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E.T.A.ホフマンの世界 生涯と作品 みんなのレビュー
- エーバーハルト・ロータース (著), 金森 誠也 (訳)
- 税込価格:2,750円(25pt)
- 出版社:吉夏社
- 発行年月:2000.12
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紙の本
見高名な美術史家が照らしだす「マルチ」なホフマン
2001/02/07 18:15
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投稿者:小沼純一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年2001年は、夏目漱石が『吾輩は猫である』がモデルにした長篇『牡猫ムルの人生観』の主人(猫?)公、E.T.A.ホフマンの実在の飼い猫「ムル」が天に召されて180年目にあたる——と、この本を読んで始めて知った。その翌年に作家自身も亡くなっているから、来年はホフマンの没後180年ということにもなる。
後々にバレエになった『コッペリア』とか『くるみ割り人形』、あるいはオペラ『ホフマン物語』といった作品は知られているけれど、実際にこのドイツ・ロマン派の作家の作品に触れているかといわれれば、せいぜい文庫になっている数冊程度というのが、一般の傾向にちがいない。それでも、日本では隣国フランス同様早くから本国ドイツよりはるかに評価が高かったのだという。
本書はコンパクトながら、この作家の生涯をたどりながら、あいだに重要な作品についての解説をおりこんで進行してゆく。時代のながれ、風潮と、そのなかを生きてゆく作家ホフマン。そしてその生から生み落とされる作品。その作品のなかに、時代を読み込み、また時代への照射を読む。
「不気味、グロテスク、奇形、歪んだ像。ホフマンの作品における文体の特徴は、外界と内界をつなぐ通風口が狭められたこと、その接触が中断されたこと、相互交流の流れが妨げられたこと、それに両者の不一致がますます大きくなったことについての感覚の表現にある。こういった感覚は、個人的にのみ知覚され、意識の歴史からは制約される。ホフマンはこれを繊細な感覚能力によって拾い上げ、形象のイメージとしてつくりあげるのだ。」
「悪魔は万物の上におのれの尻尾をのせている」というホフマンの確信、モットーを、筆者がときに反復して検証していることも、本書を一貫させる構成の要素だ。こうした手腕をみせる著者は、1929年ドレスデン生まれの人物。1975-86年にはベルリン美術館の館長を、83-86年にはベルリン芸術アカデミーの造形芸術部長を務めた美術史家である。編著『ベルリン1919-1933——芸術と社会』は岩波書店から邦訳もあるので、ご存じの方も多かろう。ホフマン自身がもともとは音楽家として身を立て、デッサンやカリカチュアの腕前を誇り、その後に文学へと移行していった「マルチ」な人物であったことを考えれば、著者ロータースが、逆に、美術畑から文学へと視線を向け、ホフマン像を浮かび上がらせているのも、自然なことといえるかもしれない。
もちろんホフマンの作品を知っていればよし、なんとはなしに興味をもっているというひとでも、良き入門書になる本である。 (bk1ブックナビゲーター:小沼純一/文筆業・音楽文化論研究 2001.02.08)
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