紙の本
一言でまとめると冗長。この1/3の文字量でこんな物語は語り尽くせるのではないだろうか。
2004/09/21 11:49
11人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:書子司 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ページ数をかせぐために延々と村人たちの生活や人となりを描いたとしか思えない。他の書評を読んでも、前半を我慢して読めば後半は面白くなってくるという評が何点か見受けられた。極論すると前半は不要ということではないのだろうか。
スティーブン・ドビンズ著「死せる少女たちの家」というひとつの村の中での連続少女殺害事件を描いたミステリーがある。この作品は本作と同じようにひとつの村の中だけを舞台とし、同じように村人の生活や人物が丹念に描かれている。この作品は殺人事件を解明していく過程で、村人たちの隠された関係(同性愛や不倫関係など)がだんだんと分かり、平穏だった小さな町の人々は、ゆっくりと、だが確実に、恐怖にむしばまれてゆき、前半で丹念に描かれた生活や人となりが実は……、という風につながっていくように構成されていた。この形なら、一人ひとり一家族ひと家族を丹念に描くのはわかる。だが「屍鬼」ではその描かれた家族一人ひとりの肖像はどこへも落ちない、そのまま死んで屍鬼となるだけである。生活を描くことが、屍鬼となったあとストーリー上伏線となってくるわけではない。生きたいとか、明るい所で走り回りたいとか通り一遍の希望しか述べず、また、描かれた一人ひとりの肖像に別段の個性があるわけでもない。どこにでもある、あなたの隣やお向かいに住んでいる人となんら違わない、何の秘密もないしごく普通の人たちである。のどかな生活を描くことで、屍鬼となった後の悲しみをより強調できるわけでもない。
どんなに村人の生活を描こうと、この作品は吸血鬼譚の変形バージョンであり、ブラム・ストーカーの「ドラキュラ」以来語られてきたように、どう屍鬼を倒すか、どう従来通りの平穏な生活を取り戻すか、という点にストーリーは集約されてくるように思える。つまり、多くの書評氏が述べているように、前半は我慢して読むか、とばして読むということになるのである。『東京異聞』でどこにもない東京のノスタルジックな時代を描いたから、本作でも新しい吸血鬼譚が、もっと幻想的で夢のようなお話が驚くほどの文字量で愉しめるのかと期待したのに、単行本で2冊5,000円、文庫で5冊3,540円はあまりにもったいない。
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(一巻 583頁 743円+税)
11月8日火災の一報を受けた好野は隊員と共に現場である外場という集落に向かった。
その日より遡ること三ヶ月強。外場は猛暑に見舞われていた。
村の深夜の祭りの最中、トラックが入り込み暫くして立ち去っていった。それは瞬く間に外場へ広がり兼正に引越ししてきたのでは?との憶測が飛ぶ。にも拘わらずその洋館に人の移住した形跡は無い。そんな最中、後藤田ふきの息子・秀司が山入から帰って来て間もなく病死した。その訃報を報せるため山入へ出向いた寺の副住職である静信はそこで三人の遺体を見つける。大川義五郎と村迫秀正は遺体を野犬に食いちぎられた後があり無残だった。秀正の妻・三重子は病死という見解が出たが、不思議な事に夫より数日も後に亡くなっていた。三人の死因についてあらぬ噂が立ち始めた頃、兼正に住人が引っ越してくる。かねてよりその洋館に憧れのようなものを抱いていた恵。その恵が突如行方不明になった。村民の捜索の末やっと見つけ出された恵は様子がおかしく、尾崎医院へ来院する。検査結果では貧血にしか判断出来ないのだが何故か急死する。そして長らく床に伏していた安森義一の訃報。夏風邪で体調を崩していた後藤田ふきも急死した。これは何かの疫病なのだろうか・・・
(二巻 503頁 667円+税)
例の病の初期症状は風邪の症状に似ていた。軽度の貧血症状を起こした数日後、劇的に進行が進み死に至らしめる。尾崎医院の医師・敏夫は懸命に原因究明に乗り出すが、考えられる伝染病とは一致しない。感染源・感染ルートはおろか伝染しているという確証すら掴めぬまま、じわじわとその病は村は浸食され始めて行く。8月も終わろうとする頃にはこの病で亡くなった者は10名を超えた。そんな矢先、村では妙な引越しが起き始めていた。まるで夜逃げかのように夜中に高砂運送で引越しをする人々。誰にも何も告げず家財道具もそのままの状態で突如行われる引越し。不審に思った寺の副住職・静信は調べて行くうちに妙な引越しと共に浮かび上がった奇妙な類似点に着目した。亡くなった人間のうち村外に勤める者の全員が死の前に辞職していた。何者かに意図的に村を孤立させられてるような感触。そして、敏夫・静信と共に村の異変を調べていた役場の石田が資料とともに失踪した。
