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紙の本
第3弾に期待したい
2003/06/19 11:35
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:1969 - この投稿者のレビュー一覧を見る
相変わらずの取材力・筆致力には舌を巻くが、佐野氏にとっても「現場」である業界を描いている為か、『巨人伝』や『カリスマ』に見られるような第三者的視点で「相手の懐に飛び込んで行く」気概が感じられなかったのは私だけだろうか?
確かに本書は、現在の出版不況の一側面は言い当てている。書評や図書館までを綿密に取材し、トレンドであるオンライン書店・電子出版も漏らさず、それらの意義にまで言及した本は中々ないだろう。同様に「取次悪玉論」に陥りがちな無知な業界人に喝を入れる姿勢は爽快ですらある。
しかし、多角的に分析したが故なのか、あと少しで問題の核心に迫れるのに、そこに至らなかったことが残念だ。
欠落しているのは、「メーカーとしての出版社」という視点である。本が生み出され、読者の手に届くまでには様々な指紋がつく、と筆者は説明しているが、その指紋のつきかたが省略されてしまっている。三章の「版元」では経営者、五章の「編集者」では編集者にしか話を聞いていないのは明らかに片手落ちだ。日本の出版社の歴史、あるいは現在のどこでもよいから具体的な版元を綿密に取材するべきだったのではないか? 版元はメーカーである以上、編集・製作以外の業務も機能として持っている。そういったプロダクト部門以外の版元の姿を描きだすことで、自ずと版元の経営実態が明らかになった筈だ。現在の出版社倒産の多くは、コーポレートガバナンスがとれていないことに起因している。出版労組に言及したところで著者はこの点ももっと深く掘下げるべきだった。
取次・書店に対して何の提案もない出版営業の実態(書店がメーカーとして版元をどう見ているのか?)、返品に溢れかえる版元倉庫の商品管理の杜撰さ(返本が全て断裁処分される訳ではない。「死ぬ本」「生きる本」の判断基準は?)、「昼時に注文の電話をかけたら電話すらとらない版元」と書いてはいるが、それが何故なのか?(どういう神経しているのか?と憤慨し呆れているだけでは読者は納得しないのでは?)
本書は、縦横に業界を描いてはいるものの、本質的な部分を抉り出しているとは言い難い。類書の業界本も合わせて読むことをお薦めするとともに、著者には第3弾の執筆を期待したい。
紙の本
いまどき、いまこそ「だれ殺」。
2003/04/30 09:03
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:松井高志 - この投稿者のレビュー一覧を見る
おととし出た本。新聞などでかなり話題になったような記憶がある。元出版社従業員にとってはヘビーな内容である感じがして、敬遠していた。今更だけれども、ちょっと必要に迫られて読んでみた。その後の反響をまとめた続編が出ているらしいが、それはおいといて、原稿にして1000枚に及ぶというのは、やはり長すぎる。これを短時間で読み切ってしまうのは作者にとっても読者にとっても危険である。加えて、内容にあまりユーモアが感じられない。
よって、どうしても内容と距離をとりつつ、少しずつ読み進めることになるわけで、興味を引く章とそうでない章とに差ができてしまい、第三章・版元、第五章・編集者、第七章・書評、第八章・電子出版以外は正直、腹に応えなかった。「編集者」については、筆者のいうサラリーマン編集部員だった経験がある自分には、叱声の連続にしか読めない。にもかかわらず、自分がまだ編集だったとして、この本を読んだとしても、明日からぐうたら編集を返上して生まれ変わったように働くか、といえば、絶対そうしないような気がする。そういう意味で、この本はまじめすぎて、読む人を「たらし込む」ところがない。要するに、結構ミもフタもないことが書き連ねてあって、これを読むであろう、無名の多くの凡庸な出版人というものの立つ瀬がない。なんかこういう攻め方は自分はあまり好きではない。
どうでもいい揚げ足を取るが、「連綿と語る」は「綿々と」ではないか。また日本画家「伊藤深水」は「伊東深水」であろう。攻めているときは脇が甘くてもいい、ということにはならない。この本がいわゆる大手出版社から出しにくいというのは分かるが、校閲がきちんと機能していればこの手のつまらない見逃しはなかったはずである。そういう意味ではこの本も死んでいる。
