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山内秀樹氏の「湾岸戦争におけるF-4G Wild Weasel」という記事で、91ページから「湾岸戦争に先立って実施された米陸海空軍に海兵隊を含めた準備の中で、最も大規模なものは使用燃料の統一であった」と、特に見出しもなく突然重要な話が始まる。
これは、一部のUAVなどのガソリンエンジンを除く、全てのガスタービンエンジンとディーゼルエンジンの燃料をJP-8に統一するというもの。大規模作戦にあたり燃料の調達・補給に莫大なメリットがある。
エンジン形式で書くと2種類だが、装備品としてはジェット機、ターボプロップ機、ヘリコプター、通常動力の艦艇、戦車、装甲車、トラック、HMMWV等、ほぼ全ての乗り物を同じJP-8で動かそうということ。
海軍機は元からJP-8だったが、空軍機はJP-4からの切り替え、そして、車両はディーゼルオイルからの切り替えになり、特にディーゼルエンジンは調整が必要で、開戦前に「整備員を大量に派遣」して調整を終わらせたとある。
記事中で「最も大規模なもの」とあるとおり、確かにこれは、アメリカ軍の強さの本質を表す重要な事項ではないかと思った。そこで、記事を読んでから他に詳細な資料はないかと探したが、他に言及している人を見ることはほとんどなかった。
ということで、本書はF-4ファントムのアメリカ空軍型の特集本であるが、同時に、湾岸戦争におけるアメリカ軍の燃料統一について記した、おそらく唯一の日本語文献。