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SFだ。バカンスを楽しむために作られた人ではないAIのすむ世界という未来な感じ、人がこなくなって千年経つ世界というもの悲しく虚しい感じ、散りばめられた性描写と殺戮のスパイス程度のエロチシズム。大人のSFの王道だと思う。著者も「新味を出そう」と思っていないと書いている。なのに古典ではないのだ。古典的ではあるかも知れないが古典ではない。こういうのがないと亜流が本流になってしまう。だから本著は本流なのだ。
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S-Fマガジン600号、実は個人的には『雪風』第3部スタートよりもさらに気になっているものがある。これの第2部もスタート。
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仮想現実のリゾート空間「数値海岸」は南欧の港町の夏、懐かしく素朴な生活を体験できるという設定の世界だ。それぞれ固有の役割を与えられた大勢のAIが暮らしている。
AIの「父」や「妹」など空白にしてある役割をゲストである外の人間が購入し、世界にとけこんでヴァカンスを楽しむ仕組み。
しかし、そのゲストたちが一人も来なくなって千年の時が流れ、AIだけで変わらぬ暮らしを続けていた。
しかし、ある朝不気味な蜘蛛のプログラムが街を侵食していき、あっという間に全てを崩壊させてしまう。その目的は?
夏に読みたい1冊(略してナツイチ)。
3部作(予定)の1冊目ということで、この段階では解決されない謎が多い。あんまり難しいこと考えず、この美しく残酷でちょっと懐かしい感じの世界を楽しく味わった。
今後この謎の攻撃の目的や視体のひみつが明らかになってくんだろう。
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冷たく・残酷で・グロテスクで・官能的で・そしてどこか懐かしい。そんな、あまりにも綺麗な物語が読みたいのなら、おススメです。
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待ちに待った、飛さんの最新作。
繊細で美しい文体と、こちらの固定観念を打ち砕く力強い表現に、ぐいぐいと引き込まれる。
たくさんの謎を吐き出しながら展開するのに、謎解きよりも登場人物たちの(あるいは人間以上に人間らしい)行動や感情に関心が引っ張られた。
実は謎に首を傾げたのは読了後しばらく経ってから。
今後の作品が、本当に楽しみ。
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文庫本を買おうと思って探しに行ったら、初版・サイン本と出会ってしまって購入したというエピソードを持つ本。アンドロイドは好きでもSFは苦手な私ですが、この本は最後まで一気に読めました。それは内容に寄るものというよりは、文章が美しく、また読みやすかったため。内容に関しては大いなる一歩といった感触を得ました。旅のはじまりの前に、主人公は、失わなければならなかった。そんな気がしました。美しく、グロテスクな、廃園の最後のものがたり。
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ピクセルが官能素と呼ばれていること、これがこの小説を一番端的に表している。プログラム内部データへのアクセス=官能的(根源的快の)接触。
ハック・クラック行為が詩的・叙情的なビジュアルで描かれ、まずその描写で一気に惹きこまれた。肉体的境界を透過する<鳴き砂>の交歓、バグを補修する存在を<蜘蛛>として知覚する住人たち。ガラス細工のコンパイラ<視体>(これがまた夏の風景によくなじむ)。その中でも地ならし屋、<鯨と天使>の描写は特に惹き込まれるものがあった。
「アイデンティティ境界を解く」ことでAIたちが文字通り一つになって交わる姿が巧みな筆致でなんども描写され鮮烈に記憶に残る(性的な交わりだけではない――互いの境界を超えた「苦痛の交わり」もその筆致で繰り返し繰り返し描写される)。
肉体を持たないAIだからこそもっとも深い場所で根源的な交歓を果たせるという事実に、逆説的なおかしみと不可侵の美しさを見る。
逆説的といえば、自身をAIと認知しながらもロールを外れられず、それでもしっかりアイデンティファイしているAIたちの存在も面白い。
物語のほうはと言えば、「完成された世界」に終わりを運ぶものの正体といえば当然……とメタ的な視点で見ていたら、予想を外す展開でびっくり。あの無慈悲さを持つランゴーニが斥候ですらなかったとは。
とにかく、次巻が楽しみ。
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AIの暮らす場所・夏の区画。ある日そこに謎の存在から攻撃が及んだ。AIと謎の存在による戦争を描いた作品。
