紙の本
デモクラシーの〈参考書〉
2001/07/21 10:29
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:小田中直樹 - この投稿者のレビュー一覧を見る
数年前にどこかで住民投票があって、政府が推進してた公共事業に〈ノー〉って結果が出たとき、〈民主主義の誤作動〉っていわれたことがあった。もちろん住民からは、これこそ本当の民主主義(デモクラシー)だって反論が出た。これって、「民衆による自己統治」(一五ページ)であるデモクラシーは大切だってことは誰でも認めるけど、具体的な話になると、色々な意見があるってことだ。この本で、著者の杉田さんは、そんな現実を見据えながら、「デモクラシーとは何なのでしょうか」(九ページ)って問題を考えるためのヒントとして、デモクラシーの具体的な中身をめぐる色々な意見の対立を紹介してる。
それじゃどんな対立があるんだろうか。〈デモクラシーは多数派を作り出すための手続きで、多数決を中心とした制度〉説と、〈単なる手続きじゃなくて発見のプロセスで、少数派を尊重するための運動〉説の対立。〈独裁や混乱を避けるために安定が必要〉説と、〈人々の様々な利害や想像力を尊重するために変化が必要〉説の対立。〈政治を安定させるためにはデモクラシーに参加する人の範囲を定める方がいいから、国民主権が大切〉説と、〈人々を公共性に目覚めさせるため、参加したい人が参加するっていう社会契約説が大切〉説の対立。〈民意が暴走するのを避けるため、代表者が裁量でそれを取りまとめる間接デモクラシーがいい〉説と、〈「おまかせ」じゃなくて自己決定が大切なんだから、代表者はただのメッセンジャーになる直接デモクラシーがいい〉説の対立。〈大切なのは公益だから、公開の議会で議論して意見の収拾を図る政治家が主役〉説と、〈私益も大切だから、白紙から討論する場があれば、普通の人々が主役〉説の対立。〈「内側から開く」ことが大切だから、参加する人々の共通性にもとづいて多数派を形成することが大切〉説と、〈「悩む、対立する、交渉する」ってプロセスが大切だから、参加する人々の差異を重視する重層的なデモクラシーが大切〉説の対立。うーん、目がくらんできた。
杉田さんによると、この本の目的は「デモクラシーをめぐるいくつかの対立軸」(一八九ページ)をはっきりさせることにある。たしかに、この本を読んで、僕はこんなにたくさんの対立があったのかって驚いた。でも、この本のメッセージはそれだけじゃないはずだ。僕が読み取ったのは、とりあえず二つ。第一、杉田さんは、この本のところどころで、色々な対立を乗り越えるヒントをそれとなく見せてくれる。たとえば、デモクラシーが手続きだとしても、「物事を考える過程」(二〇ページ)が大切だ。政治が〈安定〉するのが大切だっていうけど、〈安定〉の意味って難しい。直接デモクラシーと間接デモクラシーの〈いいとこ取り〉する方法として二回投票制を考えてみよう。これって面白いし、対立を解きほぐす糸口になるかもしれない。第二、この本が〈対話〉って形をとってるのは、これまたそれとなく〈議論が大切〉っていいたいからだ。これって〈あの〉プラトン以来のやり方らしいけど、この本自体がデモクラシーの実験なのだ。
でも、問題や疑問もある。とりあえず二つ。第一、〈デモクラシーって、何か別の目的を達成するための手段なのか、それとも、「民衆による自己統治」それ自体が大切な目的なのか〉っていう大切な対立について、触れてはいるけど、真正面から論じてない。僕はこれが一番根本的な問題だと思うんだけど、どうなんだろうか。第二、色々な「対立軸」があるのはわかったけど、〈この対立軸のこの立場は、あの対立軸のあの立場につながる〉といった対立軸同士の関係があるのかないのか、あるとすればどんなものなのか、わからない。
というわけで、この本は、「身近な人々と議論を始め」(一九〇ページ)るための、わりと役に立つ参考書って感じ。[小田中直樹]
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政治学畑の人間じゃないからよく知らないけど(そんなんばっか)、こういうのは学部生のゼミの教科書とかになりそう。いわゆる「戦後民主主義的言説」を体現しているかのようなBさんと、それを相対化しようとする「ポストモダン」系?なAさんの対話は、いろいろ刺激的でおもしろい。「AがいいかBがいいか」じゃなくて、両者の間を行き来するところからスタートする、ってことですよね?(200508)
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ゼミの課題図書
2人の対話形式でデモクラシー論を展開している
デモクラシーは不断の議論に拠るってこと?
