紙の本
タイタス・クロウの冒険
2002/03/01 03:02
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投稿者:キイスミアキ - この投稿者のレビュー一覧を見る
文庫の紹介文を読むに、《二〇世紀最大の怪奇小説家H・P・ラブクラフトの衣鉢を継ぐ英国ホラーの重鎮》らしいが、ラムレイという名前は、はじめて目にしたものだし、ホラーについては少しの知識もないのでわからない。だが、ラヴクラフトによって創作され、弟子たちが体系化したクトゥルー神話の、後継者といえる存在であるのは、この連作怪奇探偵小説を読めば自明のこと。確かにラブクラフトの衣鉢を継いでいる。
作者のラムレイを、本作で解説を担当し、以前に翻訳を行っていた赤松健は、《親日家の心優しき「召喚者」》と表現している。文通していたこともあったんだとか。解説《優しき召喚者》で引用されているラムレイの言葉からも、読者を楽しませるために、クトゥルー神話の存続、といった思い入れが伝わってくる。優しい人なのかはちょっとわからないが、肩入れせずにはいられないキャラクターなのは間違いなさそうだ。
ラヴクラフトの友人であり、弟子でもあるオーガスト・ダーレス(シャーロック・ホームズのパロディとして名高い、ソーラー・ポンズシリーズの作者でもある)が編集者として、ラムレイの処女作出版に携わっているというのは、クトゥルー神話を扱ったホラー小説、という狭い世界のことで必然なんだろうが、奇怪な因縁といえる出会いがあったんだろうと想像してしまう。
主人公のタイタス・クロウは、太古の邪悪な神が操っていたという秘術を習得し、悪の手法を使うことで悪しき存在と戦うという人物。戦中には、英国軍本部に在籍し、暗号の解読や、ヒトラーのオカルト嗜好に関してアドバイスをするという立場についていたが、戦後はオカルト関係の収集家、研究家として活動していた。
本作に収められているのは、彼の生い立ちから、のちに悪と対峙するきっかけとなった「妖蛆の王」事件、相棒のド・マリニーと共に異界へと旅立って姿を消してしまったのちのエピソードまで。全編を通しての伝奇趣味は新しいし、クロウによる謎解きは面白い。
題名を「タイタス・クロウの事件簿」とするよりも、冒険としたほうがよかったのではと思う。事件簿としたのは、ホームズやそのライヴァルたちが影響しているのかも。苦労の冒険譚は、長編作品として書かれ、完結しているようなので、そちらの翻訳が行われるのを待ちたい。
『妖蛆の王』
中編。
戦後まもなく、仕事を失っていたクロウは、自らのオカルトに関する知識が生かされそうな仕事の口を見つける。雇い主を訪ね、奇怪な風貌の館にやって来た彼は、奇妙な老人に知識を認められ、オカルト関係の膨大な蔵書の整理を任される。
たびたび見かけられる気味の悪い虫の姿や、飲んでしまうと自分を失ってしまうワイン、得体の知れない雇い主が関係する悪夢から、自らの危機を悟ったクロウは、敵への反撃を開始する。
クロウは、敵の知識を利用し、自らの武器として戦うというタイプのヒーロー。蔵書を読んだり、遺物を調べるなど、力を手に入れる方法はまったく異なるが、仮面ライダーとも相似点が…。
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★高校時代(って、何年前よ?)に読みたくてジタバタしてたラムレイ、邦訳されていたことに初めて気づいた! つか、気づくの遅っ!(笑)
いや〜、楽しみがまた増えた。
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中学生の俺が興味を示した初めての本。オカルトだけどそこがいい。あるエロゲのキャラはクロウをイメージしてつくったんだと。
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神霊探偵タイタス・クロウです。
探偵じゃないって〜〜、というツッコミは置いておこう。
魔の力を持って、魔の力を制する物語です。
そして、作者のブライアン・ラムレイ自身が書いているように、
「クロウは決して恐怖に卒倒したり逃げ出したりすることがない。」
のです。
それって、ホラーとして、どうなのよ(爆)
でも、この派手さ、オーガスト・ダーレスの「永劫の探求」を読んだときと同じ様な、矢野 健太郎の「ケイオス・シーカー」シリーズを読んだときと同じ様な楽しさを感じました。
「ケイオス・シーカー」は、多分、意識して読んだ初めてのクトゥルー物だったのです。
長編、全部日本語で出るといいなぁ。
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タイタス・クロウの短編集。探偵ものでありオカルトもの。
クトゥルフ神話を根底に据えながらも、ラヴクラフトとは登場人物の性格が違うため、話の進行がまったく違うのが面白い。
ラヴクラフト的な主人公ならば、迫り来る恐怖から逃げようとし、しかし出来ないことを悟ったとき狂気に駆られ自殺でもしてしまうであろう場面でも、この話の主人公であるタイタス・クロウは勇敢にも立ち向かいます。
短編によって出来が上下しますが、それでも全体を通して面白かったと思います。
個人的にお気に入りは「妖蛆の王」と「ニトクリスの鏡」「名数秘法」。
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比較的ライトなクトゥルー系短編集。
