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夏の花・心願の国 改版 みんなのレビュー

  • 原 民喜 (著)
  • 税込価格:5394pt
  • 出版社:新潮社
  • 発行年月:2000.4
  • 発送可能日:購入できません

文庫

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みんなのレビュー24件

みんなの評価4.3

評価内訳

  • 星 5 (7件)
  • 星 4 (8件)
  • 星 3 (1件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)

高い評価の役に立ったレビュー

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2017/05/11 21:20

残酷な光をあびて生きるということ。

投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る

意識混濁。
心象と現実の混沌とした世界。
精緻な筆致。

通読して得たキーワードだ。
作者は詩人でもあり、直接的に感覚が伝わってくる段落もある。
迷子になりそうながら、不安定な心理状態に酔う。

「夏の花」は素晴らしい。傑作だ。
ヒロシマの本はこれまで何冊か読んでいる。
中沢啓治さんの「はだしのゲン」は小学校の学級文庫にあった。
井伏鱒二さんの「黒い雨」は高校時代に手に取り、自分の
第三次読書ブームではこうの史代さんの「夕凪の街 桜の国」、
井上ひさしさんの「父と暮らせば」に心を奪われた。

これまでに出会った、原爆を題材にした作品たち。

「夏の花」は、原爆を扱った作品の中で比べると、
もっとも純粋に、感情が凍りついたまま描かれているように思う。
心がある限界を越えると、恐怖は凌駕され、非現実的な
現実が映写機でカラカラと流れていくように
目の前を通り過ぎるようになる。
心の防波堤があふれてしまうのかもしれない。
そんな感覚を味わった。

ヒロシマで起こったこと。原爆が落ちたということ。

圧倒的な事実を脚色なく写し取る手法で描かれている。
恐怖はなく、心が煽られることもなく、只々圧倒される。

これは広島原爆記念館で味わった感触だ。
不思議なことに、被爆体験直後に書かれた「夏の花」よりも、
四年後に書かれた「火の唇」の方が、混沌とした膿のような
感情が読みとれる。
時間をかけて、心の奥底に、徐々に何かが形成されて
いったのかもしれない。

「鎮魂歌」は、詩である。形式は小説。つまり散文詩とでも
言えばいいのだろうか。気持ちの整理をつけて、思いのたけを
歌っている。
この作品には、意識の混濁は見られず、心の世界への
純粋な旅となっている。

「夏の花」で事実を受け止め、「火の唇」で思索し、
「鎮魂歌」で心に定着する。
一つ一つは独立しているが、青空文庫で単品読みすることは
お薦めしない。作品は、この文庫の通りに読むと、こころの動きが
はっきりと分かり、価値ある時間を過ごすことができる。
文庫を編纂した大江健三郎さんに、最大限の感謝の拍手を
送りたい。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

