紙の本
生の醜さと死の美しさ
2004/10/02 06:17
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:poppo - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹」、この作品は70年代のミシガンの田舎町を舞台に、すでに大人になった少年が語る失われた美しい少女たちへの思い、という形で綴られていく。五人姉妹の自殺の原因は謎のままで終わる。
若く多感な時期に死への強い衝動や美意識を感じるということを、私は実感していない。美に憧れる自意識の強い女性であればそれはなおのことでもあろうが、私は女性でもない。
この作品には70年代アメリカに内在していた不安感、それ以前の夢の崩壊が描かれていると、主立つ評は語るけれど、日本人である私にはそのようなシンパシィを主体的に感じる術も無い。
むしろ切実に訴えてくるのは、自分の身を守るための環境が緩やかに自分を窒息させていくことへの矛盾感と、その矛盾に際して「勇敢な」死を選び自らの命を絶っていく姉妹たちの美しさ…に、憧れと崇拝のような感情すら抱く、しかし年頃の男の子として、終始彼女たちをある種「特殊な存在」としか見られないこの作品の語り手の「元」少年の気持ちだ。
匂いたつような肉感的な描写は、無垢でけがれのない少女が肉体的に成熟しつつあるゆっくりとしたメタモルフォーゼを思わせる。自我の成熟と共に個の世界から社会性を持つ動物へと進化する運命を自覚した少女たちは、メタモルフォーゼの途中で目を覚まし、自分が醜いヘビトンボになろうとしているのに気がつく。何千何万もの集団をつくり、意思を持たぬような行動に加わり、無価値的な集団的なあっけない死を迎え、街を汚す生ゴミのような屍と成り果てるヘビトンボ。羽毛のような夢とざらざらした現実の狭間。
彼女たちは、目を覚ましたことによる美しさと、目を覚ましたことによる失望を同時に手に入れる。
ヘビトンボのような生に従い街を汚すか、その存在を自ら消し去るか。その時、少女たちの胸には生に勝る死の価値が生まれる。
そうして姉妹たちが闇の世界へ導かれていくことを阻みつつ、結果としてなにもできなかった少年と両親。そして、その死自体は決して美しくはない「いびつな」ものだった。
自殺を肯定するわけでも死を美化するつもりもないが、死に魅入られ崩壊していく姉妹と家族、その過程の描写は、読み進むほど五人の姉妹の美しさを際立たせ、輝かせる。
それはある意味、朽ち落ちて死んでいく大量のヘビトンボの美しさをも裏付けるものではないだろうか。
紙の本
思春期の乙女ゴコロ。
2001/08/19 07:35
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投稿者:きなこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは映画「ヴァージン・スーサイズ」の原作です。
思春期の乙女たちが次々と自殺をしていきます。なぜなのか、その謎は本人たちにしかわからないけど、混沌とした世界が描かれているように感じます。
やはり海外本の翻訳物は読みづらい。どうも、説明が多くなりがちのよう。しかも、この本は特に読みにくいみたい。突然、場面や状況が変わってたり、まわりくどいとこがあるみたい。活字が好きな人なら大丈夫だと思うけど、どちらかというと映画を見た方がいいです。
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映画を見てから買った作品です。かなり昔に買って読んだので、あんまり覚えてないですが、映画の衝撃が忘れられていない気がする。
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末娘の自殺によって死に魅入られたかのように崩壊する家族の物語。エロスとタナトスが一緒くたになった暗く不安な小説。
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映画が面白そうだったので文章から入ってみた作品。
でも文章がわかりにくい部分が多々あって難しかった。
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the virgin suicidesの元ネタです
男の人にこんなに少女の気持ちが分かるんだ、くらい細かい。
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The Virgin Suicides
甘美で残酷な響き。
痛い程の少女性を70年代アメリカの文化に併せて書き出した一冊。
