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高い評価の役に立ったレビュー
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2003/07/17 20:41
あんまり、このミスじゃあ騒がれなかったけど、bk-1の書評氏は褒めてたんだ、えーい、ついでに私だって言うぞ、この本は警察小説の『ハイペリオン』だって
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
世の中には、なぜかあまり騒がれない傑作というものがある。このミスにも、文ベスにも上位に名を連ねることのなかった、それでも私はこれこそが、実は昨年の頂点ではないか、と密かに確信していたミステリ。最初から書いておくけれど、この小説は柴田よしきの最高傑作であるだけでなく2002年の、いや近年の日本の警察小説の頂点に立つ小説である。「化けた」といったら失礼だろう、今までもかなりレベルの高い作品を書いている柴田だ。しかし、あきらかに波があった。それが、今回の小説、最初から最後まで緊張の意図が、恐るべき強さで持続する。脱帽である。
小説は1995年と、1980年代を自在に移動する。必ずしも時系列に沿った動きではないけれど、違和感は全く無い。混乱も無い。小説は、1989年の早朝。小田急線の線路に横たわり始発電車の通過を待つ青年が、男に救われるところから始まる。その、後に山内練と名乗る男の人生が主題となる。
しかし話はそのまま1995年、部下で24歳になる宮島静香を自宅に送る麻生係長の帰宅風景へ移る。新宿のホテルの32階、東日本連合会春日組の幹部韮崎誠一が殺された現場。本来であれば、子分たちに身を守られていたはずの韮崎は、何故か浴室で裸のまま喉を鋭利な刃物で切り裂かれて死んでいた。捜査1課の切れ者の志木は、事件を担当するが、彼の行く手に立ちふさがるのが暴力団担当で、志木の大学時代からの先輩でもある捜査4課の及川だった。
及川は、被害者の身元から、事件は暴力団絡みと考え、普通の殺人事件として捜査をする志木の妨害をする。韮崎の事件の背後にあるものは何か。彼を取り巻く華やかな女たち。彼女たちは一様に、誠一を愛していたと告白するが。元タレントや、女医といった美女達に愛された暴力団員の真実の姿。
妻の玲子から言い出された離婚届に判を押した志木。彼が関わった過去の事件。志木に思いを寄せる宮島静香。美貌の静香に言い寄り、刎ねつけられた山下。韮崎の秘書で、決して過去を語ろうとしない長谷川環。志木が心を休めることの出来るただ一人の女性、料理屋の槙。そしていつまでも心の中にいつづける元妻の玲子。他人を放って置けない親切な塚原富美子。
自白ではなく、証拠だけによって犯人を挙げようとする志木。かれのユニークな捜査に反発をしながらも、実力を認めざるを得ない旧来の捜査方法をとる周囲。刑務所での生活で、身も心もズタズタにされていく男たち。中学以来剣道一筋の道を歩み、剣道をしたいために警察官となった志木。そして彼が憧れ続けた天才剣士の及川。
複雑な性の世界、自分の意思と他人の欲望、男の友情、暴力団、冤罪、事件は意外に大きな広がりを見せるが、この小説の支流部分はあきらかに筆不足。ここをどこまで描くかで、この作品がワールドクラスになるか否かが決まる。その点は中途半端の感が拭えない。とはいえ、このままでも大傑作であることは間違いない。今でも十分なヴォリュームの作品なのだ。
この小説の凄さを伝えようとしたら、内容を全部書いても追いつかない。ともかく読むしかない。文章の濃度は、異常なまでに高い。多分、今までの柴田の小説の4、5冊分に匹敵すると言ってもいい。しかも、その緊張感。全くジャンルは違うが平野啓一郎『葬送』、D・シモンズ『ハイペリオン』、M・プーゾ『愚者は死す』などといった超弩級の長編群を思えばいい。月刊誌に3年にわたって連載されたというが、それだけの時間の重みを感じさせる作品、繰り返すが傑作である。柴田はこの一作で推理小説史に名を残した。なぜ、国内のミステリ通が、この名作を評価しないのだ!
