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模倣犯 The copy cat 上 みんなのレビュー
- 宮部 みゆき (著)
- 税込価格:2,090円(19pt)
- 出版社:小学館
- 発売日:2001/03/21
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下巻が気になる
2023/04/30 21:27
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投稿者:カレイの煮付 - この投稿者のレビュー一覧を見る
上巻で、犯人と思われる状況が明かされるが、それは、半分間違った結論だった、というところから、過去を紐解いて行く。上巻だけでは、犯人には到底辿り着けず、下巻が気になるところである。
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上巻は「さわり」
2002/06/10 19:52
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投稿者:あつぼん - この投稿者のレビュー一覧を見る
登場人物がきわめて多く(20人は下らない)、覚えるのに困難を極めるが、ほとんど全ての人が何らかのかかわりを持っており、それなりの役割を担っているので、心して記憶しながら読むべし。
一見無関係な登場人物多数、エピソードの時間さかのぼり、語る人物の頻繁な交代など、いずれも「理由」にも見られた手法だが、今回ここにきわまった印象。そのため最初は少し読みにくく感じるのも「理由」と同じ。
時代に敏感な著者、今回は、マスコミを通じて頻繁に見聞きされるようになってしまった「一般人には理解できない」殺人に世相を反映させている。いつの時代もそうだったのかもしれないが、総中流の生活に生まれたときからどっぷり漬かった現代の日本人にとって、他人との関わりとはどういう意味を持つものなのか、生き死にでさえも昔の人間とは捕らえ方が違うのかなどと考えさせられる。その一方で、「理解できる」感覚を持った年配者や若者も登場させることで、まさに現代を表現しているとも取れる。
話を詰め込めば上巻ですべてを終わらせることもできただろうし、それはそれなりに面白かったねと言える作品になったかもしれないが、ビョーキな状態を浮かび上がらせるには周辺も徹底して描く必要があったのではないか。
ひとつひとつの描写はさしてどぎついものではないものの、たてつづけに描かれると胸の悪くなる心持がする箇所もある。そういう意味では朝の電車で読むにはあまりふさわしくない作品かもしれない。
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現代を生きるすべての人に懺悔を強いる告発の書
2002/06/10 11:21
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投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品、おそらく後世まで傑作として賞賛されるであろう犯罪小説だ。
エンターテインメントとしても屈指の作品。次々と緊張した場面展開の連続で読み出すとやめられない、よく言うジェットコースター小説である。犯罪者はこれまで描かれたあらゆる悪のキャラクターをはるかに凌駕する、現代社会に存在する邪悪の凝縮として登場する。その犯罪行為は読むものが怖気立つ描写で詳述されのであるが、善意の人々に対し「あらゆる不義、悪、むさぼり、悪意に満ち、ねたみ、殺意、不和、欺き、邪念にあふれ、陰口を言い、人をそしり、神を憎み、人を侮り、高慢であり、大言を吐き、悪事をたくらみ、親に逆らい、無知、不誠実、無情、無慈悲です」。
この作品が単なるエンターテインメントではないところは人間の直面する、変えることも回避することも出来ない絶対的な状況を犯罪者、被害者、その家族、と第三者(マスコミ、ルポライター、一般大衆)の行動・心理を抉り出すことにより、語っていることにあろう。
カッコ書きはこの犯罪者にピタリあてはまる表現であるが、実は聖書から勝手に引用したもので、絶対者から見た人間一般の姿である。「なぜ人を殺していけないのか」との問いが大議論になる今日的社会状況がある。「汝、殺すなかれ」の戒律から解放された時にラスコーリニコフ的魂の救済方法がもはやありえないとすれば………。この稀有の殺人鬼、その犯行の土壌、犯行が成立する環境などいずれも現実的存在感の重みをひしひしと感じさせるからこそ、これは恐るべき小説である。
雑感をいくつか。
とにかくまれに見る大長編ミステリー。だが冗長さは感じないのです。犯行そのもの、その波紋、そのまた周囲に起こる波紋を丹念に書くがいずれも庶民感覚、すなわち身近にある現実を描いて、絵空事と思えないところで緊張します。
組織の「長」は組織を維持、成長、変化させるために当然、環境変化を読んだシナリオを考えます。そのシナリオ空間にはステークホルダーだけではなく、マスコミ、お役所、マーケットなどなど、思い通りに動いていただきたいと痛感するところがあるでしょう。万事がシナリオどおりに動くはずはないけれど、そのためにいろいろ努力します。
そのプロセスで喜び、落胆、喜怒哀楽の感情が発露されます。シナリオが完成すれば大喜びですね。
「模倣犯」の名称、これは作者の間違いではないかと思い続けました。最後になるほどねと感心しました。
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女性連続殺人事件の被害者,犯人,関係者の事情