終始記録的な客観視点で書かれ、ノルまでに少し時間がかかったもの、一気に読破。
映画の方も見てみようと思った。
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なんでおっさんがこんなに女の子の気持ちがわかったのか教えて欲しい
すごく悲しい
すごくすごく悲しい
「さぁ、入れて。もうちょっとよ。それで気持ちがぴったり合わさるから」
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映画にもなった
「ヴァージンスーサイス」。
ストーリーについては、わりと
皆さんがレビューしているので割愛。
それよりも僕にとって
「映画の聴こえる音楽」。
と、カッコよく言ってみたものの
講演で話していた柴田元幸さんの
受け売りなんだけど。
リズボン家の少女達と
男の子達がお互いに
電話で自分の
「お気に入りの曲」
を流す場面がある。
ギルバートオサリヴァン「アローンアゲイン」
に始まり
キャロルキング「去りゆく恋人」まで
交互に受話器にレコードの音を近づけて
相手に贈る。
僕の一番好きな場面。
こういう事なんだよなぁ、と思う。
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(2007.08.07読了)(2007.07.29購入)
(「BOOK」データベースより)amazon
リズボン家の姉妹が自殺した。何に取り憑かれてか、ヘビトンボの季節に次々と命を散らしていったのだった。美しく、個性的で、秘密めいた彼女たちに、あの頃、ぼくらはみな心を奪われ、姉妹のことなら何でも知ろうとした。だがある事件で厳格な両親の怒りを買った姉妹は、自由を奪われてしまった。ぼくらは姉妹を救い出そうとしたが、その想いが彼女たちに伝わることは永遠になかった…甘美で残酷な、異色の青春小説。
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70年代前半、米国ミシガン州の郊外の住宅街に、五人姉妹が住んでいました。年齢は13才から17歳。厳格なカソリックの家庭に育った彼女らは、美しく謎めいていて、少年たちの憧れの的でした。
しかし、末娘のセシリアが自殺した初夏のある日を皮切りに、一家は崩壊の一途をたどり始めます。若く可憐な姉妹たちが、次々自ら命を絶っていったのです。
二十数年後、当時彼女らの近所に住み、同じ学校に通っていた少年の回想という形で物語は進んでいきます。
この小説は、フランシス・フォード・コッポラの愛娘であるソフィア・コッポラの初監督作品〝The Virgin Suicides〟として、1999年に映画化されたそうです。
ティーンエイジャーの悲しく甘美な揺らぎを綴った、すばらしい青春小説でした。
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ソフィア・コッポラの映画「バージンスーサイズ」原作。
末娘の自殺をきっかけにして、伝染病のように「死」は5人姉妹の間に広がっていく。
苦しい物語。読むのが辛かった。
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印象的な題名を覚えていていつか読もうと思っていた本。映画化されているというのは本のカバー写真を見て知った。
70年代のアメリカの田舎町に住んでいたリズボン家の五人の姉妹。厳格なカトリック教徒の両親の下で育った彼女達は「ぼくら」の憧れの的だった。
末娘のセシリアの自殺からリズボン家は徐々に崩壊し始め、姉妹の全員が自殺という形でこの世を去ってしまう。
どうして彼女達は自殺したのかを探ろうと、大人になった「ぼくら」が回想する形で綴られた物語。少女達のことを語ってはいるが、実質のところは少年達の青春の物語だと思った。五人姉妹の中で、セシリアとラックス以外の三人の印象が薄いのが残念。
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手を伸ばしても届かない五人姉妹と閉ざされたリスボン家の断片を集めては想いを馳せる男の子達。姉妹が選んだ自己愛と孤独と憂鬱と拒絶。そのにおいは私を包み、いつまでも捕らえて離さない。
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別の本の検索をしたら少女つながりで出てきたんです。映画のタイトルだけは知ってたんだけど。
姉妹の自殺はあくまでマクガフィンで、ぼくらの街のお話だった気が。(…と思いながら読んでたら解説にもやっぱりそうやって書いてました)
でも映画は機会があれば見てみたくなりました。