌
2000/12/26 12:16
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投稿者:近藤富枝 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一頁、一頁、目の昏むようなきものが現れる。「文は人なり」と昔から言われているが、きものもまた人なりで、白洲正子が着たものには“むだのない美しさ、静かな美しさ”がどれにもみなぎっていて言いようもなくすばらしい。しかしそのなかでわたしの着るきものは一枚もない。一見誰でも着れそうなさりげない趣もあるけれど、白洲正子の着姿となった時を思うと、「とてもいけません」とひるんでしまう。
まったくの素人だった彼女が、ひょんなことから銀座に店を経営し、多くの織人(おりびと)染人(そめびと)を育てた。持ってきた反物はまず自分で着て、欠点をみつけて教え、職人もすなおにその言葉に従って技を磨いて芸を完成させていったという。そして一流の仕事を世におくり出していったのが白洲正子である。黒子(くろこ)仕事と正子はいうが、何というやり甲斐のある仕事であろう。
そうして生んだ名人たちのきもの、それを正子の箪笥からとり出して頁が作られ、それらのきものの作者とのかかわりや、また彼女のエッセイから抜粋されたきもの論、芸術観などがぎっしりつまり、読みごたえ、見ごたえのある本となった。
「著者が愛した“染め織りびと”という頁には十人の写真と、その簡単な経歴がのっている。女性は、三人である。作品の頁を眺めると、ついそのきものを作った人のことが知りたくてこの頁を繰る。こまめにそれをせずにいられないほど、一騎当千ともいいたいすぐれた職人さん方である。きものはどれもこれもよくて、あげるから一枚だけとれといわれても三年も迷ってしまうのではないか。
こうした手仕事はたいへん高価で、かってわたしは彼女の店である銀座の「こうげい」の前を通りながら、目を潰って通りすぎたことを思い出す。今思うと残念でならない。
「こうげいのこと」という文章を古澤万千子さん(染色家)が書いているが、著者に啓発されたことをいろいろ述べられていて、白洲式の人の育て方がよくわかる。そして、「暗中模索ながらも、何か大きな包容力と、底知れぬ探求心を持たれた先達にお目金の叶った喜びは、気の遠くなるような緊張感となり、やがて静まって」
と述べ、彼女との出会いが創作への強い引き金になったことを語っている。
福田千吉という呉服屋さんの話も面白い。著者の夫は有名な白洲次郎で、彼のきものを作ろうと千吉に依頼した。彼はまず旦那に逢いたいといい、逢うとポンと手を叩き 「よくわかりました。やわらかい物はダメだな」
といい一年ぐらいかかって結城のしぶい一そろいが出来上った。それもいい。が羽織はさらに一年かかった。裔に工夫がつかず悩んだ末のことだったという。千吉は女性のきものを作る時は一つ一つ、惚れた女のきものを作るつもりでやっているのだという。この念の入れ方、今時の呉服屋さんに聞かせたい。
写真も襞の持つ質感をよく出し、それぞれの色を大切にし、きもの一枚の持つ生命(いのち)をおろそかにせぬよいものとなってみごたえがある。 (bk1ブックナビゲーター:近藤富枝/作家 2000.12.26)
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