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ひとくちに「デモクラシー」と言っても、その運営の仕方は様々であり、はっきりと決まった(=理想的な)型があるわけではない。直接民主制がいいのか、間接民主制がいいのか。選択肢は2つでいいのか、それとももっと必要なのか。決定は常に多数決でいいのか。そういった論点を対話形式で考えていこうとする試みである。この作品の著者は「政治思想」「政治理論」がご専門というだけあって、内容は非常に「ピュア」。悪く言えば、政治学者の割には地政学的観点や文化的観点に乏しく、机上の空論のように見える部分も少なくない。
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デモクラシーの論じ方ソクラテス的チュートリアル。平易に書こうとしてかえって難しくなってしまったのではないでしょーか。行間から筆者の意図を読める読解力の高い人向け。
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目次
第1章 制度とデモクラシー
第2章 安定性とデモクラシー
第3章 国民とデモクラシー
第4章 公共性とデモクラシー
第5章 代表とデモクラシー
第6章 討論とデモクラシー
第7章 憲法とデモクラシー
第8章 重層性とデモクラシー
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この本のほとんどは、架空の2人による民主主義に関する議論である。
デモクラシーの考え方の様々な対立軸について知ることができた。
しかし、2人の対立という形をとったことで逆に読者の視野を限定することにはなっていないか。
自分の意見をしっかりもてるよう、より様々な議論を経験していきたい。
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QC vol.2|のための参考文献 - rad
http://radlab.info/2009/12/qc-vol2.html
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[ 内容 ]
民主主義、民主的な政治とは何か。
現代社会の基本的な価値理念であるデモクラシーが重要であることは間違いない。
しかし、それを共有している社会において、いろいろな意見の対立や争点が生まれてくるのはなぜなのか。
物事を「民主的」に決めるとは、どういうことか。
古くて新しいこの難問について、対話形式を用いて考える試み。
[ 目次 ]
第1章 制度とデモクラシー
第2章 安定性とデモクラシー
第3章 国民とデモクラシー
第4章 公共性とデモクラシー
第5章 代表とデモクラシー
第6章 討論とデモクラシー
第7章 憲法とデモクラシー
第8章 重層性とデモクラシー
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読みづらい。
対話形式は、一見わかりやすいが読みづらい。
対話の中で論点が右往左往するからである。
そこで、対話形式の本については、簡単な表を作ることをオススメする。
ここではタグの使用ができないので、メモを書く。
Bさん
デモクラシーの本質=決定のための手段
Aさん
デモクラシーの本質=新しい価値観の発見(=目的)
このデモクラシーに対する根本的な対立が、様々な論点についての結論の相違となる。
今後、この本を読もうと思う方はこれを念頭において読んでみて欲しい。
対話形式にもかかわらず、頭の中がすっきりとすることだろう。
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民主主義、民主的な政治とは何か。現代社会の基本的な価値理念であるデモクラシーが重要であることは間違いない。しかし、それを共有している社会において、いろいろな意見の対立や争点が生まれてくるのはなぜなのか。物事を「民主的」に決めるとは、どういうことか。古くて新しいこの難問について、対話形式を用いて考える試み。(「BOOK」データベースより)
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〈2者が討論していくディベート形式〉
多数決で行くべきかどうかを、多数決で決めても良いものかどうか。p10
決め方をどう決めるか。p16
多数派が横暴に振る舞うようになると。19世紀にトクヴィルやJ•S•ミルが憂慮したような「多数者の専制」という事態になりかねない。つまり、ある一団の人々が常に自分たちの意見を押し通し、少数派の権利をないがしろにする状態に。p26
【欠乏と過剰】
僕が危惧しているのは、民意が無視される状態、つまり民意の政治への反映がゼロの状態だ。一方、君が憂慮しているのは、民意が暴走している状態、つまり民意が無限大の状態だからね。p34
デモクラシーというものは、本来、古代ギリシャのポリスのような数万人か、せいぜい数十万人くらいの規模の政治社会を前提にしていたものだ。つまり、全員参加の会合を行えるくらいの単位を前提としていた。人々が集まって、政治的な問題について直接に議論し決定することができるというのがデモクラシーの原型だ。ところが現在国民国家を形成しているとされる国民集団は、数百万人規模なら例外的に小さいほうで、数千万人から億単位の規模だ。こんな規模で、デモクラシーができるのか、というのは当然疑問視とすることができるだろう。p94
→苦肉の策としての代表という制度。民意を本当に代弁できているにか?
民意はもともとあるものではなく、選択肢を示すことによって形成される。二大政党制のような、単純化された選択構造を求めることとも結びつきやすい。PとQのような2つの選択肢しか示さなければ、人々は、自分がPに近いかQに近いかを考え、どちらかにくっつく民意が形成される。p105
誰か天才的な人物の直観が政治についての最終的な真理を発見できるという、エリート主義的な考え方とは異なり、デモクラシーは人々の多様な意見に期待するもの。p190
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多数派の側が圧倒的な優位にある場合には、彼らには妥協する動機付けは何もない。一方、少数派は採決されれば勝ち目はない。だからおべっかを使わなければならない。デモクラシーとは、つねに多数決を優先しなければならないものなのだろうか。
デモクラシーとは、さまざまな意見がぶつかり合う中で、新しいものが生まれる過程、発見の過程である。
社会的実践がまずあって、それが次第にルールすなわち法になる。
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デモクラシー(民主主義)って、わかるようでいて分からない。学校では金科玉条のごとくおそわってきたけど、最近の政治をみていると、まさに「多数者の専制」なのではあるまいか。ずっと対話形式で綴られているのは、政治学だけにプラトンを意識したのかしらん⁇
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民主主義についてAとBの対話形式で考えていく本。普段何気なく使っている民主主義という言葉の意味について考えさせられた。しかし、筆者の主張が曖昧だったのが残念だった。