紙の本
2002年最高の一冊
2002/07/15 16:12
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:3307 - この投稿者のレビュー一覧を見る
★5つになっていますが、これは上限のせい。制限がなければ★10はつけます。最高の倍なんて、「無限の向こう側」みたいですが、これが実感です。だから、著者の坂木さんを「2002年デビューの作家さんの中で、最高の中の一人」と安心して挙げることができます。本書を読んでいる間、痛みを感じましたがそれでも大満足です。
満足した要素は多々ありますが、まずは装丁から。ルネ=マグリットを一瞬思い出す青空は、夕暮れ間近。下から照らされて金色に輝く雲は黄金の滝のよう。書影確認時から好印象だったのですが、手にしてさらに好きになりました。「四六判フランス装」の感触の良さのためです。これは、本書の世界観を、触感レベルに落とし込んだ優れもの。
本書は、エラリー・クイーンや有栖川有栖さんのように、作中にも登場する「坂木司」さんの視点で物語がつづられます。この坂木さんはもちろんワトソン役。「ひきこもりの名探偵」は、この坂木さんと相互に依存しているため、文字通りの二人三脚で物語が展開されます。このユニークなコンビの関係も、見所の一つです。
巻末の著者インタビューによると、北村薫さんの『六の宮の姫君』に強い影響を受けたとのこと。読者の私にとっては北村薫さん・加納朋子さん・菅浩江さんの世界と重ねるのが自然に思われました。
私は、北村薫さんの私シリーズ、や加納朋子さんの『ななつのこ』『魔法飛行』に『ささらさや』、菅浩江さんの『永遠の森』に愛着を持っていますが、ここに本書『青空の卵』を並べてもまったく遜色がありません。デビュー作でこれほど力を持った作品が生まれることは、もはや業界の常識なのでしょうか? 北村さんの『空飛ぶ馬』や、加納さんの『ななつのこ』の例がありますが、それでも奇跡を目撃した思いです。
出だしで好きになり、「こういうの読みたかった!」と大喜びして読み進み、徐々にボディーブローを受けて言葉を失っていく。そんな読書体験でした。本書を通じて受けた痛みは、この物語に「友情」「恋愛」「親子」の問題が織り込まれていることに原因があります。もちろん、物語進行を妨げる野暮な書き方はされていませんが。それでも、読者に訴えかける力は強いです。
その力は作品の底でうねり続ける、「人との関係で負った傷は、人との関係の中でこそ癒すんだ」といった祈りから発しているのでしょう。かつて傷を負った人と、今傷を癒している人にお勧めします。
紙の本
どこまでも広がる青い空
2002/08/29 19:39
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投稿者:AK2 - この投稿者のレビュー一覧を見る
初めて本書と出会った時、「ひきこもり」という言葉のイメージが強すぎて、
手に取ることをためらっていました。
けれども、読み始めるとすぐにそんな迷いの雲は消えてゆき、読み終えて残る
どこまでも透き通るような青い空。
加納朋子さんの「ななつのこ」「魔法飛行」、北村薫さんの「空飛ぶ馬」から始まる
〈私〉シリーズ、有栖川有栖さんの「月光ゲーム」などなどと出会えた時の
切ないくらいの幸せを感じることが出来ました。
ほんの少しだけ他の多くの人とは違う。
それだけでどれほど哀しく、ひとりぼっちに感じてしまうことでしょう。
そのせいで、人に手を差し伸べることも、差し伸べられることにも臆病になってしまう
優しくて純粋な人たち。
「夏の終わりの三重奏」「秋の足音」「冬の贈り物」「春の子供」と、四季が巡る中で
出会う事件の「謎」がひとつ解かれるごとに、彼らの固く凍りついた心が柔らかく
とけてゆき、彼らの心に青空が広がってゆきます。
もちろん読者の心にも。
大切な大切な宝物のような一冊です。
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初めての作家の作品です。
独特の雰囲気をかもし出している作品で、外資系の保険会社に勤める坂木司は、滅多なことでは外に出ない引きこもりの探偵、鳥井真一の助手をして、日常の謎を解くというスタイルの作品です。この2人の性格に異存ずる部分が大きく、それが作品の特徴でもありますが、5つの作品が連作短編になっているのも特徴です。
登場人物が次の作品にも登場してきて、次第に登場人物が増えていく感じです。
このあたりも、作者の意図があると言うことで、この作品は前から順番に読まれて、最後の作者インタビューは最後の最後にとっておきましょう(^^)
いくつかの重要なテーマもあって、それ自体をもっと掘り下げても面白かったかなって思いましたが、それすらも、あまり突っ込むことなく、さらりと感じてしまうのが、この作品の雰囲気のように思いました。
派手な殺人もなく、トリックと言うものもなく(謎解きはありますが、あまり謎解きに関してコメントするのも野暮かも)、この作品も、雰囲気を楽しむ作品かもしれません。
2004.4.28
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いわゆる『普通の会社員』坂木とひきこもり探偵の鳥井が一緒に日常の小さな事件をといていくお話。ミステリーじゃなくて、『人間の心』をめぐって書かれていて、ふと考えさせられる作品。
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友人から面白いと聞いていたので読んでみました。
引きこもりの名探偵というのが、新鮮に感じました。
解かれる謎の多くも、日常の謎で、殺人とかは出てきません。代わりに、人の優しさとかそういったものに触れている作品だと思います。
本質的に、登場する人物が皆良い人なんです。
引きこもりだったり、男性恐怖症だったり、視覚障害を抱えていたりするけれど、とても良い人ばかりで。
だからこそ逆に、「自分」というものを見つめなおしたくなるのかも。
自分は人に優しく出来ているのか。
主人公の坂木司と、探偵役となる引きこもりの鳥井真一との関係も友情というにはちょっと複雑な部分を持っています。
鳥井にとって、坂木は世界で唯一自分を必要としてくれた人間で、何よりも最優先されるべき人物。坂木が泣けば悲しくて、自分も涙を流してしまう。そして、坂木の前ではまるで子どものように振舞う時がある。
坂木は、その鳥井を支えているようで、実は鳥井に支えられている部分がある。共依存の関係に近いのかな?