低い評価の役に立ったレビュー
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2002/10/07 19:04
著者コメント
投稿者:柴田よしき - この投稿者のレビュー一覧を見る
デビュー作の『RIKO』より前から構想を持っていた作品で、デビュー後、『聖母の深き淵』の後で一度書き上げていたのですが、まだ作品世界を描き切るだけの筆力がなく、不満足な出来で発表を断念しました。今回、あしかけ三年にわたって月刊カドカワミステリに連載し、さらに大幅に加筆訂正をくわえて、ようやく刊行となりました。私にとっては七年以上をかけた、渾身の作品ということになります。楽しんでいただければ幸いです。
紙の本
あんまり、このミスじゃあ騒がれなかったけど、bk-1の書評氏は褒めてたんだ、えーい、ついでに私だって言うぞ、この本は警察小説の『ハイペリオン』だって
2003/07/17 20:41
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
世の中には、なぜかあまり騒がれない傑作というものがある。このミスにも、文ベスにも上位に名を連ねることのなかった、それでも私はこれこそが、実は昨年の頂点ではないか、と密かに確信していたミステリ。最初から書いておくけれど、この小説は柴田よしきの最高傑作であるだけでなく2002年の、いや近年の日本の警察小説の頂点に立つ小説である。「化けた」といったら失礼だろう、今までもかなりレベルの高い作品を書いている柴田だ。しかし、あきらかに波があった。それが、今回の小説、最初から最後まで緊張の意図が、恐るべき強さで持続する。脱帽である。
小説は1995年と、1980年代を自在に移動する。必ずしも時系列に沿った動きではないけれど、違和感は全く無い。混乱も無い。小説は、1989年の早朝。小田急線の線路に横たわり始発電車の通過を待つ青年が、男に救われるところから始まる。その、後に山内練と名乗る男の人生が主題となる。
しかし話はそのまま1995年、部下で24歳になる宮島静香を自宅に送る麻生係長の帰宅風景へ移る。新宿のホテルの32階、東日本連合会春日組の幹部韮崎誠一が殺された現場。本来であれば、子分たちに身を守られていたはずの韮崎は、何故か浴室で裸のまま喉を鋭利な刃物で切り裂かれて死んでいた。捜査1課の切れ者の志木は、事件を担当するが、彼の行く手に立ちふさがるのが暴力団担当で、志木の大学時代からの先輩でもある捜査4課の及川だった。
及川は、被害者の身元から、事件は暴力団絡みと考え、普通の殺人事件として捜査をする志木の妨害をする。韮崎の事件の背後にあるものは何か。彼を取り巻く華やかな女たち。彼女たちは一様に、誠一を愛していたと告白するが。元タレントや、女医といった美女達に愛された暴力団員の真実の姿。
妻の玲子から言い出された離婚届に判を押した志木。彼が関わった過去の事件。志木に思いを寄せる宮島静香。美貌の静香に言い寄り、刎ねつけられた山下。韮崎の秘書で、決して過去を語ろうとしない長谷川環。志木が心を休めることの出来るただ一人の女性、料理屋の槙。そしていつまでも心の中にいつづける元妻の玲子。他人を放って置けない親切な塚原富美子。
自白ではなく、証拠だけによって犯人を挙げようとする志木。かれのユニークな捜査に反発をしながらも、実力を認めざるを得ない旧来の捜査方法をとる周囲。刑務所での生活で、身も心もズタズタにされていく男たち。中学以来剣道一筋の道を歩み、剣道をしたいために警察官となった志木。そして彼が憧れ続けた天才剣士の及川。
複雑な性の世界、自分の意思と他人の欲望、男の友情、暴力団、冤罪、事件は意外に大きな広がりを見せるが、この小説の支流部分はあきらかに筆不足。ここをどこまで描くかで、この作品がワールドクラスになるか否かが決まる。その点は中途半端の感が拭えない。とはいえ、このままでも大傑作であることは間違いない。今でも十分なヴォリュームの作品なのだ。
この小説の凄さを伝えようとしたら、内容を全部書いても追いつかない。ともかく読むしかない。文章の濃度は、異常なまでに高い。多分、今までの柴田の小説の4、5冊分に匹敵すると言ってもいい。しかも、その緊張感。全くジャンルは違うが平野啓一郎『葬送』、D・シモンズ『ハイペリオン』、M・プーゾ『愚者は死す』などといった超弩級の長編群を思えばいい。月刊誌に3年にわたって連載されたというが、それだけの時間の重みを感じさせる作品、繰り返すが傑作である。柴田はこの一作で推理小説史に名を残した。なぜ、国内のミステリ通が、この名作を評価しないのだ!
