紙の本
両性具有の美
2008/04/30 01:29
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アルカンジョ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品は、文句なし、問答無用、両手放しで、大絶賛の言葉を掲げたい。
実は、この書評を書き直している時点で、この本を読み終わって数年がたっているのだが、いまだにあの震える読後感を忘れられないでいる。
津原泰水という名前を、今の文学界に浸透たらしめるに至った、衝撃的な一冊である。
物語は、現代の東京から始まる。
超人気バンドの退廃的な美貌のボーカル、そのボーカルの双子の妹を中心に個性的な登場人物たちが織り成す、幻想的なゴシックホラー小説である。
この小説のキーワードは、両性具有。
その言葉の意味するところのすべてが、この小説には含まれている。
文章は癖がなく読みやすいのに、読者への恐怖感をまざまざと煽り立てるその手腕は、素晴らしいものがある。
また、本作はホラー一辺倒ではなく美的なものも極まりすぎると恐怖に変わるということを、教えてくれる。
ただ、ホラーなのではなくミステリの要素も兼ね備え、津原のこれ以後の作風の予見をもさせてくれる一冊だ。
キャラクター同士の物語がリンクしあい、一番最後に物語の結末を知る時に、読者は混沌と賞賛と恐怖の渦にさらされるであろう。
活字を読むということ、その酩酊感を何よりも楽しみたい一冊である。
紙の本
死者の物語
2002/05/21 22:51
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投稿者:狩野涼子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
CRISISの美しいヴォーカリスト、チェシャと雛子の関係。
そして、両性具有者であったチェシャ。雛子は「雛」、そして「ヒナ」である。難解なパズルを読み解くようなte
複雑に絡まりあった死者と生者との関係。多数の神話が出てくる。その神話の女神たちまで絡まりあい、死者と生者を結びつけ絡み付けていく。全ての意図を解けたとは思っていない。
だが、読み進めて行く中で、糸は確実に解けていくのだ。
死者の見える少女は「少女」らしくない。というか、「女」の性別を感じないのだ。彼女は両性具有ではない。「どちらでもない」のだ。どちらの性別にも傾いていない、中性のなのだ。いまだ、咲かない、花開く前の固く閉じた蕾のような少女。回帰したがる彼の兄。
近親相姦と自己完結。
絡まった意図は解くことが困難だった。
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混沌。混乱。ナイトメア。多層に分かれた現実世界。東京を徘徊する生きる屍?いや…。どちらにせよ、私はきっと最後まで「見えない」人間であることは間違いない。この著者にはどんな世界が視えているのだろうと、ふと気になった。
たとえて言うなら、深夜の連続アニメのような印象を受けた。陰鬱で、刺激的な視覚の連続。しかし、謎が謎のまま放り出されたりしているので、広げた風呂敷は畳んでほしい私としてはすこし消化不良だった。
古事記のイザナミの話とマライ・ポリネシア神話の類似性についてはとても興味深かった。あと両性具有とか。そういえばこの著者は男性らしい。はじめは男性と思っていたのだけど「少年トレチア」のカバー裏の写真を見て「女性?」と思い違和感を覚え、しかしこの本の解説で男性と判明してスッキリした。
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樓主には読みやすい文体だった。
これを読む気(買う気)にさせたのは、登場人物紹介欄。
尾瀬郁央 幽霊。
主要な犬
ダリア イングリッシュブルドック
ケルベロス ボルゾイ
クド ラブラドルレトリヴァー
ってとこ。
いや、普通の人間紹介もあるんだれけどね。
最初が尾瀬君なんだね。で、終わりが犬の紹介。
両性具有という噂のヴォーカリストやら、けっこうそそるネタ満載。
主役は一応美少女二人。
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情報ナシになんとなく購入した1冊。津原氏は初読み、ずっと待機してる1冊はあるものの、2冊シリーズの後半がないため長期間の待機状態。
ホラー系らしく最近ホラーづいてるためいいかな~と思いつつ読み始めました。序盤からなかなかスピード感ある展開、得たいの知れない何か?に対する恐怖、グロ描写もまずまず…と思ってるうちに、あれ?なに?もう終わり?
この作品を理解するに自分はどうやら役不足だったようです、もう少しはっきりした終わり方が欲しかった。
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ただのホラーと思って読むと後悔する、そんなお話。
この人はかつて少女小説でSFと少女小説の融合をやってのけた人だけど、ホラー作家としての処女作で今度は東西のホラーと伝承を見事に融合させた。
なんとなく、劇場版エヴァンゲリオンと似ている気がする。旧作のほう。
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「五色の船」で知った津原泰水さんですが、そうそう、これこれこんな感じ!
という、飽きの来ないキレの良さが有りながら丁寧に描写していく職人風。
少女小説家からの再デビュー作として、著者の書きたい物を詰め込み過ぎなんじゃと思う(笑)ホラーらしい幕切れも素晴らしかった。
ハードカバーで読んだのですが、
表紙2、3のコート紙にも意味ありげなイラストが入っていたり、
装丁デザインが凝った本だなと思ってみたら京極夏彦でした。
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1/30 読了。
一九九七年、東京がネクロポリスに変わる。両性具有が生と死のサイクルを自己再生によって飛び越えたとき、二重写しになった世界は生きながら死に絶える。二十世紀末の東京、「消費の快楽と恐怖。欲望の内燃する」東京をリアルタイム(一九九七年)で描いた幻視小説。
これ発表当時「チェシャのモデルは誰か」ってV系界隈で評判になったりしたのかなー。すごく当時の皮膚感覚を思い出した。最後の渋谷センター街で聞こえる雑音とか。
今まで津原さんの小説を読んでも思ったことなかったんだけど、今回初めて古川日出男に近い文体だと思った。文体というか群像劇の書き方?キャラクターの切り替え方とか、スイッチングの仕方が近い。チェシャはどこか「沈黙」の燥を連想させるし、東京幻視小説だから「サウンドトラック」のことも思い出す。でも二十一世紀に近々未来小説として書かれた「サウンドトラック」の陽気な終末に比べて、「妖都」のそれは地下世界からの復讐のような闇の色を帯びている。
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語彙の選び方なんかがモロ好みで、やったら雰囲気あるんですが。
なんかチグハグ~。
ストーリーの収まりがつかなくても、それはそれでいいお話もあるけど、この話の場合、プロットの中心である「チェシャは実はxxで雛子をxxした」は、もっとSFな背景がないと辛いのでは??
さらに情けないのは、これだけ世界作っていながら、「ロレックスの腕時計」みたいなのがぽろっと出てくる。あーあ。
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20190928
死者が溢れ、見えるものも見えないものもどんどん死んでゆき、まさに妖都と化した東京。
巻末の神話解説を読むと多少分かりやすくなるが、それでもいまいちよくわからないまま終わる。幻想ホラー。雰囲気は好きなのだけども、風呂敷を畳まないにもほどかあるので、思わせ振りな登場人物は思わせ振りなまま終わり、彼らは一体なんだったのか?描写必要だったのか?と疑問に思う。