私の伯父は、小出版に従事していて50代で亡くなった。この本にも若くして亡くなったり病気になる出版人が出てくる。少年ジャンプの編集長ではないが、「本」に殺される人も少なくないのだ。そのあたりにはコメントしなくても良かったのだろうか。
紙の本
犯人のわからないミステリーは第一級の作品ではない。
2002/07/02 20:07
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投稿者:kain - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者は種々のインタビューなどで、「事件ものとしてこの作品をかいた」と答えている。
もし、本当にそうならこの作品は一級の作品とは言いがたい。現実に起きた事件だろうと、想像上のミステリーだろうと、ネタにした以上作者はある種の犯人像をはっきりと読者に提示する必要があるからだ。
なるほど、「本」をめぐる状況は、大型書店の販売現場や取次などの流通の詳細な流れまで踏み込み、その問題点を指摘している。目新しい内容であり、資料的価値は高い。
だが、個々の問題点や作者の嘆きがこれでもかと投げかけられているが、読後に「誰が「本」を殺したのか」という疑問が解消されることはない。
おそらく作者も分らないからこそ、こうしたタイトルをつけ、読者に質問しているのだろう。が、作中には、関係者への悪口雑言の類がこれでもかというぐらい頻繁にでてくる。他者をこうまではっきりと批判する書き方をするなら、推測でもいいから犯人像を提示し、その捕まえ方を示す必要があったのではないだろうか。
資料としてはいい。しかし、作品としてはどうだろうか。
紙の本
ざっと読んでおくくらいで
2001/10/27 21:36
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投稿者:katokt - この投稿者のレビュー一覧を見る
ひととおり現在の本をめぐる状況や支えている人、エピソード(どうしてジュンク堂って名前がついたかとか)について知っておくにはよい本。ただどうしても作者の視点が低すぎて、それ以上にはなりえてない。
とくに電子本をめぐる状況をとっても、もっと深い考察ができそうなもんだが、結局足でしか稼げていない。まあ現場をまわって足で稼ぐのも重要ではあるんだけど、いかんせんまとまりにかけるし、方針のない現状把握で終わっちゃうんだよね。初出
紙の本
で、結局誰だったの?
2001/06/07 17:01
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投稿者:ゆい - この投稿者のレビュー一覧を見る
たしかに、読みやすかった。本好きに対する挑発的なタイトル。挑発的な書き方。分厚い本ではあったが、一気に読める内容と筆力ではあった。取材も大量にされている。本好きの好きな業界ネタが山ほど。
だが。
暴力的に要約すると、“みんなが本を買わなくなった。それも、きちんとした内容のある本をだ。それが出版不況を招いている。こころある人間は、よい本を沢山買うように。”
それで解決するのか?読後感は消化不良状態である。
ただ、自分への問いかけは残りつづける。“で、結局どうすればいいのだろう?”それが作者の目的であるのなら、見事に術にはまってしまったことになる。
本好きが興味深い何時間かを過ごせることは、間違いのない本ではある。
紙の本
文科系ライターの限界
2001/02/13 10:42
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投稿者:ばいきんまん - この投稿者のレビュー一覧を見る
星五つの本になるだろうと期待して読んだが、そうはならなかった。
本の定義を明確にせず、統計など数字をあまりよく見ていないからだ。だから売れなくなったという言説の深刻さが業界外部にいる者には今一つよくわからない。たとえば堅い本が売れなくなったと言っても、それはたとえば出版洪水のおかげで堅い本も出版点数が二倍に増えて、顧客の購入金額が変わらないから、これまでの半分しか売れなくなったとも考えられるではないか。
また「堅い本」というと佐野氏のみならずたいていの読書家は文科系の本を対象にしているが、理系の本はどうなのか。パソコン関連などはどこまでを「本」と認めるか否かはともかくとして、ここ数年急速に売上を伸ばしたはずである。このあたりの突っ込みもほとんどない。
要するに、インタビューを主体で分析がほとんどないのが残念なのだ。
佐野氏のジャーナリストとしての努力は認めるが、ビジネス関係や業界分析に強いライターの助力を仰ぐべきではなかったかと思う。