紙の本
RIKOシリーズはこの1冊のために読みました。読み終わった後暫くは興奮のせいか濃厚な物語に浸かり過ぎたせいかのぼせたような状態に。
2004/12/24 15:09
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エルフ - この投稿者のレビュー一覧を見る
文句なしに面白く、読み終わった後で本に拍手をしたくなる1冊です。
今まで謎だった山内と麻生の二人の間にある過去や謎も解けますし、複雑に絡みあった人間関係の糸が少しずつほぐれていく様子は読む手を止まらなくさせます。
読む手は止まらないのにサクサクっと軽く読むのではなく、じっくりとこの世界を味わいながら時間をかけて読んだ本でした。
この世界に没頭したと言う方が近いかもしれません。
しかしこれだけ絡み合わせておきながら上手く一本の糸に辿りつけるとは…。
恐れ入りました。<柴田よしきさん
ただRIKOシリーズを先に読んでおかないとこの謎が解けた喜びの気持ちはわかないので先にシリーズ3作を読まれることをオススメします。
私にとってはRIKOシリーズはこの1冊のために読んだ!と言ってもいいくらいです。
この方の作品のテーマは「愛」。
様々な愛の形が時に憎悪を呼び、時に人や運命を狂わせ、時に破滅へと導く。
登場している人物の殆どが不幸、不幸なのに幸せなのかもしれないと感じるのは何故なんでしょう?
辿りつく先は果てのない闇のような世界ですし、事件の真相が解けるにつれ浮上してくるのは哀しい事実ばかりなんです、それでも彼らはその世界に辿りつくことを望み、刹那的に生きてる感じがし、もしかしたら彼らは最高に幸せなのかもしれないと感じてしまうんです。
またもう1つのテーマが「冤罪」。
これはどの部分を書いてもネタバレになりそうなので書けませんが…。
麻生の過ちと、もう1つの冤罪がこの事件を生み出しています。
オマケのようなんですが意外な事実がわかるのが及川さんと麻生さんの元奥さんの玲子さんですね。
君達もこの運命の渦の中に入り込んでいたのか!と複雑さにビックリさせられました。
何があっても驚いてはいけないのが柴田よしきさんの作品なのかもしれません。
読み終わった後は興奮のせいなのか、または濃厚な物語に浸かり過ぎたせいなのか、まるで長湯につかった後のようにのぼせてしまいました。
紙の本
めぐりめぐるメビウスの輪
2012/12/04 02:27
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アルビナ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリーは好きなジャンルだ。犯人の正体や事件の結末が最後まで見えない。見えた!と確信しても裏切られる。毎度毎度やられた!と頭をむしるのだが、出し抜かれるのもまた痛快で、ついミステリーに手がのびてしまう。一度読破した後、もう一度読んで物語を再構築するのもミステリー作品の楽しみ方である。
しかし、言葉の謎かけやトリックは、この作品にはない。
殺人事件が起こり、捜査一課の麻生警部が独自の捜査で犯人をあげようとする。被害者であるヤクザの韮崎の周辺を調べると、過去に自分が罪を自白させた山内練がいた。麻生は思わぬうちに、山内と韮崎が自分の運命に関わっていたことを知ることになる。
殺人事件を追う筋と平行して、麻生と山内の過去が暴き出される。もともとこの二人は、同作者の『RIKOシリーズ』で登場し、大きな波紋を残していた。この作品は二人の過去編である。
刑事モノらしく、情報があふれ、容疑者・参考人の数もハンパじゃない。主人公の麻生警部とともに物語は進められてゆき、警部が犯人を確信した時、読者にも犯人がわかる。
緻密に伏線を張り巡らせ、膨大な量の情報の糸を操ってゆく作者には舌をまく。しかし、これは一般的に言われるミステリーとは少し違う。この本は、全部麻生龍太郎という警部と山内練という青年の、めぐりめぐる運命の物語なのである。
679Pという厚い本を読みおえた後、私達に残るものは何だろうか?
