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知の創成 身体性認知科学への招待 みんなのレビュー
- R.Pfeifer (著), C.Scheier (著), 石黒 章夫 (監訳), 小林 宏 (監訳), 細田 耕 (監訳)
- 税込価格:14,850円(135pt)
- 出版社:共立出版
- 発売日:2001/11/12
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紙の本
目次1
2001/11/15 18:08
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:bk1 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第I部 知能の研究——基礎と課題
第1章 知能の研究 3
1.1 知能の特徴
1.2 知能の探求:構成論的なアプローチ
検討課題/本章のまとめ
第2章 古典的人工知能と認知科学の基礎 33
2.1 認知科学についての前置き
2.2 認知主義的パラダイム
2.3 知的エージェントのアーキテクチャ
検討課題/本章のまとめ
第3章 古典的人工知能と認知科学の根本的な問題 57
3.1 実世界vs.仮想世界
3.2 古典的システムが抱えるよく知られた問題点
3.3 根本的な問題
3.4 救済策と代替案
検討課題/本章のまとめ
第II部 身体性認知科学の枠組み
第4章 身体性認知科学:基本概念 81
4.1 完全自律エージェント
4.2 生物学的エージェントと人工エージェント
4.3 創発に向けた設計
——論理に基づくシステムと身体性を有するシステム
4.4 振る舞いの説明
検討課題/本章のまとめ
第5章 適応行動のためのニューラルネットワーク 143
5.1 生物のニューラルネットワークから人工ニューラルネットワークへ
5.2 四つあるいは五つの基本事項
5.3 分散適応制御
5.4 ニューラルネットワークの種類
検討課題/本章のまとめ
第III部 さまざまなアプローチとエージェントの例
第6章 ブライテンベルグビークル 185
6.1 動機
6.2 14台のビークル
6.3 振る舞いの分節化と拡張ブライテンベルグアーキテクチャ
検討課題/本章のまとめ
第7章 サブサンプションアーキテクチャ 205
7.1 行動に基づくロボティクス
7.2 サブサンプションに基づくロボットの設計
7.3 サブサンプションに基づくアーキテクチャの例
7.4 結論:知的システム設計のためのサブサンプションアプローチ
検討課題/本章のまとめ
第8章 人工進化と人工生命 233
8.1 基本原理
8.2 遺伝的アルゴリズムの紹介:
自律エージェントのニューラルコントローラの進化
8.3 人工進化エージェントの例
8.4 生物学的妥当性を目指して:
ゲノムに基づく細胞間コミュニケーションを通しての細胞成長
8.5 実ロボット、ハードウェアの進化、シミュレーション
8.6 人工生命:その他の例
8.7 方法論的課題と結論
検討課題/本章のまとめ
第9章 その他のアプローチ 287
9.1 ダイナミカルシステムアプローチ
9.2 行動経済学
9.3 スキーマに基づくアプローチ
検討課題/本章のまとめ
紙の本
“序——『知の教典』来る!”より
2001/11/14 14:41
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:浅田稔 - この投稿者のレビュー一覧を見る
前世紀は、まさに科学技術の世紀であった。人類誕生以来、それまでの世紀とは一線を画し、さまざまな科学的発見と技術の驚異的進歩の世紀であった。その権化の一つであるジャンボジェット機から外を眺めると、これも極めつきの人工物、自動車が血管中を流れる血液のように右往左往している。地表に張り付いて過ごしていた人類が、地表を高速で移動したり、高い空の上、さらに宇宙までその活動をのばすとき、今さらながら人類の知の偉大さに圧倒される。この知はどこから来たのだろう。ヒトを特徴づけるものとして、地球上の他の種がなし得なかった二足歩行、道具使用、そして言語使用が挙げられる。言語が持つ外部記憶のすぐれた特徴が知の共有を可能にしてきたことには、誰も反対しないであろう。
では、ヒトの知の発生を知るにはどうすればいいか? 進化人類学、発達心理学、比較認知心理学、脳科学、神経科学などを勉強すればいいだろうか? もちろん、それぞれは参考になるし、知を理解する知識も増える。しかしながら、理解すればするほど微細に入り、無限後退する印象を受ける。それぞれの科学者は、詳細な科学的データを元に、ヒトの知に対する想像を膨らませる。それらは非常に機知に富み、示唆的ではあるが、人類の存在や知を完全に理解することは困難だ。もとよりこの答えに完全性はあり得ず、多様な理解があることが重要だ。
古来より哲学は、この問題を扱って来た。そして、心理学、社会学と移行するにつれ、マクロな定式の中でヒトの行動/活動の説明を試みて来た。しかしながら、ヒトという存在の生物物理的な側面に立脚しないため、主観的価値観に基づく物語になりがちだ。とは言っても、そこは人類の知が、それ自身を説明しようと試みているので、大いに参考にはなるし、十分われわれを魅了もする。
では、これら以外に道はないのであろうか? ヒトの知に対する多様な理解を可能にするために、第三のアプローチ「設計に基づく手法」がある。本書は、このアプローチに主眼をおいた、現代の『知の教典』である。知的な人工物の代表であるがロボットの設計、製作、作動を通じて、ヒトの知に迫るのである。現在では、ヒトの生涯が遺伝的因子ですべて決定されるか、環境因子かといった二元論は受け入れ難くなっており、さまざまなレベルでの遺伝子的要因と環境要因が複雑に相互作用することでヒトを成り立たせていることが、広く受け入れられている。ということは、ロボットの設計でも、内部構造の設計と与えられる環境の設計が重要であることを示唆する。従来の工学規範では、後者を限定し前者に重きをおいてきた。しかしながら、環境が動的に変化することを考慮すると、というよりも、実は環境の多様性や動的な要素が、知の発生に重要であることも知られつつある現在、両者の相互作用を中心とした設計論が必要となる。環境因子の中には、もちろん、人や他のロボットが含まれている。これこそ多様性の象徴だ。少し抽象的な議論になってきたが、読者は心配することはない。本書は具体的な例をふんだんに盛り込んでおり、読者自身が自分でヒトの知の新たな理解を創造させる旅に導いてくれる。興味あるところから入れば良い。
筆者は、本書の著者の一人ファイファー教授とは、十年来の付き合いであり、よく酒を酌み交わしながら議論している。彼がスイスのチューリッヒ大学で講義用に使っていた本書の原本には、何度も目を通している。難しい課題を、例を使って易しく説明しており、知の教典、入門書にはぴったりである。(略)ファイファー教授自身が親日家であり、キリスト教的科学規範からの解放にも、日本の文化的、宗教的価値観が役立ったとも述べられており、興味深い。先にも書いたように、知の理解に完全はあり得ない。多様な理解が必要だ。読者の理解を創造し豊かにするために、本書を入門書として旅に出ていただきたい。
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