紙の本
「物語を作る物語」の醍醐味
2003/01/23 01:29
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岑城聡美 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「物語の作り方」と言うタイトルを見る限り、この本を手に取るのはおそらく自ら創作に携わる人々が多数を占めるだろう。しかしこの本には単なる作劇手法の指南書に留まらない魅力がふんだんに詰まっている。
ノーベル賞作家ガルシア=マルケス(愛称「ガボ」)を中心として、プロの脚本家達が持ち寄った、個々の「物語の種」を、一つのストーリーへと、ブレーンストーミングを行いながら高めていく様子がつぶさに収められているのだが、この物語作成の過程を追うのが実に面白い。例えば、余命幾ばくもないと知らされた男が日常からの逸脱を求めて突如旅に出る、と言う設定が、議論が交わされるうちにいつのまにか「田舎町に突如出現する聖者の物語」へと変貌していく。議論が行き詰まったかとみるや突如飛び出す「ガボ」の奇想、負けじと意見を戦わせる塾生達の発言から一つの物語が生成されていく過程は実に生き生きとして、まさに「物語を作る物語」と呼ぶに相応しい。誰かが発言するたび変転してゆく物語を追うことそのものが、まるで執筆中の小説家の頭の中を覗くように興味深く、物語の受け手たる読書家にとっても読み応えある内容となっている。塾生達の持ち寄る個々のエピソードの面白さも見逃せない。それぞれが完成したストーリーではないにせよ、十分に好奇心をそそられる素材が次々に繰り出されるため、読む者も議論に参加してそれぞれのストーリーを考えてみるという半ばパズル的な楽しみ方も可能である。
勿論、創作に携わる人々にとっては非常に有益な書であることは言うまでもない。随所に「ガボ」の金言がちりばめられ、注意深く読んでいけば創作に必要な様々なヒントを得ることが出来る。幾通りもの読み方を楽しむことができ、かつ「物語る」人々には貴重な学びの要素が詰まっている、非常に魅力的な本である。
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南米では皆こうなのか、アルゼンチン人は差別されてるのか、などと色々思うところはあるが。どの話も皆マルケス的に収斂してく様が面白い。
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このタイトルから「シナリオライター志望者へのHow to本」…みたいな印象を受けたりもしますが。全然違います。ガルシア・マルケスが実際にキューバにある映画学校で行っていたワークショップの記録なんですが。とにかく、おもしろい!参加者があるひとつのストーリーの種を披露する。すると、ガボ(ガルシア・マルケスの愛称)をはじめ参加者たちが口々にいかにそのストーリーを魅力的なものにするか、喧々諤々議論をするのだ。まさに「コラボレーション」というのはこのことだな、と。実際、その議論の後、そのストーリー自体がどのようになったかということよりも、その議論のプロセスこそが魅力的。しかもすごいのは、ノーベル文学賞受賞者のガボ相手に、参加者たちは全然ひるまない。良い意味でどんどんつっかかっていく。これ、日本人相手のワークショップだったら、成り立たないだろうな…。ユーモアや牽制や皮肉や称賛を含みながら、ストーリーの種が育つ過程はとてもスリリングでおもしろい。読んでいるうちに自分も参加していたとしたら、自分だったらこのストーリーをどう展開するかな?なんて考えながら読んでしまった。 (2005 Nov)
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ひとつのアイディアをお話にしていく過程をたくさんのぞくことができる。書くという作業は孤独だ。これをみんな一人でやるのだから。
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おもしろいです。
脚本作りの教室の討論を字に起こしたものです。
ガルシア・マルケスはいい先生。
どのページを開いてもいいひらめきやヒントがたくさん。
ものを作る人はぐっと来る内容だと思います。
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20090903
「Amazon.co.jp: 物語の作り方―ガルシア=マルケスのシナリオ教室: G.ガルシア=マルケス, 木村 栄一: 本」、着手。もうマルケスとかだけ読んでればいいんじゃないかなあとか思う昨今です。そうしないと、自分の中の文体の水準が上がらないんだよね。でも、最近本を読むと反動ですぐ眠くなって困る。読書の秋と洒落込みたいんだが。
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20091023
■ カルメン、故郷に帰る