きっと、ジェット・コースターに乗り終えた後のような、つめていた息を吐き出すため息だけだろう。
紙の本
性別を超えた恋愛物語
2002/10/22 19:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かったん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「聖なる黒夜」。このタイトルが大きな意味を持っていることを、読み終わった時、ため息と共に感じることでしょう。同じ日に、別々の空間と時間を生きていたはずの人々が交わる時、悲しい事件が起こります。必然か、偶然か。そこには、不思議な運命を感じずにはいられません。RIKOシリーズから、ここまでストーリが成長し、生きることに肉薄させられる小説へと繋げていかれる柴田先生の筆力に感嘆しています。
紙の本
複雑に絡み合った糸の先に在る『真実』に、あなたは辿り着けるか?
2004/12/12 02:50
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:伊佐治祝 - この投稿者のレビュー一覧を見る
暴力団の幹部・韮崎が何者かの手によって、殺された。刑事である麻生は、その事件を追うことになる。共に事件に当たることになった警部・及川に連れられ、参考人として韮崎の愛人のひとり・山内に引き合わされる。企業を経営し、そのアガリを韮崎の方へ流していた山内だが、麻生は彼のことを知っていた。10年前に自分が関わった強姦未遂事件の犯人が彼だったのだ。だが、再会した山内にはあの当時の気弱な青年の面影はなくなっていた。韮崎殺しの犯人を追うにつれ、その10年前の事件も浮き彫りになり…。
ハードカバーで文面は2段組、本文だけで約670ページもある実にボリュームのある本。文庫挟み込みのチラシに書かれたあらすじを読んで興味を抱き、「まぁ、面白くなかったら途中で止めればいいし…読んでみるか」と軽い気持で読み出して…しっかりハマった。
この作品の登場人物は誰もがみな過去に傷を持っており、それが味になっている。殺された暴力団幹部・韮崎と企業舎弟である…山内の関係、捜査一課の麻生と、麻生の大学の剣道部の先輩で…現在は捜四(暴力団関係)を取り仕切る及川との関係。そして、山内と麻生の関係。互いに向ける感情がいびつで…だからこそ、魅せられる。愛情を含めた人間の感情とは、何と愛しくて…それでいて人間を愚かにするのだろうか?
元々、ミステリ(含む謎解き)がニガテでここ数年マトモに手をだしていなかったのだが、この作品はまったく別物だと思っていた事件や人物関係が緻密に繋がっており、ラストまで読み終えて「こう来るとは思わなかった…」と唸らされた。
複雑な人とひととの繋がりを辿ると、最後に真実が見えてくる。かなり重々しい内容で読みこなすのも大変だとは思うが、是非ともその『真実』まで辿り着いていただきたい。
紙の本
著者コメント
2002/10/07 19:04
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:柴田よしき - この投稿者のレビュー一覧を見る
デビュー作の『RIKO』より前から構想を持っていた作品で、デビュー後、『聖母の深き淵』の後で一度書き上げていたのですが、まだ作品世界を描き切るだけの筆力がなく、不満足な出来で発表を断念しました。今回、あしかけ三年にわたって月刊カドカワミステリに連載し、さらに大幅に加筆訂正をくわえて、ようやく刊行となりました。私にとっては七年以上をかけた、渾身の作品ということになります。楽しんでいただければ幸いです。