紙の本
本当の学際
2001/11/17 01:00
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投稿者:どらこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
古典力学から複雑系まで、非常に平易な言葉で要点が解き明かされていき、「こころの方程式」が示される。
そうして加速をつけ、非常に刺激的な統一性脳理論の仮説が始まる。実は脳科学のみの話は量の比率としてはそう多くはない。しかしその密度の濃さと刺激に頭がクラクラする。
利根川進氏も言ってたように「科学と芸術と哲学が同一の法則より成り立つ」ことを確信する日が来るのであろうか。
紙の本
LGS・たす・ニューロンネットワーク
2001/11/12 21:25
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投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
21世紀の幕開けは、脳が真の意味で物理学の対象となったことを意味している。──全154頁(付録のメモ類を除くと127頁)の本書の90頁に刻まれたこの宣言から本論が始まる。「読者よ、本当に面白がるのは最終章まで待たれよ。そこで読者はブッ飛ばされる。思ってもみなかった角度から脳科学のパラダイムが引っくり返される。頭がガタガタにゆさぶられる」と立花隆氏の推薦文に書いてある。
早くブッ飛ばされガタガタにゆさぶられたいと思って読み急いだのだが、20世紀の物理学と情報科学と脳科学と数学(ゼータ関数の話題が出てきたのが嬉しかった)の基礎と肝の部分が簡潔明瞭に、かつ天才科学者たちのライフ・ヒストリー(特にディラックをめぐる叙述は感動的)や著者の得意分野の話題(ファンクショナルMRI)を織りまぜながら生き生きと描いてあったものだから、本論に入るまでの助走部分だけでも充分に楽しめた。
本論は、前座(脳の方程式)と真打(統一脳理論)の二部で構成されている。前段では、21世紀の科学──「21世紀の科学とは、こころの科学である」(151頁)──にとってのキーワード(すでに紹介のあったバイナリー、確率、エントロピーに加え、カオス、非線形、複雑系、自己形成、イジング、セル・オートマトン、それから手塚治虫が『火の鳥』で展開した哲学=相転移、ユニバーサリティ、さらに、ニューロン、ゲート、ニューラルネット、学習、可塑性といった脳科学のキーワード)が一気呵成に提示される。
そして複雑系の理論とシミレーションの関係をめぐる(推論の方法が同時に実在の生成過程そのものであることを踏まえた?)決定的に重要な指摘──《ある系が自己形成によって作り出した複雑なパターンを、複雑系の理論、つまり単純な操作の反復によって作り出すことができたとすれば、もともとその系が持っていた基本的な規則性を推測することができる。/そこで登場したものがシミュレーションの世界である。ある規則性を持ったものが、ある条件下ではどのような結果を生み出すかをやってみるのである。言い換えれば、やってみなければわからない非線形の世界を、やってみることで理解しようとする試みである》(98-99頁)。──の後で、脳の形は「熱対流の法則」に従った自己形成からなるという「脳の方程式」が示される。
いよいよ最終章。それまでの叙述とはうってかわっていきなり抽象度が数段高くなるものだから、実をいうと私はちゃんとフォローできなかったのだけれど、たかだか11頁で概説される「統一脳理論」の仮説の要点は二つあると思う。
その一は、「生体において「形」はもっとも重要な「機能」である」(99頁)のだから「脳がその形態の決定と発生のプロセスに熱対流の原則を用いるとすれば、脳はその原則を脳の基本機能にも応用しているはずである」(121頁)という推論である。その二は、「ニューロンが脳を形成する最小機能単位である」という脳科学のセントラル・ドグマへの挑戦である。
ところで、題名に出てくる「いち・たす・いち」とは、もしかしたら「LGS・たす・ニューロンネットワーク」のことなのだろうか。
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正式には「脳の方程式いち・たす・いち」という題名で、脳の形態と機能についての最新の概説書。ただし、専門書とは思えないこなれた日本語にまず感心する。内容も簡潔明瞭、その上、随所に著者の見識と高潔な人柄が表れているので、エッセーを読むような感覚で読める。
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2001脳科学の第一人者の本です。高度な内容を分かりやすく書いてあります。知的好奇心が刺激される本です。
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脳のしくみについて
20世紀の科学、21世紀の科学を総動員して脳のしくみにせまる
物理学や数学の本を読んでいるかのようだ。
でも最後の章で、大どんでんがえしが起こる。
意識とは、こころとは、
たしかに、これまでの脳の説明、神経細胞のシナプス結合だけでは、僕は、記憶はともかく、創造が生まれるのかどうか、よくわからなかった。