グラスと呼ばれる武器を駆使するあたりでは安いバトルだと思っていたけど違いました。まあ、AI達の殺し方や過去の出来事にかんする記憶の描写は残酷すぎるとおもいましたが、神話のような話でした
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1000年間も途絶した仮想空間での,AI達の死闘という設定が面白く,先が気になります。戦闘描写や世界観など,設定がなんというか,飛びぬけているように感じました
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御茶の水のファミレスでほぼ終日集中して読了。外は爽やかな夏晴れだったのですが、本の中は実にクレイジー。
AIの住む完璧にプログラミングされた世界での仮想的な戦い・でしかないはずなのに、あまりに超絶なレベルの描写力に一気に読まされます。最初から飛ばしてるので途中で休めない。評判通りの凄惨さにこちらの神経も疲弊しますが、この危うさに抗えない。作者曰く表現としての「苦痛」は読み手の心を揺さぶるのだそうで、悪趣味というよりは確信犯的なのですが、それにしても何を読んでるのか分からなくなる感覚。
夏の区界・大途絶・数値海岸・ドリフトグラス・・・イベントアイテムのネーミングに目眩する。疲れました。超傑作です。
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作者が「ノート」で書いている通り「清新で残酷で美しい」小説。こういう作品に(たまに)出会えるからSFはやめられない。
ある仮想現実が立ち上がった時、(実際には一度もそのプログラムは実行されなかった)歴史を持つ町に(実際には−以下同文)過去を持つ人間として創造されたAI達の一夜の戦いを、グロテスクに、かつ、透明に描く。
「わたし」とは「記憶」だ。埋め込まれた記憶に呪縛されるAIと現実の人間とは本質的に変わらないと言える。わたしのアイデンティティーを支えるもののいかに脆弱なことか。しかしまた、その頼りないところから引き出される苦痛や喜びはまぎれもなく現実のものとしてわたしにある。
わたしにとって優れたSFとは、本作のように人間の「意識」というものについて新しい光を投げかけてくれるものだ。また、解説者がいう通り、物語を読むという行為について深く胸をえぐるように考えさせられる小説でもある。仮想現実で自らのおぞましい欲望を解放する「ゲスト」とはとりもなおさず読者なのであり、それは他者の苦痛と死を快楽とする者なのだ。こんな複雑な読後感を持ったのは久しぶりだ。
★が一つ足りないのはところどころ苦手なライトノベルを読んでいるような感じになるところがあって(文体や話の展開の仕方)ちょっと気になったので。でも傑作。シリーズ次作もすぐ読みたい。
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いっきに読んでしまった。
既読の『象られた力』である程度予想はしていたが、やはり残酷。
しかし、残酷ながらも、とても美しい物語でした。
AIたちはプログラミングされてはいるものの、意思を持っている。
そして徐々に暴かれて行く裏のプログラム。
あまり小説の映像化は賛成ではないのだが、この作品は映像として見てみたいと思ってしまった。
蜘蛛の描写など、どうなるか興味津々である。
早くラギット・ガールも読まなければ。
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人が訪れなくなった大途絶から1000年、ネット上の仮想リゾート「数値海岸」で、それぞれの「設定」を与えられて、毎日同じロールを繰り返すAI達に突如として「蜘蛛」が襲いかかってくる。
彼らに対抗するために、一か所に集められたAI達は、不思議な力を秘める「ガラスアイ」を武器に立ち向かうが・・。
とても精緻に組み上げられたバーチャル世界は、「生身」の読者にはなかなか理解しずらい部分もある。が、その「仮想的」な感覚を文体として表現する作者の想像力には舌を巻く。
この「ぶっ飛び感」はSF小説ならではだと思う。
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面白い。
一口にSFと言っても色々なのがあるが、この作品はわたしの好みにぴったり。
キャラクターに割り当てられた役割があるとか、倒錯気味の恋愛感情、そもそものベースに複雑な男女関係が織り込んである設定。
どれも好きだ。
この作品の前半に散りばめられた伏線は、ほぼ全て回収されたように感じるけど、続編では天使について詳しく分かるのかな。
楽しみだ。
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<永遠の夏休み>と題された仮想リゾートのAIたち…でまったりした始まりからは想像つかない後半。早く読みたいのと読みたくないのとでぞわりとした。人間の嗜虐性と悪趣味を満たすための苦痛に満ちた区界…あとがきに「残酷であること、美しくあることだけは心がけたつもりだ。」とあるけど全くその通り。次作も読みましょう…