紙の本
ヒーロー、ビル
2003/06/25 13:54
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ピエロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
高層ビル建築現場で続く盗難事件、はじめはハンマーなど小さな工具だったのが、ついにはローダーまで盗まれる。調査のためにレンガ職人に変装して工事現場に潜入するビル。それを待っていたかのように人身事故がおき、ついには殺人まで…。リディア&ビルのシリーズ4作目です。
今回の語り手はビル。白人、中年、趣味はピアノと、書き出してみるとありきたりになってしまいますが、このビル、男の私が見て(読んで)もとてもカッコいいんです。優しく繊細でほどほどにタフ(これまたありきたりだ)。リディアはこの優しさが男性優位主義的に見え、パートナーとして見てもらえないと不満のようで、そこにつけこまれて軽くあしらわれたりもするけれど、これもご愛敬。趣味のピアノも、単なるキャラクターの特徴付けに終わっておらず、なぜピアノを弾くのか、弾かずにいられないのかが、シリーズを通して読むと切々と伝わってきます。
心に傷を持ちながら、気は優しくて力持ち、典型的なヒーロー像にピタリとはまったビルと、中国系のリディア、早くいっしょになってもらいたいような気もするのですが、つかず離れず今のままのいい関係をくずさないまま、このシリーズが進んでいくといいな。ビルにはちょっとかわいそうだけど。
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リディア&ビルシリーズ第4作。
今度はレンガ工になって潜入捜査です。
やっぱりビルはかっこいいなぁ。好感度大です。
シリーズ中、本作が一番のお気に入りです。
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'08.10.5 天牛@100
やっと読了
事件の展開がなかなかなくてちょっとつまらない。
もうこの作者の本はやめにするかな。
あと一冊あるわ。
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本書の語り手はビル。
ビルがメインだと、どうしても警備員とか
レンガ工とか、「男」を強調する設定が多くて
それだけはどうもしっくりこない。
リディアとビルのコンビは相変わらず
いいのだけれど。
事件はとても狭い範囲で起こり、
いわゆる世の中を震撼させるような
壮大な物語ではない。
登場人物の心の動きが事件と事件の間で流れて、
それが小説としての面白みを加えるのに
役立っているみたい。
小説内で描かれているビルの頭の中に流れるメロディーや
建設現場のひんやりとした空気が好き。
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ビルとリディアのシリーズの四作目だそう。僕は以前『冬そして夜』を読んでことがあり、今回が二度目。とても良質のハードボイルドミステリ。人物がしっかりと描けているし、社会的な視点もあり、ユーモアもあって、読み終えて「ああ、いいもの読んだなぁ」という気分になれる。シリーズの他の作品も読んでいきたいと思います。
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ビルが主人公の二作目。
その一作目よりさらに男っぽい職場に潜入。
だが、元警官やマフィアがからんできて、
似たり寄ったり?