これは面白い本だ。
いまのところ仮説である著者の研究がもっと深まって定説になると面白いね。
余談的に、科学を、憲法にたとえて、自然を手本に国家や社会のあり方を探る著者のポリシーにも共感を覚える。
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量子論と複雑系という新しい科学の発見によって、やっと脳の仕組みを解明する可能性が見えてきた。さあこれから脳科学を始めるぞ!の、始めるぞ!「まで」を解説した本。脳の働きを解明するのに必要な理論や、その理論がはぐくまれた科学史に触れています。少しくだけた調子でわかりやすく解説しているだけでなく、先人たちの業績に対する畏敬の念が端々に感じられ、著者の科学への真摯な態度にも好感が持てます。
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脳の科学とともに物理学や哲学的なものまで絡めてあるので、けっこう面白かったけど、文系人間には理解しがたい。
難しい。
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本書は脳についてかかれた本であるが、量子力学、カオス理論、物理学の話まで網羅されている。これは21世紀が、物理学から脳科学までを統合した統一理論の誕生する時代であるからだと著者はいう。まさに21世紀の一般科学への扉を開くための啓発書たらんとするものである。
熱力学第二法則(エントロピーは常に増大する)についての解説でなるほどなと思わず首肯した。 例としてコインを一度に無数になげるとする。その目の数と(表を向いてるコインの数)と場合の数によって得られる確率曲線はガウス関数で表すことができ、一般に正規分布と呼ばれている。この確率がエントロピーと呼ばれるものの実体なのだという。コインの裏がでるか表がでるかという個々の事象が起こるプロセスには影響は与えられない。単に確率の高低があるだけだ。しかし、同じ操作を何度も繰り返しておこなっている系においては、その結果の平均が確率の高い状態へ近づいていくという現象がおこる。ようするに平均値へ収斂していくわけである。
よくエントロピーが高い、低いというこれはどういうことだろうか。よりわかりやすくするため、土器と土を例に考えてみる。土は無論自然状態の物質だ、土器はその物質が規則正しく並ぶことによって秩序ある形を成している。つまり、土器は秩序の高い土であるといえる。つまり不秩序の低い土である。したがって土器とはエントロピーの低い(不秩序の度合いが低い)土であるということができる。熱力学の第二法則は、土器が時間とともに土に帰ることを意味している。この法則は広範に現象に応用可能な重要な法則である。記憶は次第に薄れていく。ほうっておくと時間とともに情報量が減少し、エントロピーは増大し、不確定なものへと変化していくことになるのだ。
脳は21世紀的な科学の力が最も発揮されているフロンティアの一つである。連綿と続いてきた科学者たちの偉大な仕事が今日の科学の礎になっているというのは、胸踊ることだしまた先人たちのすばらしさが実感できるし頼もしく思う。
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珍しく人に勧められて読んだ本。内容は脳科学。しかし、大半はバイナリィ・システムや、物理学の説明である。
脳の構造はバイナリィ・システムの延長であり、人間の行動を支配する脳の方程式についての歴史が解説されている。最後には著者の仮説が説かれる。
一見簡単に書かれているが、内容は極めて難しい。しかし、脳科学が物理学の延長にあり、不確定原理やエントロピについて詳しく言及されているのは面白いと思った。
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この本の核心はP115からの「統一脳理論」から。
そこまでは科学史の俯瞰と要点のまとめで、物理、情報をある程度知っている人なら読み飛ばして構わない。そして、核心はかなり野心的で興味深い話であるにも関わらず、たかだか13ページ程しかなく消化不良気味。
続刊「いち・たす・いち+α」があるので、次はそちらを読んでみる。
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[関連リンク]
404 Blog Not Found:なんともすごすぎる人だ - 書評 - いち・たす・いち: http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51272075.html
『脳のなかの水分子』中田力 松岡正剛の千夜千冊・遊蕩篇: http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya1312.html
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10年ほど前に買った本でとても役にたった。今、10年ぶりにもう一度読んだ。面白い。科学に裏付けされた理論がとても興味深い。10年前には、深く知らなかったことが今はよく理解できる。
オイラー積、ゼータ関数、数学的なことも、脳科学も、複雑系も興味深く読んだ。