紙の本
かつて子供だった大人達に捧ぐ短編集
2003/08/23 10:37
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:星落秋風五丈原 - この投稿者のレビュー一覧を見る
疲れている大人達は、何かというと、
「子供っていいよね。羨ましい。いろいろ考えなくて、夢があって」。
なんて言うけれど、とんでもない。見た目ほどお気楽ライフではないし、子供だって、いろいろ苦労はある。
同じ年令の子供達に対する意地から、本心を言えずに危ない目にあったり(「ロープ」)、意地悪な叔母さんがネコババしてしまった大事な品を、親に迷惑をかけずに取戻すために、智恵をしぼっている子もいる(「巣守りたまご」)。また、他の家族にはゴミにしか見えないまつぼっくりに、こだわる理由もちゃんと持っている(「まつぼっくり」)。
他人の気持ちや立場に思い至らなくて、悪意はないけれど、傷つけてしまう。そんな苦い経験もする(「ナツメグ」「夏の朝」)。
私だって、確かにそんな子供時代を過ごしてきたはずだ。けれど、写真やビデオを見て、「こんな事があった」「どこどこへ行った」事実は思い出せても、なかなかその時の心情までは思い出すことはできない。
ましてや今から文章におこせば、どうしても大人の視点から見た書き方になってしまう。
だのになぜ、フィリッパ・ピアスというオトナは、こんなに詳しく子供の心を描けるのだろう? まるで今しがた、自分が体験してきたばかりの事みたいに。ああ、羨ましい! ああ、悔しい!
そうして私は、懐かしさと羨ましさでたまらなくなって、8つのカップケーキをむしゃむしゃと食べるのであった。
紙の本
今読んで欲しい
2002/06/06 18:31
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:郁江 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は 主に夏の話を集めた短編集で、私はその中でも「ロープ」がお気に入りデス。川べりの木から下がったロープを使って向こう岸に飛び降りる遊びを恐いと言えずに苦しむ男の子の物語。誰にでもこういう経験ってありますよね。得に子供は無邪気で残酷だから、自分だけ出来ないなんて口が裂けてもいえないんです。言ったらバカにされるかもしれない…弱虫のレッテルを張られてしまうかもしれない。子供の世界も案外シビアですよね。後になって思えば全然大したコトのない 些細なことで悩んでいたようでも 子供にとって狭い世界の全てだったりします。
子供時代ならではの、孤独と無力感…そしてそれを乗り越えていく子供たちの力強い姿を描いています。
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特に何があるって話じゃない。どっとくるような迫力が無いかわりに、じわっと懐かしい感じがする。少しだけ不思議。少しだけ当たり前。少しだけうらやましい。
ブルーバックの話が一等好きです。おばさんだって昔は子供だった。当然なんだけど、意識しないと忘れてしまうことをピアスは書いている。だから多分、読みながら微笑んでしまったんだろうなあ。
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祖父母の家で過ごす休暇の、ちょっとした居心地悪さ。思い出の品に対する、自分だけの小さなこだわり…。誰もが覚えのある、子供時代の微妙な心の動きを、さわやかに描いた短編集。
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the rope and other stories
ロープ 1976・ナツメグ 2000・夏の朝 2000・
まつぼっくり 2000・スポット 1976・
チェバレン夫人の里帰り2000・巣守りたまご1989・
目をつぶって1980
1976年から2000年に書かれた短篇を集めた本
ロープ 巣守りたまご 目をつぶって が気にいった。
「ロープ」 少年の成長と友情の芽生えに勇気づけられる。
「巣守りたまご」 感じの悪い優しくない伯母から母の形見を取り戻しひとあわふかせてやれてすっきりした。伯母がこういう冷たい人になってしまったのにもいろいろ理由があるんだろうがやはりこういうしっぺ返し(取り戻しただけなんだけど)はすっきりする。
「目をつぶって」 こういうおばあさんがいたら楽しいだろう。聞き手がうまいというのもあるけれど。私もこういうユーモアのあるおばあさんになりたい。
