紙の本
主人公・東堂はさらに加速する
2021/05/07 22:25
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公・東堂はさらに加速する、横光利一について、歌集「白猫」で有名な明石海人について、「特殊部落」とよばれ当時ひどい差別を受けてきた地区について、そしてどうしようもない上官について、語りまくる
紙の本
「歴史の証言」小説か?
2004/03/16 21:10
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投稿者:けんいち - この投稿者のレビュー一覧を見る
3巻に入っても、『神聖喜劇』はとまらない。
百「歌」繚乱、とでも評すべきほどに短歌がちりばめられたかと思えば、『中央公論』の歴史的価値(危険度)の示されるエピソード、作家で言えば横光利一から武田麟太郎まで、時、あたかも戦時下かと思わせるほどに、歴史の「におい」が伝わってくる。そしてもちろん、いたるところで規律文書が参照・引用され、東堂は今日も戦い続ける。
そして、女性をめぐる挿話や軍隊の内部事情といった主題的に(?)扱われることに限らず、本書には、「小説」と呼び「絵空事」にしてはもったいないほどの、「歴史」が書き込まれている。ほとんど、「歴史の証言」にさえ見えてくる。ここで問題なのは、「言葉」に、そのような力があったのだという、忘れがちな「事件」に、この小説らしからぬ小説が気づかせてくれるのだ、ということである。
新作の『深淵』への期待と共に、残り2巻への興味は尽きない。
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引用されている文章、短歌、漢詩など西洋、東洋問わず幅広い。
作者の教養に感嘆せざるを得ない。
引用文はいずれも難解だが続編も読まずにはいられない。
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徐々に雲行きが怪しくなってきた。冬木の過去、大前田の謎の行為、軍隊の不条理に抗う東堂の運命……続刊の展開が楽しみ。
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社会階層、ひいては社会構造を見る眼差し、職業についての考え方、同年兵や上級者との人間関係が描かれ、これまでの2冊とはまた違う読み応えがあった。どうなるのだろうか?
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大船越への遠出における「ぼたもち事件」と雑誌買い。「厳原閥」への嫌悪感と比例して、素朴だが根の真っ直ぐな新兵たちへの仲間意識を育てていく東堂。だが冬木は「大根の菜軍事機密問題」以降、むしろ東堂との接触を避けている節がある。そこに持ち上がる剣鞘すり替え事件で、冬木に嫌疑がかけられているらしいことが明らかになる。
感想は最終巻で。
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厳原閥の汚らしさが垣間見える。280・雨森伯陽『たはれくさ』もろこしの詩と日本の歌、468・「倉庫と事務室を使い分けの二足のわらじ」Catch-22的な尋問。
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この3巻目にきて作品の印象が私の中でかなり変わってきた。簡単に感想を書ける作品ではないけれど、4巻目でその印象の変化を確認出来るかもしれない。個人的にこの作品から感じるイメージはトーマス・マンの「魔の山」にとても近い。
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夏こそずっしりと重い大作を読もうと考えて、分厚目の文庫本5巻に渡る超大作の本書をセレクト。それこそ、日本近代文学の金字塔にあたる作品として学生時代から認識はしていたものの、相当に難解な作品なのだろうと思い込んでいた。
確かに平易な作品であるとは言い難いが、実際に読み進めてみるとそれを超える面白さに釘付けになってしまい、貪るように5巻を読了してしまった。
本書は著者自らの従軍体験に基づき、日本陸軍の二等兵である主人公が送る数ヶ月間の陸軍訓練が舞台となる。主人公の東堂太郎は、超人的な記憶力を持ち、日本陸軍の不条理に孤独な戦いを挑んでいく。
これは日本陸軍に限った話ではないが、軍隊という組織が国家権力によって運営されている以上、その全ての営みには何かしらの法的文書が存在している。その点で極めて官僚的な組織という一面を軍隊は持っており、実際の訓練における一挙一同に、ある種バカらしいほどの理屈付けがなされているという点でのナンセンスさに溢れている。その点で、主人公の超人的な記憶力は、このあらゆる法的文書をすらすらと暗誦し、ときには不条理なトラブルを解決するためにその記憶力で持って立ち向かっていく。
そして、本書の面白さを際立てせているのは、人物造形の深みのレベルの高さである。そもそも新兵訓練のための招集ということで、集められた二等兵は日本社会の縮図といえるほどに、学歴や身分、職業などが千差万別になっている。突出しているのは、新兵に対して残忍なしごきを与える主人公の班の班長の造形である。ステレオタイプ的な残忍さだけを持つ人間として描くのではなく、中国大陸で残忍な虐殺に関与してきたという過去や、訓練生活の中でのユーモアなど、非常に多面的な人間として描かれることで、決して物語の先行きを安易には予測させないような展開が待っている。
全く予想だにしなかった結末も含めて、ひたすら物語の巨大さに圧倒された全5巻であった。