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日常なんて、つまるところは、まだるっこしい既視感で淀んでいる。けれどもそれがなんだろう。
雑誌のページをめくればそこにあるような、華やかで口あたりはいいけれど 結局はありきたりなイメージや修飾をまとって、新鮮さや 素敵っぽさや こぎれいさをよそおっても、お見通し。
とどのつまり人は、たいていひとしく愚かで 卑小で 救いがたく凡庸だ。
「かならず奇跡は起こる、夢はかなう、可能性は無限、愛は永遠」、馬鹿野郎。
めまいはこうしてつづく。
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「だってそういう幸福って、どこでも似たりよったりの、
退屈なものなのよ。でも、退屈のどこが悪いんだか、
あたしにはわかんないけどね。
退屈というのは、まあ、できるうちが花なのよ、
退屈しているひまもなくなったら、あんた、疲れちゃうよ。」
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テーマはとてもおもしろいと思ったし、興味を持って読もうとしたけれどだめでした。
2,3ページ普通に続く文章(時には10ページ以上)が、
専業主婦の息苦しさみたいなのを表現してるのだろうけど、
読んでるとイライラしてきます。
こういう小説は短編でいいんじゃないかなって思いました。
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なかなか手にとって読み始められなかった、金井美恵子。
手に取ってみました。
つ い に!
どんなかなぁと思っておりましたが、面白かった。
ストーリーはほとんどない上、現代文で出されるような主題的なものもなにもなく、ということはこの小説が教科書に採用される可能性は現段階においてはほとんど皆無ということになるが、少し前に問題にされた「ゆとり教育」や、定期的に話題になるなんていう名前かをすぐには思い出せないのだけど、確か頭文字か何かとにかくアルファベット数文字を並べた名前の国際的なテストの結果とかを気にしている近年の教育熱、もちろん熱といってもそれが学力を上げるのに効果的に働きかける熱さ、いわば熱量を具えているかといったらそれは甚だ疑問で、むしろその熱によって、学力を向上させるとかそもそも学力ってどのようなものだろう、みたいな本質的で中心的な問題を扱わない方向へと向わせられているとは思うのだけれど、とにかくそういう現代の教育熱によって少なくとも一時的に教科書の制作者の間で、これまで長らく定番教材として採用してきたものばかり扱っていたんじゃ、そりゃ学力向上とか声高に謳ったところで何も変らないよな、だって題材が一緒なんだもの、ここらで一度思い切って新しいのを導入しよう、しかもせっかくやるなら、まさかこれですか大丈夫ですか授業できますかテストつくれますか本当に心底心配ですけど良いんですか、なんていわれてしまうような作品を強行突破で取り入れてみよう、と思われることがかなり少ない確率ではあるけれども皆無とは言えないくらいはあるわけで、そのわずかの可能性の中でしかも金井美恵子を採用しようと決定されるのは一層稀少なものになるけれど、もし仮にそのようなことがあるとすれば、たとえそれが数年の後に再び教科書から姿を消すとしても、教科書製作者の一時的な気まぐれとはっきりとしないが多様な偶然が織りなした奇跡として、私はあるいはせめて私だけでも深く記憶したいと思う。
ふう。
こんな感じで、文庫本の2~3頁くらいは当たり前のように続く、長いながい文章によって書かれていて、気づくと読み終わっているという金井文体の不思議な世界。
彼女の文体にたいしてこそ、ふと、私は「軽いめまい」。
この人みたいな文章は、評論だと蓮實が近いけど、小説では初めて。
私は好きです。まだ分析は出来ないけれど。
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自ら「ドラマティックなことに興味を持てない作家」と語る金井美恵子の、文字通りに非ドラマティックな小説なのだが、それでも登場人物がいて時間が生起する限りは、やはりそれ相応のドラマはあるもので、それが主人公であり語り手でもある夏実の淡々としつつ、いつもながらの切れ目のない文体で語られる。作中で、世田谷美術館で開かれた「ラヴ・ユー・トーキョー」写真展への言及があるが、この小説は夏実の体験する「トーキョー」を描いてもいるのであって、そこに専業主婦として暮らすことの、まさに不条理の一歩手前の状態が描かれたのだろう。
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専業主婦の日常的な日々のぼやき
それがダラダラ綴られている
ダラダラ感を出す為だとは思うが
一文が非常に長く、とても読みにくかった。
まぁ、なんつーか、専業主婦も大変だ。
ねちねちという擬音を使いたくなるほどに毒のある、ほとんど神業に近い「小言」の持続で成り立っている本書
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ごく普通の主婦を主人公に、ごくごく普通の日常を描いた本書では、著者が『あとがき』に書いたように、ドラマチックな事件が起きるわけでも、日常に変化らしい変化が起きるわけでもなく、ただ淡々と過ぎて行く。同じ立場であれば誰もが感じそうなこと、誰もが内心では思っていそうなことを、執拗に描き出すところが逆に面白い。
金井美恵子作品の中では『恋愛太平記』と同系統の、女性を主人公にした、饒舌体の作品。会話は大半が間接話法で描写されており、それが絶え間なく続くお喋りのようだ。