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紙の本

薬害の悲劇,HIV。被害者たちの健康状態,生活状況,人生観などを詳細に調査。問題の全容を解明する

2001/02/20 18:15

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:高山 博 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 現在,わが国では多くの薬剤が出回り,その一方で,薬害という悲劇も生まれている。サリドマイド,スモン,薬害エイズ,陣痛促進剤,MMR(新三種混合ワクチン),薬害ヤコブ病など,今なお,多くの患者が苦しみのなかを生きている。いずれの薬害とも,今後の教訓としなくてはならないが,そうするためには何が必要なのだろうか。法制度の整備,医療情報の公開の促進,第三者によるチェック,迅速な捜査などが考えられる。これとは別に,薬害に苦しんでいる人たちの状況を見据えることも必要である。患者の手記や弁護士による訴訟の経緯を読むことで得られる面はあるが,もっと大局的に,被害者の置かれた状況を知ることも大切なのではないだろうか。
 その点を訴えているのが本書である。HIVの感染被害者の健康状態,生活状況などを調査したレポートで,今後の対策を模索した解説書である。疫学調査とは異なり,被害者の姿が見て取れる。非加熱の血液製剤による被害者の悲痛な叫び,家族の苦悩が綴られている。社会学的な調査結果と今後の課題を述べている。医療関係者,公衆衛生担当者,関心のある一般の人々に薦めたい1冊。
 HIV感染に伴う社会的な差別が今なお,根深い状況,プライバシーの問題など,社会全体で取り組まなくてはならない課題を考察している。社会的問題を直視する姿勢が強いからこそ,当事者参加のリサーチが可能となった。その意味では貴重な情報源でもある。
 13章構成で,まず,薬害HIV感染被害の歴史的経緯と現状を解説する。2章では今回のリサーチに至ったプロセスを述べる。調査の目的と同時に,研究者の役割をも考察する。3章以下で調査で得られた結果を分析する。回答者の属性,心身の健康状態,告知,医療体制の在り方,セルフケア,就労・就学などの社会生活の状況,差別問題と差別を受けることに対する強い不安感,サポート体制,ストレスへの対処能力,感情などに関する事項を調査した。さらに被害者救済の現況,今後の課題に触れる。総合的な観点から,被害者の実態を論述する。
(C) ブッククレビュー社 2000

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