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紙の本

20世紀の代表的哲学者2人の対決の背景に迫る

2001/05/23 18:20

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:佐々木力 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ハイデガーといえば、20世紀最高の哲学者として高く評価される人である。その人がナチス党員であったことが最近知られるようになった。それで、彼の哲学思想と政治思想の相関関係について問いかける本も少なからず出版された。他方、新カント派を代表する哲学者のカッシーラーは、ユダヤ人であったこともあって、ヒトラーが政権を取った1933年、ドイツを離れ、スウェーデンを経て、アメリカに逃れることになった。
 この両者が、1929年春、カントないし新カント派の哲学について公衆の前で討論したことがあった。スイスの保養地として知られるダヴォスにおいてである。

 本書は、両者の討論の採録の邦訳を提供している外に、カーシーラー夫人のヴァイマル・ドイツ末期についての回想を抄録している。啓蒙主義的理性に挑むハイデガーが、1929年の時点で、どのようにカッシーラー夫人の目に映ったのかが活写されており、きわめて興味深い。

 正直言って、カッシーラーとハイデガーの討論の真意は理解しにくい。私はかつて、ハイデガーの『カントと形而上学の問題』を熱心に読み、その哲学的先鋭さに印象を深くしたことがある。その著書で展開されている内容について、新カント派学派の最高峰カッシーラーと激しく討論し合っているのだと考えればよい。別言すれば、19世紀的な啓蒙主義的理性を理性的に乗り越えようとするカッシーラーと、それとは別に理性そのものに真っ向から挑むハイデガーが特異な抽象的言葉で議論し合っているのである。
 カッシーラー夫人によるこの当時のハイデガーについての記述を読むと、討論の背景が俄然明確になってくる。彼女の文面で最も生彩に富んでいるのは、ハイデガーがダヴォスでの晩餐会に遅れてやってくる場面である。彼女にとって、ハイデガーは「小柄な、全く風采の上がらぬ男」(本書、91頁)と映ったのであった。

 私は、この状景に近年の科学批判のみならず、理性一般の批判の光景を重ねて見てしまった。なるほど近代科学は第二次産業革命以降、科学的テクノロジーの形で社会で重用されるようになり、戦争や産業において、少なからず犯罪的役割を果たした。そのことはもはや誰も否定できない。しかし、問題は理性批判をいかなる姿勢で行うかである。きわめて華麗な言辞による理性の非理性的な非難が世間でもて囃されてはいないであろうか。私はカッシーラーとカッシーラー夫人のハイデガー評に、同様の危機感を見いだすことができた。そういえば、カッシーラーの名著『啓蒙主義の哲学』はヒトラーが政権を取る前年の1932年に出版されている。それは、啓蒙主義的理性の最良の伝統を擁護する観点から書かれたのであろう。こういったことを考えさせる刺激的な小冊子である。 (bk1ブックナビゲーター:佐々木力/東京大学教授 2001.05.24)

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