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グノーシス 古代末期の一宗教の本質と歴史 みんなのレビュー
- クルト・ルドルフ (著), 大貫 隆 (訳), 入江 良平 (訳), 筒井 賢治 (訳)
- 税込価格:9,900円(90pt)
- 出版社:岩波書店
- 発行年月:2001.12
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紙の本
古代末期に源を発するグノーシスの宗教。現代にまでおよぶその本質とは。
2002/02/20 22:15
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投稿者:挾本佳代 - この投稿者のレビュー一覧を見る
こと日本に暮らしていると、宗教とは無縁となってしまう、というのが日本人の率直な感想ではないだろうか。もちろん、その無機質な感覚が壊される瞬間もある。たとえば、米国同時多発テロ事件。突発的に発生した大事件を目の当たりにすると、世界にはさまざまな宗教があり、各宗教に設定された戒律に従って生きている人たちもいることがわかる。と同時に、宗教は日本人おなじみの仏教だけでも、結婚式の時だけお世話になるキリスト教だけでもないことが明白になる。
古代末期にその源を遡ることができる宗教運動についての研究が、ここ半世紀のあいだに少しずつではあるが、確実に生産されてきている。研究対象は「グノーシス」。このギリシア語を訳せば、「認識の宗教」「知識の宗教」となる。いくつもの教派から成る宗教・宗教運動のことをいう。本書は、グノーシスの研究史、その本質と理論的な構造、歴史、展望が500ページにわたって、詳細に論じられている。
グノーシスの諸教派は、マニ教を除いて大がかりな大衆運動へと発展することはなかった。しかし、著者も指摘しているように、グノーシスはたとえばヨーロッパや西南アジアの神学、神秘思想、哲学の伝統の中に多大な影響を及ぼしていった。このことは本書をぜひ読んでみてほしいが、これらの思想や哲学への影響にとどまらない、看過してはならない二元論がグノーシスの本質にはあった。
それは、イラン・ゾロアスター教の二元論に象徴されるように、グノーシスには「可視的な世界」は創造者とともに否定的に考えられ、悪の王国と見なされているということである。つまり、グノーシスは徹底して、人間が現在生きている、創造者が作り、人間が日々利用している世界を否定してきた。グノーシスがいわゆる創造者よりも上位においているのは「至高神」すなわち「摂理」である。いわゆる創造者さえも制御することのできない摂理に人間が包摂されていることを指摘したものである。さらに深く読み込むと、グノーシスは、人間や人間が創造したその他の宗教の作り出した世界と、「摂理」の源である自然を峻別しようとしていたことがわかる。いまだカソリックが進化論を否定していることからするならば、グノーシスはキリスト教よりも遙かに人間と自然、万物と自然との関係における本質を突き詰めていたことがわかる。図表や写真もふんだんに盛り込まれており、グノーシスを深く知るための格好の書だ。 (bk1ブックナビゲーター:挾本佳代/法政大学兼任講師 2002.02.21)
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