「ナツメグ」 お隣さんの行動は酷いが非難はできない。非常に後味が悪かった。
「チェンバレン夫人~」は タイトルでなんとなく先が読めてしまった。ほんとうにこわいのは生きてる人間なのかもしれない。
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★★★1/2かなあ。
大好きなフィリッパ・ピアス。
やっぱり、この人は子供の寂しい気持ちを
よく理解してるなあって思う。
"Inside Her Head"が1番好き。
タイトルの翻訳もそのまま訳したほうが
雰囲気出たのに。。。
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子ども時代の切なrさと自然に満ちていた日常がよみがえってくるような、お話ばかりでした。押しつけがましくないピアスの子ども達への励ましのメッセージが感じられました。
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どれもこれも面白くてせつなくて、素晴らしかった。
翻訳も申し分ない。
申すところがあるとすれば表紙の絵と装丁くらい…
子どもたちのどちらかと言うと冴えない、心のすみっこのなぜだか忘がたい寂しい思い出とか、憂鬱な夏休みとか、そういうものが、とても愛おしく、自然に描かれてる。
「ロープ」
私も冴えない子どもだったので、よく分かるの、苦手な遊びってある。ロープ遊びなんてやりたくない。できないなんてかっこ悪い。でも、ジンジャーみたいな子がいたら素敵だったな、痛みを共感しあえたんだ。。
そしてティータイムにイチゴのクリーム添え。最高✨
「ナツメグ」
こういう、老人の姿書かせたらやっぱりピアス。隣の家の老人による動物虐待か?でも、もっと切ない。
子どもたちが子犬のメグを呼ぶ声が耐えられず怒りに任せ、子どもに杖を投げてしまったコプリー氏。
父親は逆上したけれど、母親のティロットソン夫人は、奥さんを亡くした老人を気の毒に思い、なんと(ああこれだからイギリスは素敵)ヴィクトリア・ケーキを焼いて届け、気持ちを届けようとするも上手くいかず…
ラストは衝撃だけど、お姉ちゃんのリディアは、とても立派だった…
「夏の朝」
嫌いな訳じゃないんだけど、老人と過ごす3日間は、なかなか子どもにとっては退屈なものです。それにおじいちゃんはどうやらボケてるみたいだし、おばあちゃんがおすすめする、近所の男の子だってあんまり好きにはなれないし。。
でも、お庭にたわわになっている、アーリー・トランスパレットっていう品種のすももは素晴らしい。
そのすももの木の下で、不思議な少女に出会い、つい泥棒と叫んでしまうのだけど…その子は、お隣が幼女にした、難民の子どもだった。ニッキーの振る舞いは、なかなか素敵でした、
「まつぼっくり」
離婚して、家を出ていってしまったお父さん。末っ子のチャーリーにとっては、父との思い出のまつぼっくりは、いつまでも捨てられない大切なもの。まつぼっくりを手にすれば、あの時の父さんと母さんと僕の、幸せな思い出が蘇ってくる…
チャーリーの思いとは違って、父さんはもうそんなこと忘れかけているみたい。ガッカリして泣きながら帰ってきたチャーリーに、姉さんのサンドラは優しかったな。。現代的なお話です。
「スポット」
おばあちゃんの十八番のおはなし。お転婆だった子ども時代のおばあちゃん。犬のスポットをお風呂に入れてやろうとしていたのに、自分が大変な目にあってしまうの…
ブルーバッグって、洗剤なのかなぁ。。
「チェンバレン夫人の里帰り」
これはもうひとつのピアスの短編集「幽霊を見た10の話」に入ってもおかしくなかったかも。
毎年同じ時期に、きっちり2週間の避暑にでかけた、子ども時代のおはなし。語り手は当時の男の子。
お隣のバーディーさん姉妹は、男の子たちが住む家の前の住人、チェンバレン夫人から、猫を譲り受けるほど、なかよくしていたのだ。。
面白いのは、家族に内緒で白ネズミを買っていた姉さんシーリアの存在。
私はこれが1番のお��に入り。
「巣守りたまご」
死んでしまった大好きなお母さんのものを、平気で身につけるような伯母の家にあずけられるウィリアム。学校でも虐められるし、伯母からも厳しくしつけられ、居場所がない。
ところが、鳥小屋だけは居心地が良かった。。
このお話しも好きだなぁ。お父さんが素敵でした。
「目をつぶって」
まあこんな風にでっちあげたお話をすらすらとできるおばあさんにわたしもなりたい(笑)