2001/05/13 00:45
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投稿者:格 - この投稿者のレビュー一覧を見る
長い。この上巻だけで2段組びっしり720ページ(下巻もほぼ同じ長さ)。
上巻は二部構成。第一部は被害者とその周辺。及びそれを追う刑事とルポライターの事情。第二部は犯人とその周辺の事情。数多くの登場人物達のそれぞれの生い立ちからさまざまな事情について詳細に記述している。これらを基にいくつかの小説が成り立ちうるほどの深みを持っている。このため、長さを苦痛に感じる様なことはなく、次々にページをめくっていくことはできる。
しかしながら、それらの詳細さが、本筋のストーリーを追う上で必要不可欠なものかというと、多少疑問。かなりはしょってもストーリーとして成り立つし、十分に因果関係は成り立つであろう。逆に、肝心の犯人たちの動機については、分かった様な分からない様な…。これについてはまだ説明十分とは言えない。
なお、表題の『模倣犯』の意味は上巻全部終わった範囲でも分からない。
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連続殺人の犯罪心理学と都市社会学
2001/04/23 17:34
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投稿者:たけのこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
一家惨殺事件を生き残り、家族の死に対して罪の意識を抱いている少年が、こともあろうにバラバラ死体の右腕を発見してしまう。場所は墨田区、隅田川沿いの桜の名所として知られる公園。それが物語の発端である。一方、失踪した孫娘の行方を案じる江東区深川の豆腐屋の親父は、バラバラ死体の発見を告げるテレビのニュースが気が気でない。警察で腕の持ち主が孫娘でないことを確認するが、孫娘のハンドバッグが同じ場所から出てきて、何らかのかたちで事件に巻き込まれたという事実に向き合わざるをえなくなる。
そこへ、犯人から電話がかかってくる。犯人は慣れない老人を新宿の慇懃無礼な高級ホテルへ出向かせ、屈辱を味わわせる。——このあたり、《鼻持ちならないもの》に敏感な下町娘・宮部みゆきの面目躍如か。凶悪犯罪の被害者同士、少年と老人が心をかよい合わせるようになるのはまだ先の話で、そのきっかけを、取材に訪れたフリーライターが作る。彼女は彼女で、葛飾区の鉄工所の長男と結婚したものの子供を持たず、仕事に走り回る生活を、姑にとやかく言われている。物語の本筋にはあまり関係のなさそうなことながら、登場人物の生活背景や生活史、社会的な手枷足枷を余すところなく書きつくすのも宮部スタイルだろう。かつてそういうところを批判した文芸評論家がいたが、なにいってんだ、それがいいんじゃない。
やがて事件は連続猟奇殺人から、マスメディアを手玉に取り警察や世論を挑発する前代未聞の劇場型犯罪へと発展していく。しかし群馬県の山中で犯人と思われる二人組が交通事故死を遂げ、この小説の第一部(ここまででまだ全体の約四分の一)にあっけなく幕が引かれる。だが、そこから先がまたすごい。二人がなぜ事件にかかわり、死ぬことになったかを20年前の彼らの小学生時代にまでさかのぼって説き起こす。下町から練馬区に場所を変えて、えんえんと続く薬屋の息子とそば屋の兄妹の物語に、これまた深く感情移入をしてしまう。犯罪の被害者だけではなく、加害者や容疑者にも家族がいて、事件が彼らの運命を狂わせていくあたり。
主犯格がついに姿を現わす後半の展開から、ジャンルとしては“怪物”の造形にたけたサイコスリラーの系譜に分類されてしまいそうだが、読みどころは(そういうありがちな)《連続殺人の犯罪心理学》より、また《劇場型犯罪のメディア社会学》よりもむしろ、事件に翻弄される市井の人びとを描いた《都市社会学》の側にあるとわたしは考える。教育テレビでやってた「このまち大好き」みたいな世界ね。
【たけのこ雑記帖】
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まっとうに行こう!
2001/04/07 02:34
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投稿者:さぶちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
う〜ん…早くから犯人がわかっているミステリーなのに3551枚とは…!!果たして私にずるをして飛ばし読みをしない忍耐と根性があるであろうか…。3部作構成の中で、何度か指がむずむずし、台所に立って息を整え、よし今度だけは我慢してっと…一気読みできました。
お得意の「普通の人々」に対する細やかな描写と、複線、そして最後は一気呵成に胸がすーっとする「シ・カ・エ・シ」。犯人がわかっているだけに、「え〜い!!そいつに騙されるな!!」と叫びながらも作者はどうやってこやつにお返しするつもりなのかと(だってやっぱり期待しているのは勧善懲悪じゃないですか?)ハラハラしつつ、…満足しました。
あ〜良かった。
…って事だけじゃないですよね。この内容。誰もが持っているエゴ、英雄願望、暗い欲望いろいろな事が複雑にからみあって原因から結果へ、結果から原因へ…。
ただ悲惨だと嘆く現代事情に「だってしょうがないじゃない…」という言い訳ばかりしてないで、決して強いからではなく まっとうに勝負を掛けていく人間の姿を優しくて、哀しい目で描いた秀作です。稀代の猟奇殺人者の独白ではないのです。
そして因果応報、我が身を省みる身の丈にあった人生、まっとうっていうのが本当は一番難しいです。人間には。