「Amazon.co.jp: 物語の作り方―ガルシア=マルケスのシナリオ教室: G.ガルシア=マルケス, 木村 栄一: 本」、再開。もっと奔放で突拍子もないアイデアが噴出してくるようなワークショップかと思ったけど、さほどそういう感じではなく、日本の例で言えば『世にも奇妙な物語』といった番組で使ったら面白そうな話がいろいろと議論されている。
そんなわけでもうちょっと灰汁の強いものが読みたいなあと思っていろいろ脱線していたのだが、結局これに戻ってきて安堵感を覚えている僕なのだった。うん、もうマルケスレベルだけ読んでいればいいんだな、俺は。
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20100102
「Amazon.co.jp: 物語の作り方―ガルシア=マルケスのシナリオ教室: G.ガルシア=マルケス, 木村 栄一: 本」。面白くないというわけじゃなかったんだが、もう少し御大の物語論がメインだとありがたかった感じ。三分の一でストップ中。
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20100504
■ 主宰論
「Amazon.co.jp: 物語の作り方―ガルシア=マルケスのシナリオ教室: G.ガルシア=マルケス, 木村 栄一: 本」、再開。ずいぶんほったらかしていた。
正直、心躍るテキストではない。話はまとまらないし、示唆的なセリフがさほどあるわけではない。身内向けのデモテープというか、楽屋話というか、文化祭で出し物の準備をしているところを収めたビデオとか、そういう感じである。その風合いを楽しめるなら、悪い本ではないのかもしれない。
しかし、そのような遠回りをしなくとも、マルケスの話だけをみっちり聞きたいと僕などは思ってしまう。やっぱり、彼の発言だけ桁が違う。
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20100505
■ 好意論
「Amazon.co.jp: 物語の作り方―ガルシア=マルケスのシナリオ教室: G.ガルシア=マルケス, 木村 栄一: 本」、二分の一弱。
読んでいて気付いたことなんだけど、この本を読んでいてなんとなく辛いのは、マルケス以外の人たちを「好きになる」きっかけが見当たらないからかなあと思った。それぞれは、それなりに各分野でキャリアのある人たちのようなんだけど、そういう背景は日本人の僕にはよく分からないし、顔も分からないし、文字面からだけでは年代も性別も分からない。というか、人数が多すぎて各人の発言が何であったかをちゃんと整理して追うことが出来ない。結局「マルケス」の言葉にのみフォーカスが当たり、「やっぱりマルケスすげえな」という印象だけが強化される。
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20100509
「Amazon.co.jp: 物語の作り方―ガルシア=マルケスのシナリオ教室: G.ガルシア=マルケス, 木村 栄一: 本」、二分の一強。相変わらず、話が進まない。タイトルに偽りありだ。よく見てみると、この訳本は九十五年と九十八年に出た同趣向の本を合冊したものらしい。それ故にかなり大部で重たいものになっているのだけど、分冊にしてフォントも大きくし、ついでに参加者の顔写真とかもあるとよりイメージが湧くのではないか。この本の中のやりとり自体がある種芝居の「台本」っぽいものでもあり、そういう見せ方を意識した方がよかったのではないかなあ。
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20100805
■ 日本論
「Amazon.co.jp: 物語の作り方―ガルシア=マルケスのシナリオ教室: G.ガルシア=マルケス, 木村 栄一: 本」、四分の三。
興味深いなと思ったのは、日本についての言及が結構あるということ。黒沢映画、またはある映像で見たという美智子妃の傘の話。長らく映像に係わっていたマルケスのことだから、小津のことだって知っているだろう。『青い犬の目』の中には『夢十夜』を思わせるような一編もある。
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2010830
■ 終点論
「Amazon.co.jp: 物語の作り方―ガルシア=マルケスのシナリオ教室: G.ガルシア=マルケス, 木村 栄一: 本」、ようやく読了。長かったー。
「ブクログ」にまとめるために過去ログを検索してみたが、着手したのは去年の九月のことであった。いやはや、丸一年かかったことになる。途中でかなり長い中断期間があり、翌十月から今年の五月の間には言及がない。そこからさらにちょっと開いて、今月に入ってややスピードアップ。そして、今日無事にゴールのテープを切ることが出来た。
前にも書いたとおり、この本は二冊の同趣向の本を日本独自に合冊したものである。個人的には後半に収められたものの方が面白かったかな。前半はどうも読んでも読んでも進まない感じだった。
