紙の本
いい人は帰ってこなかった
2004/04/17 08:41
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:未来自由 - この投稿者のレビュー一覧を見る
池田香代子の新訳が出版された。読もう読もうと思いながらいまになってしまった。
アウシュヴィッツ収容所の名や話を聞いたことは、多くの人があると思う。本書はその支所に収容された心理学者の率直な体験記ともいえる。
一番印象に残った言葉は、「いい人は帰ってこなかった」
こんな印象的な言葉はない、と思う。生きるために「利巧」に立ち回わることのできない人は、生命を奪われたということである。
旧訳者は、治安維持法の思い出を語っている。言いたいことを正直に言ったものは、治安維持法のもとで生きていくこともできなかった暗黒の時代を経験した人としての重みがある。
ヒットラーによるユダヤ迫害、虐殺は有名である。しかし、その収容所に送られた人の心理面を描いたものは少ない。貴重な本である。
生きるために、人としての尊厳や感覚を忘れてしまう精神状態の描写。リアルな描写になぜかそうかもしれないと思ってしまう。
賞賛できる生き方ではない、と思うが、精神的にそうなってしまうのかも知れないと…。
ヒトラー・ドイツが破れ、自由を得た被収容者。「自由」の実感がわかない、という。
「自由」を実感するまでに、いくたの現実を経験し、なおかつ時間がいるという。それまでに夢見ていた自由、現実の自由が訪れた時にすぐには実感が伴わないという。
これが真実かもしれない、その心理状態には説得力がある。
今日の政治的発言や国民の行動にも、そんな現実離れした心理状態があるのではないか。不安定な社会の中では、人の心も不安定になる。
現象だけに惑わされてはいけない。その中に隠れた本質を見極める考え方が必要なのだと切実に思った。
電子書籍
胸にどんと、、
2018/05/01 01:37
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投稿者:k - この投稿者のレビュー一覧を見る
どん、というか、ズシっ、というか、読み終わった今、表紙を見るだけでもその世界が未だに本の中に眠っているようで、とても不思議な気持ちになります。淡々と現実を受け止める強さ、冷静さ、或いは、職業病ともいえるかもしれない筆者の心情を、どう受け止めるべきなのか、考えさせられる一冊です。
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どうしても旧版と比べられてしまいますが、改訂された原書の翻訳ですから、単なる改訳だと思ってはいけません。旧版も絶版にはなっていないようですので、ともに存在価値があると思います。
さて、この機会に旧版ともども一気に読みました。
比べるつもりはないものの、やはり「差」は感じます。それは出版された時代背景についてです。
ホロコーストそのものについての情報が乏しかった旧版の時代と、それらを予備知識として前提できる今日との差は、あきらかにあるようです。それをもって旧版は重く新版が軽いと言っては正鵠をえていないでしょう。この本は、悲惨な状況を冷静にかつ客観的に書いています。決して、悲惨の原因を糾弾することではなく、淡々と書いていることが印象的です。
その雰囲気を、新版もあますところなく伝えています。旧版に比べて軽いと感じるとすれば、それには読みやすい文体が寄与しています。原著もこんな「感じ」なんだろうと、私には思われます。
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そこに唯一残された、生きることを意味あることにする可能性は、自分のありようががんじがらめに制限されるなかでどのような覚悟をするかという、まさにその一点にかかっていた。被収容者は、行動的な生からも安逸な生からもとっくに締め出されていた。しかし、行動的に生きることや安逸に生きることだけに意味があるのではない。およそ生きることそのものに意味があるとすれば、苦しむことにも意味があるはずだ。(p.112)
スピノザは「エチカ」のなかでこう言っていた。
「苦悩という情動は、それについて明晰判明に表象したとたん、苦悩であることをやめる」(p.125)
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この本で自分の十代はなんとなく完結しました。真似してる部分が多いのであまり人には読まれたくない一冊だったりする。
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ナチスの強制収容所の体験者と同時に心理学者の
フランクルが語る一冊。池田香代子さんが2002年に
新刊として改訳したものです。
収容生活はじめのかすかな希望、
収容生活での心の崩壊、
収容生活開放時の心の変化
が克明に描かれていた。
「生きる意味」を超えた「苦しみの意味」。
いかなる環境にも屈しない「人間の自由」。
など、今まで映像や書物で得てきた強制収容所の
一面とは全く違った観点で描かれていた。
理屈や立派な思想など一切無縁のように思われる
この現状をまえにして、それでも「人間」もつ可能性を
問い続けた著書に敬服してしまう。
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悲惨なアウシュビッツの状況を経験した心理学者の話
ちゃんと心理学してるのが偉い
永続的暫定状況が苦しいってのはよくわかりますよ
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この本の題名は最近も時々,目にするけど,学生時代に読んでとても印象に残った記憶があるよ。どんな内容か忘れてしまったけど,この本を読んで読書カードを作ろうと思ったよ。結局,カードは作らずじまいだったけど,マメに作ってたら今頃,たくさん溜まってただろうなぁ
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限界の状況下に置かれた人間の心理を心理学者が克明に分析する。アウシュビッツの中で生きた人々を違った視点で見れた本。
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ナチスによるユダヤ人迫害があった頃、強制収容所に
送られた心理学者が実体験を語ったものです。
『人間失格』読んだあとにこれ読んだってのもあって
めちゃくちゃ憂鬱になりました(´Д`)
でもこういうむごい歴史をあたしたちはきちんと
受け止めていかなきゃいけないんだなぁって思いました。
自分と置き換えて考えてしまうよ。
あたしだったらきっとすぐに死んでしまいたくなる。
当たり前の今の生活に思わず深く感謝しました。
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心理学者V.Franklが体験したナチス強制収容所での生活の実態を、心理学的見地から語る。人間の本質をまるごと掘り出す。
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自分を待っている人間や愛する人間にたいする責任を自覚した人間は、生きることから降りられない。まさに、自分が「なぜ」存在するかを知っているので、ほとんどあらゆる「どのように」にも耐えられるのだ。−「あなたが経験したことは、この世のどんな力も奪えない」
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人間はどんな状況に置かれたとしても、どんな試練を受けたとしても、「心の中の希望」さえあれば、その困難を乗り越えられる。
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精神心理学フランクルの強制収容所体験記。
人間は、強制収容所という極限状態の空間で、どのように変わっていくのか…。心理学的観点から書かれています。
感想は…ショックでした。
被収容者だけでなく、親衛隊、ドイツナチス軍、すべての人々が歪んでいきます。
アウシュビッツは、人間が今まで見たことがなかった新しい「人間」を発見した。
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アウシュビッツ収容所で生活した経験を持つ心理学者が,被収容者の心理を描いている.心理学に興味なくても読む価値あり.