ラブクラフト的な「おぞましい神々への宇宙的恐怖」ではなく、
「主人公が邪悪に立ち向かって倒す」タイプの展開なので
こちらの方が入門には向いてるかも知れない。
長編「地を穿つ魔」も非常にオススメ。
言わずもがな、ECOのタイタスの元ネタは彼。
そうに違いないいや絶対そうだ(
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“事件簿”と銘打っているが、ただのミステリではなくオカルト・ミステリ。
著者は「H・P・ラヴクラフトの衣鉢を継ぐ英国ホラー界の重鎮」(裏表紙解説より)。主人公タイタス・クロウは通常の人間だが、魔術等の知識を極め、それを用いて魔術師やテロリストと戦う……という内容。連作の短編集。
時代背景は20世紀前半から中盤だが、同じ国ということで、どことなくホームズものを彷彿とさせるものがある(影響もかなり受けたと思われる)。謎解きということでは物足りないが、相手は一般法則を無視した存在なんだから当たり前かw
ゴースト/オカルトハンターものの古典として愉しめる。
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今なお活動するラヴクラフトフォロワーの一人、ブライアン・ラムレイの書くヒロイックサーガ。
クトゥルー神話をベースとしたこの話は、ぜひラヴクラフトの後に読んでほしい。
短編集『事件簿』の『妖蛆王』が読みやすく、オススメ。
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上記のシリーズの短編集。シリーズ化のはじめに短編で雰囲気を伝えようとしたんだと思うんだけど長編ものの合間や後日談だったりしてシリーズ続行されなかった今となってはどうなんだか。短編の内容も長編とそうかわんない。
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「ニトクリスの鏡」まで読了。
クトゥルフ神話の勧善懲悪もの。
HPL的コズミックホラーより怪異ハンター的カラーが強いけど、「屍食教典儀」「ナコト写本」「ニトクリスの鏡」といったキーワードがばんばん出てきて、それだけでわくわくしてしまう。
特に中短編「妖蛆の主」が密度が濃くて面白かった。
デモンベインのティベリウスの台詞の出所はここだったのか!
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クトゥルー神話大系の一つ、タイタス・クロウ・サーガの短編集。 「魔物の証明」や「呪医の人形」が超自然的恐怖を扱いながらも、逆にそれをジョークとして扱っているのが印象的。
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あまりクトゥルー神話である必然性がないような気もするけれど、コネタの織り込み方が巧みで楽しめるし、考えてみればこれでクトゥルーものでなかったらさして面白くもなかったか。という塩梅の短編集。
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すばらしきオカルティスト、タイタス・クロウ。
彼はときにオカルトを悪しき行為に使おうとする
不届きものと一戦交えることも時にあります。
作品で言えば「妖蛆の王」と「黒の召喚者」がそれです。
前者の作品はかなりグロテスクなので読む際には
要注意であります。
他には不思議系な作品もあります。
「ド・マリニーの掛け時計」なんかがそれです。
が、これもやっぱり読むとグロいです。
と、言うか怖すぎます。
ただし、唯一の難点は
死後のクロウが出てくるところ。
なぜにそれを出したんだろうなぁ…
面白いからこれを見てしまうとさびしくなるぞ!!
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以前からタイタスクロウのことを聞いたことがあったけど、銃でドンパチする系のダイナミックな作品かと思ったら、知性あふれる主人公が緻密な調査と知識で勝負するタイプの作品だった。
個人的に大変好みにあった本でした。
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白状するとクトゥルフ神話関係は実はラブクラフトしか読んだこと
がなかった。あとは事典とか画集とか。それもあって、今回Amazon
でたまたま巡り会ったこのシリーズを読んでみることにした。
まずは中短編集のこちら。最初から私の思っているラブクラフトの
世界、私の知っているクトゥルフ神話とは別物と思って読み出した
のでそれなりに楽しむことが出来たが、予備知識無しに読み始めて
いたら途中で投げ出してたかも知れないな。
主人公タイタス・クロウはオカルト探偵であり、邪神ハンター。
オカルトや科学の力を使い、旧神の助けを借り、旧支配者を狩り
立てるという、ラブクラフトの小説を読んだ者には信じられない
ような筋立てなのだ。まぁ何よりも一冊持っているだけで発狂
しかねないような本を何冊も蔵書に持っていて平気の平左だと
いう時点で、いわゆるコズミックホラーとは違うモノだとは
すぐわかりますが。
とは言いつつこの中短編集はまだまだラブクラフトに寄せようと
いう意図が感じられる作品が多く、ある意味残念。次の初の長編
と来たら!(笑)。