マルケス本人が創作の秘密を明かすシーンはそれほど多くないが、印象的な段落はやはりマルケスの弁によるものである。そこはノーベル賞作家の貫禄。このワークショップに参加している人々は基本的に彼を敬愛しているので、あまり噛みついてくるような人はいない(アレナスがここにいたら…、などと野暮な想像をする)。実際、一番口の悪いことを言っているのもマルケス本人であり、沢山の人に囲まれながらも、結局主役も脇役も全部かっさらっていってしまっている感もある。これもしょうがない。ノーベル賞クラスのおしゃべりが相手ではなかなか太刀打ちできようはずもない。多分、マルケス本人にも周囲の愛情を独り占めしてしまう習性があるのだ。
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G・マルケスと生徒達が延々とアイデアを出し合って議論する、だけなんだけど、よく見れば随所に珠玉の言葉が鏤められている。
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マルケスのシナリオ教室は意外にもワイワイガヤガヤ。なんやかんやで参加メンバーも楽しそう。
『物語の作り方』といっても、小説ではなくシナリオ。映像化が前提のワークショップの記録だ。小説の場合、なかなかこうはいかないんじゃないかと。リレー小説は遊んでる分には楽しいけど、基本孤独な作業だと思うから。
マルケスの組版職人(DTPオペレーター)や印刷業者への愚痴が、リアル過ぎて笑える。
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評価:★★★★★
これまでシナリオ執筆の参考書はいくつか読んできたが、これはその中でも最も大きな影響を受けた本。
これはガルシア・マルケスが実際に開いていたシナリオ教室でのブレーンストーミングの様子を活字化したもの。
ガルシア・マルケスといえば言わずと知れたノーベル賞作家だが、ここで行われているのは決してお堅い芸術作品を書くための授業ではなく、エンターテイメント作品をつくるためのもの。
中でも重視されるのが、シーンとシーンのつながりを通していかに「生きた」物語を描くかということ。
エンターテイメントというとヒットの型のようなものがあってそれに当てはめるようなものを想像する人もいるだろうが、ここで行われているのはそれとは逆の、いかに流れるような展開を作るかということだ。
構成重視のシナリオ指南本では得られない、創作において最も重要なことをこの本から学んだ気がする。
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世界的作家、ガルシア・マルケスがテレビ番組や映画のディレクターたちとディスカッションを行う形式の本。
ガルシア・マルケスは小説家ではあるがシナリオライターとしても活躍しており、この本は若手の作品をブラッシュアップしていく過程を克明に記したものである。
読んでいて思ったのは、羨ましい、ということ。脚本家は他人とブラッシュアップができるけれど、小説家はそれを一人で行わねばならない。
付箋を貼ったのはすべてガボのことばだった。
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『物語の作り方』
G.ガルシア=マルケス
私にとって何よりも大切なことは、創作のプロセスなんだ。人にいろいろな話を語って聞かせたいという気持ちがひとつの情熱に変わり、そのためなら。つまり目で見、手で触れることのできないことをするためなら、空腹や寒さ、理由は何であれ、その情熱のために死んでもいいとまで人に思わせるのは、いったいどういう神秘によるものだんだろう? しかも、その情熱なるものはつぶさにみてみると、何の役にも立たないものなんだよ。(p6)
何のやくにも立たないものに情熱を燃やさざるを得ない。それが小説家なのだろう。あとに昭和天皇の葬儀の写真が不意に話に上がる。
つまり、授業をしっかり聞きさえすれば、別に勉強したり、質問されるんじゃないか、試験をどうやって切り抜けようといったことを考えて絶えずびくびくする必要はないということに気づいたんだ。(p264)
気づいてはいたが、なかなかね、、、
「物語」とは題名にあるが、シナリオの本なので注意。
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ガルシア=マルケス『物語の作り方』。小説のみならず映画芸術にも深くコミットしていた御仁が脚本家たちとプロットを練り上げていく様子を記録した、貴重な本。「いいな、それ」って思ったアイデアにもすかさず、鋭い意見を飛ばしてくるのが痛快。
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正に「小説の技法」のテキストという言葉が相応しいです。
ざっと目を通しただけですが、とにかく大切な事が述べられすぎてて一度では理解出来ません。繰り返し、繰り返し読み、自分の知識にしていく必要があると思っています。