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紙の本

ひと夏の出来事。ある人にとっては、甘く、切なく、ある人にとっては、思い出すたびになんとも楽しいもの。

2001/08/28 16:57

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:エーミール - この投稿者のレビュー一覧を見る

ひと夏の出来事。それはある人にとっては、甘く、切なく、またある人にとっては、思い出すたびになんとも楽しいもの。

 俳優の父親と児童文学作家の母親を持つ男の子ヨーには、兄弟はいない。夏休みだというのに両親は、仕事ばかりしていてヨーとは、遊んでくれない。食事といえば、ピザや缶詰のスープばかり。おまけに買い出しまでやらされる。ヨーは、悪いとわかっていて『ロビンソン・クルーソー』の本を万引きする。見つかるだろうと思ってやったのに誰にも気づかれず、がっかりする。自分で万引きのことを両親に話すと、妙に理解のある両親は、罪滅ぼしにゴムボートを買ってくれる。広い湖にこぎだしたヨーは、無人島を見つけ、そこでロビンソン・クルーソーごっこを始める。そこへ、スロヴェニアからきた少年スターネが泳いでやってくる。ユルちゃんという女の子も組み立て式の青いボートで来て、仲間になる。そうして、ヨーにとってこの夏が忘れられない夏になる出来事が起こる。
 あまり危なくないところで子供を一人にして自由に遊ばせるということが、この頃ほとんどなくなったのではないだろうか。いつも大人がついていて、遊び方や観察するものや、実験してみることまで用意されていたりして。ほっぽらかして退屈させると、子供ってなにか思いついて遊び出すものだったのにね。本を読むのもその一つだし、この話みたいに本が想像のヒントになったりもするしね。そういう面では、とても今風な設定だけれど、起こることは、かってのよき時代の児童文学にむしろ近いかもしれない。親がほっぽらかしにしたから、こんなに素敵なことに出会えたってわけね。この話の親は普段からものすごく教育的なわけでもなく、家族のつながりにひどくこだわっているわけでもない。でもこのヨーという男の子は、自分の待遇についてさまざまに思いを巡らせ、親の気持ちを先に考えてしまったりする。そのへんが、いまどきの親であり、いまどきの子どもなのだろうか。
 楽しく、ほほえましく、面白く読んだ。夏休みに読むのに、ピッタリの本だと思う。

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2020/12/17 18:16

投稿元:ブクログ

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