リディアにも相変わらず危ういところを、
助けてもらってるし。
レンガ工のディメイオがいい味を出していた。
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リディアとビルのシリーズ4作目。
またしても家族です。
今回は犯人も家族との関係に悩んでいます。
というかそれが動機。
近い存在だけに本当に難しいですね。
この作者にとって家族というのは1つの大きなテーマなのでしょうか。
ビルは唯一家族を持たない特異な存在で、
リディアと交互に主役を務めるこのシリーズの
ハードボイルド方面担当として認識していますが、
今回ちょっと行き過ぎた感がありました。
「勇気と無謀は違うんだぞー!」という感じでしょうか。
まぁ何でもお見通しのオールマイティではなく、
「失敗だってするさ人間だもの。」というビルが見れました。
今後このシリーズが進む中で、
対照的なビルとリディアの立場や心情が、
お互いを通してどう変化していくのか楽しみになってきました。
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ニューヨークはマンハッタンの高層ビル建築現場。ここで工具が無くなる、クレーン係が失踪するなど何やら怪しいことが起きているらしい、ということで、探偵事務所に雇われた、私立探偵ビル・スミスがレンガ工として工事現場に潜入する。
ビル建設現場で、請負を取るために安い金額で受ける元請け。さらにその子請け業者は職人たちの仕事を確保し生活を成り立たせねば、と思案する。そこで行われる安普請・・ マンハッタンゆえ、黒人、イタリア人、などなど人種的サークル問題もからむ。そんな都市の空気が充満する。
探偵のビル・スミスのキャラクターが魅力的。9才まで南部で育ちその後は、軍に勤める父に伴い熱帯の地で過ごし、専門学校で建築を学び、建設現場で働いた経験がある。クラシックピアノを弾く。ベトナム戦争では海軍で南シナ海へ。18年前に3年を待たずに妻と離婚。相棒は中国人女性のリディア・チン。真面目で素直なビルを勢いのあるチンがフォロー。
このコンビのは4作目らしいが、初めて読んだ。
早川海外ミステリハンドブック2015:時代を作る・作った 新世代ミステリ
1997発表
2002.6.28初版 図書館
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ビル&リディアシリーズ4作目。
今回はビルの事件。
あれ~、前作でもう少し親密な感じになっていた気がするだけれど、また何とも微妙な距離感の二人になっている。
ビルの知人であり、引退警官で探偵業を営むチャックからの再委託案件。
とある建設現場で物資がくすねられる事案が続き、挙句の果てに重機までが盗難に遭う。
監視を強化したことで事態は収まったと思いきや、今度は作業員が行方不明に。
怪しいと睨んでいる、作業員の中に紛れ込む好ましからざる人物ジョー・ロメオ、こいつの尻尾を掴むためにビルがレンガ工として現場に潜入する。
ビルとリディア各々が独立性を持った調査を進める中、ちょっとしたすれ違いをしつつ、結局は息の合ったコンビプレーをするところが読みどころ。
また、終盤リディアがビルに、
「ちょっと飽きてきたんだけど。女は引っ込んでろ、ビル・スミスはタフだぞっていう、マッチョな態度が。建設現場で働き始めたとたんよ。そんなんじゃなかったのに。」
と相棒としての尊厳を求めて声を荒げる場面が印象的。
ビルは真に反省し、リディアは微笑む。
清々しい解決。
事件の方は相変わらずの込み入り具合で、絡まり合った糸をほぐしきった後の姿に”え、そんな複雑なこと起こります?”ってなるけど、まぁその過程が楽しいのでよし。
次は『苦い祝宴』。
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「リディア・チン&ビル・スミス」シリーズ3冊目。
シリーズとしては4作目だが、その前の「新生の街」がなかなか手に入らないので、先に出てきたこの本に行ってみる。
というわけで今度もビルが語り手のお話。
マンハッタンの建設現場で工具が頻繁に消え、さらにはクレーンの操作係が失踪する。疑わしい班長の素行調査を請け負ったビルがレンガ工として覆面捜査を開始、というところから始まる物語。
事故、死体、工事の妨害、ノミ行為、図面と違う安物の資材、借金、強請。建築会社の主の親子に開発会社の女社長、現場にちょっかいを出していそうな街の悪党にそいつと幼馴染だった調査の依頼主…。
色んなことが起き、色んな登場人物がいて、相変わらず話の展開は複雑。本人が『わたしは今、いったい何の調査に携わっているのだろう』と呟くくらいだからね。
解けてしまえばそこまでややこしくすることあったのという気もする筋書きだが、いつの間にやら依頼とは関係なく『わたしの事件』にしてしまい危ない目にあうビルの漢気に彼を支えるリディアとのコンビネーションを楽しむ話と思えば、どこへ向かうか分からない調査も、まあいいか。
二人の会話は変わらず洗練されたやり取りでいつまでも読んでいたいテンポ良さ。リディアの心の内やいい女ぶりが際立ち、最初の巻の感想に「もう少し分別があると良い」と書いたがごめんなさいねというところ。
加えて今作では現場の同僚マイク・ディメイオがいい味。レンガ積みの仕事ぶりに職人らしい人柄が現われ、あの凍える静寂をぶち壊すなんて、やるよねぇ。