坂木と鳥井は、友人であり親子であり。
でも、親子ではないから、互いの存在がいつ失われてしまうのか常に不安であったりもする。
いっそ恋人になってしまった方がお互い楽になるんじゃないかな、とか思ったりしました。「親友」という関係でいるから常にお互い不安になるんじゃないのかなあ。読みながら何度も、「いっそその枠を壊してしまえ!」と思ってしまいました(汗)
ミステリーというよりは、人間関係の方に重点が置かれていると思います。
登場する人物も個性的で面白いです。木村のおじいさんが好きv
続編があるようなので、二人の関係がこれからどう変化していくのか、興味深いです。
著者は覆面作家らしいんですけど、女性……なのかな?
キャラクターの設定とかからは女性という感じがしたんですけど、でも対談を読むと男性なのかな、という気もしてくる。うーん。
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ひきこもり探偵・鳥井と坂木君のおはなしです。奇麗事だらけのお話しだけど、全然いやみじゃないです。素敵なお話です。
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サイン入り!に惹かれて買いました。主人公に関わった人達が次の話にも出てきてなかなか楽しいです。自分も人に優しくありたい、と思います。
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時折見せる不安げな鳥井の姿に胸が締め付けられます。そしてお決まりの食卓を囲むシーンは、人の温かさを感じますね。心の繋がりというか。いいですよね、ああいうの。
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家族から受けた仕打ちと少年時代のいじめから引きこもり気味な鳥井と、そんな彼を引っ張り出そうとする唯一無二の親友坂木の話。坂木が世間で身近に起こる難問奇問を、頭の切れる鳥井の所へ持ち込み、それをにわか探偵となってバッサバッサと解決していく短編集。3部作1冊目。バッサバッサと解決する所がちょっと安易過ぎる気がするが、少しずつ変化を見せる鳥井は面白い。尊大で口の悪い所が魅力と表現される鳥井だが、あまりに度を越した口の悪さがたまに引っかかる。2部以降の変化に期待したい。
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坂木も鳥井も私に似てる部分がある。だから、頑張れそうな気がします。人との繋がりは大切、改めてそう思った。
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ひきこもり探偵シリーズ1。
自他共に認めるひきこもりの鳥井さんが坂木の持ってきた謎を嫌々ながらも解決してくれる上に、いつも後味が暖かい雰囲気で癒されマスvv
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引きこもり探偵の第一弾。作者と同じ名前の主人公"坂木 司"と引きこもりの"鳥井"が謎解きを繰り広げるお話。どうやら私は、ミステリーが好きと言いながらも人情ものに弱いようです...。
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初坂木司でデビュー作なのかな?
引きこもり探偵と称される鳥井探偵と僕(主人公?)坂木が日常の謎を解くほのぼのミステリ。なイメージ。
坂木と鳥井の距離感がっ…(不純)。
読後思わずほんわかした気持ちになってしまいます。
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癒されます。
お腹が空きます。
この本を見ながらお菓子を食べてしまう率、99%(笑)
希少価値が高いです。
是非ハードカバーでの購入を勧めたい本です。
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同じ学部の友人に借りて読みました。その前に別の友人にも勧められていたので、かなり期待して読んでしまったのがいけなかったかも。…期待が大きすぎて、拍子抜けした感じがありました。でもまた間をあけて読んだらまた印象が変わるかもな〜と思っています。