(三巻 425頁 590円+税)
敏夫は村で猛威を振るうこの一連の出来事を起き上がり(屍鬼)の仕業と判断を下した。だがどうしても静信はその意見を鵜呑みにすることは出来なかった。
その頃、夏野は自分の家の外で恵の姿を見る。起き上がりだと思いつつ確証を取るために、かおりと昭と共に恵の墓を暴く。夏野の予想した通りそこに恵の死体は無かった。
入院させた節子を屍鬼から守るようにして延命措置を図っていた敏夫だったが、一瞬の隙をついて屍鬼は節子の命を奪う。
村人の中にも徐々に起き上がりでは無いか?という疑問がわくが決してそれは口にしない。出来ないことだった。一方、沙子を中心とした仲間(屍鬼)は徐々にその数を増してゆく。静かに屍鬼の捕食が始まる中、村人は未だに起き上がりの事実を認めようとしなかった。
(四巻 574頁 743円+税)
兼正(桐���家)は起き上がりだと村で触れ回る郁美。煽るように敏夫は郁美を兼正へと向かわさせた。だが、正志郎の意外にも冷静でスジの通った言い分に村人は屍鬼というものの存在を非日常的なものと判断してしまう。
郁美を煽り、尚且つ妻の恭子をモルモットのように扱った敏夫に懸念を抱く静信。屍鬼を狩る手段を見い出し、そうしなければ村は完全に死に絶える。敏夫のしたことは正論だと感じつつも、静信には屍鬼を狩ることも、そして罪と定められた行為に自分の手を汚すことも決断できぬまま敏夫と袂を分かつ。
事態は最悪へと進んでいた。ここまで来てやっと外部に助けを求めようと役場に書類を揃えに行く敏夫。だが、したたかにそして狡猾に屍鬼は村を外界から隔絶していた。協力者を作るため意を決して広沢らに事の顛末を話すが、彼らの出した答えは敏夫を孤立させただけだった
(五巻 469頁 629円+税)
静信の父である信明の残した手紙は、屍鬼を招待する手紙だった。静信は信明が何故そんな行為に及んだかを知るために、単身で兼正(桐敷家)へと赴く。それは屍鬼の捕食となることを覚悟した行動だった。
一方、敏夫の元に千恵という名の屍鬼がやってくる。捕食に甘んじながらも敏夫は一計を投じた。言葉巧みに千恵を霜月神楽の祭りへと導き、大勢の村人の中で千恵が屍鬼である事実を突きつける。やがて大掛かりな虫送りと称して、村中で屍鬼狩りが始まった―――。
怖い小説か?と聞かれたら即答に悩む。確かに怖い小説であるのだが、とても哀しい。読了後、怖いという前に何故か哀しみを凄く感じた。そして「常識」という名の概念の不毛さ。
一体、何が正しいのか読めば読むほど判らなくなった。きっと「何が正しいか」という「常識」はこの作品には当てはまらないのだろうな。
文庫の1巻に関しては読むのが辛い(笑)登場人物があまりにも多く、一人を把握する前に次の人と移行してゆくからだ。が、ここを過ぎればあとはノンストップ状態。
物語の前半は、村を浸食する「何か」を早く知りたくて頁をめくるのがもどかしい。中盤に入ると、村人の「常識」のおろかさに歯がゆくて先の展開が気になり、後半のテンポの良さに読むペースが自然と上がった。
手放しで“めでたしめでたし”で終わる小説では無いが、読了感は妙な納得と共に、外場はこういう結末が一番似合ってるのだろうな・・・と思った。
個人の好みで言えば、この手の結末を持った小説は嫌いなはずなのだが、この小説に関しては何故だがとても好きだ。
己の枠の中にある“常識”は個体を下等な生き物に変えるのかも知れないな。
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山村の村を襲った、吸血譚。
1,2巻あたりまでは、登場人物が多いのと、関係が把握できなくて、ちょっとつらい。でも、後半は読み終えないと眠れないってぐらい、ぐいぐいひっぱっていく。面白かった。
医者と坊主と、高校生がメインになって動いていくんだけど、それぞれの価値観や、思惑が交錯して、神をもたない人達の「呪われた町(キング)」っていうのがよく出ていた。
そう、神がないから、屍鬼になった肉親を前に迷う。神がないから、屍鬼になっても、迷う。
…やっぱ、12国記買おうかなぁ。
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ぶっちゃけて、ダレる。
序盤中の序盤なので前置きが、ずぅっと続きます。
物語中の主人公の書く小説の内容が難しいというか宗教的な感じ。
俺だけかもしれないけど、ほとんどの人はよく分からないんじゃないかな?
