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紙の本

忘れやすい夢

2002/06/30 18:00

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る


 大澤氏が本書の最終節で、大澤社会学の「方法」ともいうべきメタレベルでの言説分析(というより諸言説の編集)と論理的逆説の摘出、つまり社会的事象や出来事をめぐる原理的で抽象的な考察を駆使して到達した具体的な実践(9.11テロに対してなされなければならなかったこと)が「アフガニスタンへの徹底した大規模な(経済)援助」、すなわち抗争しあうすべてのグループへの無差別絶対で無償の贈与であった。

 いわく、イスラームの正義の原点にあるのは交換における公正の感覚なのだが、それはキリスト教‐資本主義においても同断である。しかし、前者が交換を価値体系(等価性を評価する体系)の中心部においてのみ活用するのに対して、後者はその境界部において交換を活用し、このことによって剰余価値を発生させる。両者の違いは、ユダヤ‐キリスト教が交換の原理に反する原罪の観念を教義の中心に据えていたことだ。原罪とは交換に先行する返済義務のことで、原罪の観念は交換の関係を搾取の関係へと質的に転換させる潜勢力をもっていた。

 まさにこの点においてイスラーム原理主義(実はそれ自身、資本主義の産物でありその補完物でしかない)は資本主義と対立するのだが、それが等価性の原理への忠実な回帰をめざすものである限り不徹底である。イスラームの教義において神の人間への最初の贈与が交換関係に起因する義務に規定されない無条件なものであったこと、そして喜捨とはこの最初の神の贈与を反復するものであると解釈できることを踏まえるならば、イスラームの原理を自己超過的に徹底し、搾取の関係とは反対側で、つまり贈与の側で等価的な交換関係を否定に導いていくべきだったのだ。

 ここで、標準的な等価交換に対して原罪の観念とはシンメトリカルな位置を占めるものとして大澤氏がもちだすのが「本源的な恥の観念」である。つまり「誰もが、単に存在しているということだけで、自らにとってポジティヴな何かを(他者に)してもらえる権利を有している」という交換に先行する原権利であり、「何ら善いことを行っていないのに、初めから赦されている」という観念である。

《われわれは、「普遍性」が不可能であるということ、それは偽装的なものでしかないということ、このことを何度も強調してきた。だが、実は、もし赦しが、ここに論じたような、私と他者のアイデンティティの根本的な変容を必然的に伴うとするならば、その赦しの瞬間にのみ、奇跡的に〈普遍性〉が到来する。私と他者は、何かであることにおいては一致してはいない。私と他者が共通にそれであるところの「普遍的な同一性」はどこにもない。両者がともに認める善や正義を探ろうとしても、見つかるまい。両者に共通しているのは、どちらも変容しうるということ、どちらも「何かであること」を根本から否定し、無化することができるということである。こうした徹底した否定性において、両者は共通しているのだ。》

 ──大澤氏は「あとがき」で、「あの出来事」は忘れやすい夢のようなもので、忘れないための最も効果的な方法はそれをできるだけ早く言葉にしてしまうことだと書いている。本書の大半が費やされた論理的、抽象的な考察(というより諸言説の編集)にはいつものスリリングさや華麗さがあまり感じられず、どこか吃音めいたところがあって、それ自体忘れやすい夢のような印象しか残らず、最終節での「実践的」な議論とのつながりもぎくしゃくしている。むしろ最後の文章から叙述を始めればよかったのではないかと思うが、それは一つの夢を見終えたばかりの読者の仕事なのかもしれない。

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2008/06/16 02:13

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2011/06/12 07:18

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2015/05/04 23:02

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