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「ジプシー」の伝説とメルヘン 放浪の旅と見果てぬ夢 みんなのレビュー
- ハインリヒ・フォン・ヴリスロキ (著), 浜本 隆志 (編訳)
- 税込価格:3,080円(28pt)
- 出版社:明石書店
- 発行年月:2001.4
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紙の本
「ジプシー」(ロマ)たちの知られざる口承文芸
2001/05/25 23:39
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:藤井正史 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ロマの人々は、インドからヒマラヤを越えて砂漠を渡り、ヨーロッパへ到達したといわれる流浪の民である。エジプト出身と間違えられ、差別的な呼称の「ジプシー」と長く呼ばれていたが、現在は彼ら自身が自称するロマ(人という意味)と呼ばれている。本書では、7世紀イスラム教徒の影響からか、インド北西部パンジャブ地方の遊牧民族がペルシアを経て、15世紀にヨーロッパに流入したという説を挙げている。
文字を持たない彼らが語り伝えてきた神話と伝承は、長い旅で吸収した各地の地域の民族の宗教観、文化の影響を受け、様々な要素が盛り込まれていて興味は尽きない。多神教信仰のインドから発し、一神教のキリスト教地域であるヨーロッパでの長い生活の影響は、一つの話にも、多くの宗教の混在が見受けられて重層的である。特にわれわれ日本人にも共通する、アジア的な自然と一体化した生命観には親しみを覚える。
本書は19世紀後半に、現在のルーマニア・トランシルヴァニア地方のロマたちと、著者が生活をともにして集めた貴重なものだ。ジプシーの聖書ともいえる神話、この世の始まり、人間の成り立ちのストーリーからは、『旧約聖書』の天地創造、ノアの箱舟の話と明らかに共通する話があり、その他に、グリム童話とも多くの話が共通点を持つ。また、日本の古典落語「死神」と瓜二つの話もあり、その文化的スケールの大きさと想像力の豊かさには驚くばかりだ。各話の終わりに宗教や文化について解説欄を設け、読後にも楽しみを添えている。
厳しい状況の中で生き抜かねばならなかった民族の辛い歴史以外にも、祝いの席などでの演奏を担ってきた音楽性の素晴らしさや「占い」を駆使する不可思議さなど、彼らの魅力がストーリーの中にちりばめられている。語り口調を生かした翻訳も、老人から昔話を楽しみに聞いている子供立ちの姿が目に浮かぶようだ。キリスト教の影響を受けた話では、ジプシーの守り聖人、聖アントニオの話も登場する。子供へのプレゼントや情操教育に、社会への興味を持たせるためにも、子供から大人までぜひ薦めたい1冊だ。(藤井正史/bk1宗教書担当エディター 2001.05.29)
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