さらに、登場人物が多い。
記憶力のない人または、普通の人はメモっておく事をオススメする。
これだけ見ると、良くないように見えるが、そんな事は無いはず。
次回に続く(ぇ
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全5巻。分厚くて読み応えあるなー、時間かかるかなーとか思ってたけどいやいや、もう思いっきり引き込まれて延々と読んでました。
怖いよー!何が怖いって読んだ人ならわかると思うのですが、読んでる間中季節はずれの風邪でずっと微熱だったんだって、私。
ひー、怖いー!でもおすすめ。
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小野不由美というと、十二国記しか読んだことなかったのだけど、うって変わって、なんつうか、いつ始まるんかなという期待だけで疲れてしまった。
2004/2/24
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待望の文庫化!待ってましたよん♪ ホラー小説王キングの「呪われた町」へのオマージュだというのは有名。本書は孤立した村を舞台に土着的な人間の心理など見事に描いている。それにしても窮地にたたされた人間の変わり様こそが「鬼」なのでは?と思ってしまう。屍鬼vs人間、屍鬼はなぜ狩られるのか。後半は息をもつかせない早い展開に寝不足間違いなし!
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「屍鬼」、ゾンビと呼ぶにはあまりにせつない存在。小さな山村を舞台に密かに進行する全村ゾンビ化計画。全5巻ながら、寝る間もおしんで読んでしまうおもしろさは圧巻。
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小野不由美の最高ホラー作。
小さな村で起こる奇妙な事件。
どんどん村人たちが死んでいくが犯人が分からない。
古い習慣が残るこの村に何が起こっているのか・・・。
全5巻、一気に読んでしまいます。
でもマジで怖いよ ̄m ̄ ふふ
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文庫本だと、全五巻です。
ホラー小説だなんて言われてますが(確かに、夜中、一人で読んでいたら怖いけど)、人間ドラマ満載です。
生きたい。生きていて欲しい。当たり前の気持ちですもんね。騙されたと思って、読んでみて下さい。一巻の終わりくらいから(笑)、目が離せなくなりますから!
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図南の翼が三年出なかった理由はここにありき。
小野先生の超大作。文庫版が出たので速攻買いました。
外を排して孤立するように存在する村。生まれてから死ぬまで、すべてが中で完結してしまうその村にやってきた余所者。それはやがて村を覆いつくす恐怖の始まりだった。小野氏入魂のミステリー。
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文庫は5巻までありめっちゃ長いですが、徐々に怖くなり、めっちゃ先が気になるドキドキ感あふれる展開が待っています。
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おどろおどろしいばかりのホラーかと思ったら、胸が締め付けられるようにせつない物語。だまされたと思って最後まで読んでみてください。
怖さの面でも保障します。
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先輩に借りて読んだ本。
リアル怖い。というか、展開が読めない。まあ読んでいくうちにわかったけど。人間の怖さや醜さや辛さを残酷なほどリアルに書き綴ってる。引き込まれる。
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文庫全5巻の大長編で、読むのにどんなに時間がかかるかと思ったらたった2日。
途中で読むのを止められない力がある。
大長編だけあって登場人物が何十人。そしてそれの一人一人がちゃんとキャラクターたってて生き生きして(何人かは死んでたりもするんだけどね・・・)するのがすごい。
今まで散々読んできたホラー小説の中で5本の指に入るでしょう。