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偶景 新装 みんなのレビュー
- ロラン・バルト (著), 沢崎 浩平 (訳), 萩原 芳子 (訳)
- 税込価格:3,080円(28pt)
- 出版社:みすず書房
- 発行年月:2001.6
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紙の本
エクリチュールの絶えざる冒険を生きたバルト晩年の佳作が復刊
2001/09/07 15:15
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投稿者:井上真希 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1989年刊の幻の佳作が12年ぶりに新装になって復刊された。原著がフランスで刊行されたのは、1980年にバルトが自動車事故で亡くなった2年後で、哲学者フランソワ・ヴァールが、バルトの《小説的な(ロマネスク)》4作品——「南西部の光」(1977年、「ユマニテ」)、「偶景」(1969年執筆)、「パラス座にて、今夜……」(1978年、「ヴォーグ・オム」)、「パリの夜」(1979年執筆)——を1冊に編んだものである。断章形式の「偶景」にしろ、日記形式の「パリの夜」にしろ、『彼自身によるロラン・バルト』(みすず書房刊)と同様、自らの伝記的事実を綴っていながらも、あくまでフィクションとして書かれたものだ。とはいえ、どちらも同性愛者の横顔が描かれたこれらの未発表作品を、当時の読者はどんなふうに迎えたのだろう。フィリップ・ソレルスがバルトを髣髴とさせる〈老いた同性愛者ヴェルト〉の登場する小説『女たち』を上梓する前年のことである。
大変遅まきながら、今回の復刊で日本語で読むことのできた本書は、バルトが晩年まで、エクリチュールの絶えざる冒険を生きたことを示していた。
花輪光氏が「小説家バルト?——解題に代えて」で述べているように、バルトは「あらゆるものに意味を見出してしまう記号人間(ホモ・シグニフィカンス)」で、「どのように些細なことでも、『それが何を意味しているのか』を問わずにはいられない」「『意味の病い』にかかっ」た人間だったのだ。そこで、「意味の免除」を可能にすべく、バルトが試みているのは、偶景(アンシダン)という、木の葉が舞い落ちてくるように偶発的な些細な出来事の断片的な記述であり、いわゆる告白ではない、「別の言説」としての日記だった。
幼少期を過ごし、亡き母が暮らしていた故郷の町を愛した男。欲望を噴出させたモロッコでの漂流の日々を想い、《夢見る》ことのできる場所に魅せられた男。そして、男友達との距離を測り、特定の青年との新たな恋が難しくなった現実を前にした初老の男。ここで出会うのは、小説のなかの哀感あふれる男たちである。 (bk1ブックナビゲーター:井上真希/翻訳・評論 2001.09.08)
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