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猫は家をいくつか持つという話をきいたことがあるけれど、まさにこの本で謎が解けました。
飼い主ではなくとも、こんなにも愛情をそそげるものなのですね。
これなら、他に家を持っても文句は言えません。
猫を客として迎えた著者の着かず離れずの関係がとても気持ちいいです。運命的な猫との出会いから、猫の神秘を最後まで美しく描いた随筆です。
読めば表紙の渋さにも納得。
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小説の美しさというものを最も体現しているものの一つとして、その重要性からもっと読まれなければならない小説であると言えよう。日常生活の中に潜む出会いと別れ、そして感情の揺れと振る舞い。文句なしに極上の逸品。こういう出会いがあるから、書店に行くことに意味を見いだせる。
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詩人だからか、ひとつひとつの風景描写に光や風を感じる。静かな生活のなかに迷い込んできた仔猫が次第に心の奥まで入り込んでいく過程が丁寧に描かれ、猫好きの心理が理解できる。心静かに読ませてくれる。
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遊びにくる隣の猫に、どうしようもなく惹かれてゆく中年夫婦の話。
鳴かず、決して抱かせようとしないが多くの時間を夫婦の家ですごすようになるが、
隣の家の猫であるから、どんなに愛しくても、いつまでもお客さんである切なさが書かれている
猫を飼っている人だったら、そんな不思議さを持つ猫を想像するのはそんな難しくない。
猫が全くでてこない装丁が、ものすごくかっこいい。
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自伝的小説というものを読むのはあまりなくて、でも個人的にこの本はとてもお気に入りになった。平出さんは詩人ということもあって、文章が大変美しい。話の中に出てくるたくさんの猫たち。主人公夫婦の猫への接し方がとても好き。確かに「猫」を相手にしてはいるのだけど、心のある生きものとして(そこは人間に対するもののような)の接し方、とか。
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派手な話ではないし、クライマックスがまっているわけでもない、ただ静かな日常をゆったりと描いているだけ。でも、これがとてもいい。文庫も買った。
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つくづく、猫は危ない生き物だと思った。
ある日いきなり生活の中に現れあっという間に居場所を広げ
そしてある日いきなり姿を消す。
その生き方を巡って思わぬ人と意見の相違でギクシャクし、
光の量によって変わる瞳に心を根こそぎもって行かれる。
外に出て行けば何事も無く帰るように祈るのみ。
外に出たがる猫に無理強いをすることができない。
私の猫は完全室内飼いで、交通事故に遭う確率は
ほぼゼロと思われるが、
閉ざされた部屋の中で関係性はより濃密になっている分、
必ずいつか訪れる別れに今から胸を締めつけられる。
作者の選ぶ言葉はとてもきれいだと思った。
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詩人 平出隆の私小説的エッセイ。
作者夫妻が隣家で飼われている
チビというネコに魅了されるも
借家を退去せざるを得ない状況に
チビとの別れを嘆き 突然のチビの死に悲しみ
転居先でも また野良猫たちに思いを寄せて...
と ネコにまつわる話が中心ですが
詩人の方らしく とても美しい文章で
情景描写がすばらしく清々しい気分になりました。
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平出隆(ひらいで たかし)さん、初読みです。「猫の客」、2001.9発行。しっかりした観察眼と心理描写に裏打ちされた「猫」への思いが伝わってくる作品です。日記でしょうか、小説でしょうか。子供のいない夫婦の家に、隣りの家で飼っている子猫が毎日やってきて、まるで「うちの猫」のように。その猫の交通事故死による喪失感、飼い主との齟齬など夫婦にとって辛い出来事も。子猫(チビ)を介しての、飼い主の冷たさと夫婦の暖かさの対比がこの作品のテーマのような気がします。
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とても静かな物語。
老夫婦が住む屋敷の離れを借りて暮らす夫婦。
隣の家で猫が飼われ、その猫が頻繁に出入りして、
夫婦はその猫を可愛がる。
しかし、パタッと猫が来なくなり死んでしまったと知る。
その後の屋敷での事、隣の家との関係、引っ越す事になり、新居のマンションの敷地に仔猫が暮らしている風景。
広くはない地域での夫婦と猫。
時代を表す土地の変化。
短い内容だけど、静かな日常が綴られている。