低い評価の役に立ったレビュー

9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2008/08/19 08:10

世界はこんなに美しいのに、どうして僕らの胸は苦しいのだろう

投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る

原民喜は、作家としてはかつかつの生活の中、昭和19年に寝付いていた妻を喪い、郷里の広島へ帰って被爆する。その後再度上京して、ふたたび作家として自身の経験を作品として発表、昭和26年に自殺する。本書の収録作は、戦後に書かれた、妻の死の前後を描く5編、被爆前後を題材とする3編、東京に戻ってからの生活と心象の5編となる。
被爆前後の3作品は、「壊滅の序曲」は広島の兄の元に身を寄せてから、空襲、疎開などの当時の状況の中、「原子爆弾がこの街を訪れるまでには、まだ四十時間あまりあった。」と締められるまでの時間の流れ。「夏の花」は、「厠にいたため」比較的に軽い被害で済んだというその瞬間から、疎開先ヘ移るまでの数日間の経験を描いたもので、当時のGHQの検閲を逃れるために原爆のことと分からぬ題にしたという。「廃墟から」ではその後の苦しみ、あるいは亡くなっていく被災者たちの様子が書かれる。
この前後も含めたいずれの作品においても、周囲にある死の風景と、自身の生と死への予感を綴ったもので、それらは作者が何も守るべきものもない徒手空拳の個人としてあるため、いっそう透明なものとなっている。透明、純粋がすなわち人間の本質を表すとも決められないだろうが、身の回りのものを剥ぎ取られて空虚になっていくことへの開き直りには迫力がある。さらに彼自身は、今にも消えてしまいそうにか細くなっていきながら、遠慮のない親戚からは「原子爆弾を食う男だな」とまで言われるしぶとさの中にある。それら死を巡る情景でありながら、しかし作者の目に映る世界自体は恐ろしく美しい。街並みや、街路樹のざわめき、そこに行き交う季節、それらと同じに目に映り、脳裏にこだまする死者、被爆者たちの姿も、また崇高なものだ。生きようとする強い意志であれ、人にすがるより術のない様子も、半ばの覚悟が混じっていてさえ、世界のあらゆる光景の中ですべての一人一人がかけがえのない存在として見られる。親しかった者、行きずりの者、それぞれの死者達の命は、生きている誰もの命に等しく、作者には彼らの存在の重さと耀きがのしかかっていく。
その中で作者が見究めようとしているのは、この美しい景色と死が共存する世界、静かにであれ無惨にであれ人に死の訪れる世界、戦争のある世界、原爆のある世界、そこで生々流転を繰り返すものたちではなかったか。「あ、迅い、迅い、星」と呟いたきり昏睡した伴侶。記憶の奔流の中で「僕は堪えよ」と書く男。これは死者達と世界の間で押しつぶされた者の物語だったろうか。それよりは、引き裂かれた世界を一体化させ、自らもそれに加わった戦列なのだと思いたい。

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24 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

残酷な光をあびて生きるということ。

2017/05/11 21:20

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る

意識混濁。
心象と現実の混沌とした世界。
精緻な筆致。

通読して得たキーワードだ。
作者は詩人でもあり、直接的に感覚が伝わってくる段落もある。
迷子になりそうながら、不安定な心理状態に酔う。

「夏の花」は素晴らしい。傑作だ。
ヒロシマの本はこれまで何冊か読んでいる。
中沢啓治さんの「はだしのゲン」は小学校の学級文庫にあった。
井伏鱒二さんの「黒い雨」は高校時代に手に取り、自分の
第三次読書ブームではこうの史代さんの「夕凪の街 桜の国」、
井上ひさしさんの「父と暮らせば」に心を奪われた。

これまでに出会った、原爆を題材にした作品たち。

「夏の花」は、原爆を扱った作品の中で比べると、
もっとも純粋に、感情が凍りついたまま描かれているように思う。
心がある限界を越えると、恐怖は凌駕され、非現実的な
現実が映写機でカラカラと流れていくように
目の前を通り過ぎるようになる。
心の防波堤があふれてしまうのかもしれない。
そんな感覚を味わった。

ヒロシマで起こったこと。原爆が落ちたということ。

圧倒的な事実を脚色なく写し取る手法で描かれている。
恐怖はなく、心が煽られることもなく、只々圧倒される。

これは広島原爆記念館で味わった感触だ。
不思議なことに、被爆体験直後に書かれた「夏の花」よりも、
四年後に書かれた「火の唇」の方が、混沌とした膿のような
感情が読みとれる。
時間をかけて、心の奥底に、徐々に何かが形成されて
いったのかもしれない。

「鎮魂歌」は、詩である。形式は小説。つまり散文詩とでも
言えばいいのだろうか。気持ちの整理をつけて、思いのたけを
歌っている。
この作品には、意識の混濁は見られず、心の世界への
純粋な旅となっている。

「夏の花」で事実を受け止め、「火の唇」で思索し、
「鎮魂歌」で心に定着する。
一つ一つは独立しているが、青空文庫で単品読みすることは
お薦めしない。作品は、この文庫の通りに読むと、こころの動きが
はっきりと分かり、価値ある時間を過ごすことができる。
文庫を編纂した大江健三郎さんに、最大限の感謝の拍手を
送りたい。

