紙の本
凡才でよかったのかなあ
2003/06/12 17:07
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:安之助 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「きらびやかな衣の下に隠された、天才たちの生身の人間像」−ニュートン、関孝和、ガロワ、ハミルトン、コワレフスカヤ、ラマヌジャン、チューリング、ワイル、ワイルズの9人。サブタイトルに「数学者列伝」とある。著者自身もそうである数学者の足跡を描いたものだ。
しかし足跡といっても彼らの業績を書くことが主眼ではない。偉大な業績はそれとして、彼らの人間くさい面に注目して、数学史には無関係な、例えば失恋などにも、筆を費やしているのだ。もしかしたら、その失恋が大発見の原動力になったのかも知れないし、あるいはブレーキになった可能性もある。
偶然か、宿命なのか、家庭的に恵まれていない人物が多い。それは「数学者のピークは40歳前」といわれていることも、関係するのか。幸福な家庭生活と、研究は両立しないようだ。ちなみに、数学において最高峰の「フィールズ賞」を受賞する年齢も、ほとんどがその前後であり、ひどい言い方をすると60歳以上の数学者は余韻で食っているんだそうだ。もっとも、我々、凡人と比べれば、遙かに高みをいっているが。
どの1人をとっても、それぞれに惹きつけるものがある。だから、比べようがないのだが、あえていえばラマヌジャンの天才ぶりの強烈さに驚愕した。彼はインド人ゆえに、西洋と比べて地理的、文化的においてハンディがあった。「カースト制」という足かせに縛られ、「海を渡ってはならないというバラモンの戒律」がある。戒律を破ると、不浄としてバラモンから追放される。にもかかわらず、あえてイギリスに渡った。敬虔なヒンドゥー教徒のラマヌジャンの苦悩はいかばかりだったろうか。その中で、次々と新公式を発見して、32歳で亡くなった。
付言すると、ミック・ジャガーのプロデュースで話題を呼んだ映画「エニグマ」(原作『暗号機エニグマへの挑戦』新潮文庫刊)の主人公・若き天才数学者トム・ジェリコは、本書にあるアラン・チューリング(イギリス=1912〜1954=検視では自殺と判断された)がモデルである。
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数学の業績だけでなく、天才達の人生、生き様が描かれているのがとても興味深かった。
中でも、「心は孤独な数学者」にも載っているニュートン、ハミルトン、ラマヌジャンの三人を除くと、ソーニャ・コワレフスカヤ、そしてガロアの話が心に残った。
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藤原先生の優しい文章で描かれる、天才数学者の苦悩と成功。フェルマーの定理を証明した、アンドリューワイルズの話が好きです。
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藤原氏が自分で関係者や現地に直接取材して、同業者としての深い理解と微妙な感情が見えるのもいいです。文学的センスもある文章も読みやすい。
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栄光の部分はよくある伝記などに記載されていますが、挫折の部分は含蓄があります。結局、天才となんとかは紙一重ということでしょう。
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Yキャンパスの図書館にて立ち読み。
ラマヌジャンの項はとても刺激的だった。他の人物の伝記も秀逸だったが、初めて知ったインド人天才数学者の独創性に強く魅かれた。業績だけでなく伝記として天才達に焦点をあてる藤原氏の視点も個人的に大変好感がもてる。
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数学のことはわからないけれど、作者の文章が素敵で、一気に読んでしまった。数学者って、ある意味では、新しいものを創り出していく人なのかな、と思わされた。
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文系だからこそ、理系に憧れる。
ニュートン、関孝和、ガロワ、ハミルトン、コワレフスカヤ、ラマヌジャン、チューリング、ワイル、ワイルズ
「博士の愛した数式」の執筆の動機になった本じゃなかったかな
・暦のために日本は数学が必要だった
・宣明暦が822年で2日ずれたため
・日食・月食の予測が良否の決め手
・和算関流
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お馴染み藤原正彦さん著。
天才と呼ばれた数学者達の人生を振り返り、その背景や天才であるが故に経験した孤独や失意を読み解く。
正直、ニュートンと関孝和、ワイルズくらいしか知らなかったけど、楽しんで読めました。
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9人の天才数学者の伝記のようなもの。タイトルは「栄光と挫折」となっているが、記述のほとんどは苦悩や苦悶の類である。まあ、数学者なんてそんなものだと思ってしまえばそれまでだが、ここまで徹底してネガティブな感情を掘り下げた伝記は珍しいかもしれない。
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9人の天才数学者の伝記が1冊にまとまっているお得な内容。
しかし、1冊に9人載せちゃってるから1人1人がちょっと内容が希薄で数学的な偉業は結構サラっと描かれていたのが残念やったけど、どんな天才でも挫折を経験していて、人間的な部分があるってとこを描かれてて面白い。
9人の天才の生涯はどれもドラマティックでそのまま映画になりそうな内容ばっかり!
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数学に詳しくない者でも読める。輝かしい天才たちがどれだけ多くの苦悩を抱えていたのかや、しかしながらどれだけ抜きん出ていたのか、感動しながら読んでしまう。
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うちの親父からお小遣いと一緒に送られた本。
息子のことを天才と思ってるのかな・・・(´ヘ`;)メンボクナイ
自分としては親父の方が才能豊かで、努力家と尊敬してるので
なんか微妙な気分で読んでみました。
この本はニュートン、関孝和、ガロワ、ハミルトン、コワレフスカヤ、ラマヌジャン、チューリング、ワイル、ワイルズの9人の数学者列伝です。
9人とも人類を代表できるほどの頭脳を持ちながら、すべての業績がその時代の常識や戦争、差別などによって正当に評価されたとは言いがたく、
選ばれし者故の栄光が輝かしくあればあるほど、凡人の何倍もの深さの孤独や失意を味わった天才たちでした。
作者は国家の品格なんかを書いた文学者であり、かつ数学者でもある藤原正彦です。
彼自身が数学者であるので天才たちの業績が評価されないことへの不満や苦悶を十分理解し、
彼自身が文学者であるために天才たちのその時の気持ちを分かりやすく読者に伝えてくれていると思います。
そのため文理に関係なく読めるように出来上がってます。
9人のうち特に面白かったのは関孝和とコワレフスカヤ。
日本人とロシア人の女性です。
関孝和は湯川秀樹に並ぶ日本の誇りだと思っているし、今自分が大学で習っている以上の数学を江戸時代で鎖国の中にいる日本人が独学で理解し西洋数学を追い越した、っていうことにただただ驚くことしかできません。
コワレフスカヤはこの本で初めて知ったんだけど、彼女も優れた数学者兼文学者でした。ちなみに彼女を目にした男性は例外なく彼女に恋をしたってほどの美女でもあるらしいw一度こういう女性に会ってみたいもんですw
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あとがきに「登場する9人を自分が数学を始めてから神様のように思っていた」とあるが、1953年生まれのワイルズを1943年生まれの著者がそう思うのには無理があるのではないだろうか。主観だけの本。
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(「BOOK」データベースより)
ニュートン、関孝和、ガロワ、ハミルトン、コワレフスカヤ、ラマヌジャン、チューリング、ワイル、ワイルズ。いずれおとらず、天才という呼称をほしいままにした九人の数学者たち。が、選ばれし者ゆえの栄光が輝かしくあればあるほど、凡人の何倍もの深さの孤独や失意に、彼らは苦悶していたのではなかったか。同業ならではの深い理解で綴る錚々たる列伝。