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紙の本

原爆そして原民喜という人間

2001/09/04 21:48

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:げっぷ5号 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ここに収められている作品は原爆小説である。原民喜氏は被爆したことで有名である。そして、彼はその後自殺している。このことから彼の文学をどうしても原爆ということと結び付けないわけにはいかない。なぜなら、彼にとって原爆とはそして被爆体験とは切っても切り離せない現実の文学体験であるからなのである。次世代に原爆という体験を伝えるということにおいても原民喜文学の意味は大きい。

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紙の本

なぜか生きる力を感じた

2015/06/05 08:48

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:アトレーユ - この投稿者のレビュー一覧を見る

以前からなんとなく気になっていた一冊。湿度の低い文章ですごく読みやすかった。原爆を体験した作者の当時を綴ったもの。生々しいが、グロテスクではない。悲惨な出来事なのだが、読んでいると意外にも、どんな状況下でもなんとか生きようとする力を感じた。

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紙の本

世界はこんなに美しいのに、どうして僕らの胸は苦しいのだろう

2008/08/19 08:10

9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る

原民喜は、作家としてはかつかつの生活の中、昭和19年に寝付いていた妻を喪い、郷里の広島へ帰って被爆する。その後再度上京して、ふたたび作家として自身の経験を作品として発表、昭和26年に自殺する。本書の収録作は、戦後に書かれた、妻の死の前後を描く5編、被爆前後を題材とする3編、東京に戻ってからの生活と心象の5編となる。
被爆前後の3作品は、「壊滅の序曲」は広島の兄の元に身を寄せてから、空襲、疎開などの当時の状況の中、「原子爆弾がこの街を訪れるまでには、まだ四十時間あまりあった。」と締められるまでの時間の流れ。「夏の花」は、「厠にいたため」比較的に軽い被害で済んだというその瞬間から、疎開先ヘ移るまでの数日間の経験を描いたもので、当時のGHQの検閲を逃れるために原爆のことと分からぬ題にしたという。「廃墟から」ではその後の苦しみ、あるいは亡くなっていく被災者たちの様子が書かれる。
この前後も含めたいずれの作品においても、周囲にある死の風景と、自身の生と死への予感を綴ったもので、それらは作者が何も守るべきものもない徒手空拳の個人としてあるため、いっそう透明なものとなっている。透明、純粋がすなわち人間の本質を表すとも決められないだろうが、身の回りのものを剥ぎ取られて空虚になっていくことへの開き直りには迫力がある。さらに彼自身は、今にも消えてしまいそうにか細くなっていきながら、遠慮のない親戚からは「原子爆弾を食う男だな」とまで言われるしぶとさの中にある。それら死を巡る情景でありながら、しかし作者の目に映る世界自体は恐ろしく美しい。街並みや、街路樹のざわめき、そこに行き交う季節、それらと同じに目に映り、脳裏にこだまする死者、被爆者たちの姿も、また崇高なものだ。生きようとする強い意志であれ、人にすがるより術のない様子も、半ばの覚悟が混じっていてさえ、世界のあらゆる光景の中ですべての一人一人がかけがえのない存在として見られる。親しかった者、行きずりの者、それぞれの死者達の命は、生きている誰もの命に等しく、作者には彼らの存在の重さと耀きがのしかかっていく。
その中で作者が見究めようとしているのは、この美しい景色と死が共存する世界、静かにであれ無惨にであれ人に死の訪れる世界、戦争のある世界、原爆のある世界、そこで生々流転を繰り返すものたちではなかったか。「あ、迅い、迅い、星」と呟いたきり昏睡した伴侶。記憶の奔流の中で「僕は堪えよ」と書く男。これは死者達と世界の間で押しつぶされた者の物語だったろうか。それよりは、引き裂かれた世界を一体化させ、自らもそれに加わった戦列なのだと思いたい。

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2006/08/19 01:55

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2010/12/02 20:32

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2011/04/01 00:57

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2011/06/11 18:38

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2011/11/29 01:16

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2012/05/20 01:15

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2012/08/04 12:27

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2012/08/09 23:36

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2013/03/29 20:27

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2019/01/03 09:38

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2013/06/06 02:33

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