紙の本
対照をなす二人
2023/05/02 08:11
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
織田信長の伝奇などにしばしば姿を表す「関白・近衛前嗣」とはこのような人物だったのだな、と認識を新たにした。構成の我々の視点から見ると、天皇中心の王政へ復古しようとする努力が痛々しくも的外れであることがわかっているだけに、なんとも情けない。対象としての実力本位 下剋上の松永久秀の存在 振る舞いが際立っている。
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朝廷と武家の駆け引き
2016/11/28 10:07
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
前半(上巻)はまだ問題点・対立点が明確でないためまったりしているが、後半になると、武家の武力と富に依存せざるを得ないため官位をエサに様々な策略を練る朝廷と武家の駆け引き、朝廷内部においても権威を巡る争いや人間的な欲に基づく桎梏、武家においては当然ながら天下を狙う覇権争いがあり、それらが混然一体となった政治的駆け引きが推理小説的な面白味で展開される。一般的にはあまり時代活劇の主役とはなりにくい朝廷が主役になっている点が珍しい。権威はあるが力・富を持たない「朝廷」対、権力=武力・富を持つが“権威”のない「武家」との対立関係の中で、朝廷側としては最も力が有り御し易い武士と組むために策謀を巡らし、武士側では他の覇者より優位に立つために朝廷を如何に利用するかを巡って策謀を巡らすのだから、朝廷対武家、朝廷内部、武家内部と相手の裏の裏をかく陰謀だらけで、熾烈な謀略戦とならざるを得ない。本書では、関白・近衛前嗣が京を追われた足利将軍を再興することで体制を確保しようとするのに対して、三好家を武家の中心に据えて権力を握ろうとする左大臣との対立を軸に、非業の死を遂げた皇后の呪いと、双子の姫たちが絡んで複雑な展開をする。読みごたえは十分であるが、朝廷内のしきたり・慣習などの用語や概念が馴染めず少々読みにくいのが 難点である。
さて、面白いと思ったのは、呪術などとも関連するのだろうが「和歌にこめられた霊力」という視点である。如何にも殿上人らしく各所で和歌が引用されるのである。上巻ではあまり気にしなかったが、下巻ではかなりの数が出てくるので徐々に気になってきた。
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新規購入ではなく、積読状態のもの。2007/11/20~24。山形への往復で。ありそうで無かった(知らないだけか?)織田信長出現直前の時代を取り上げた作品。足利義輝が朽木谷に逃れており、三好家に京、畿内を牛耳られているなか、奮闘する公家、近衛前継を主人公とし、松永久秀を敵役にしている。当時の天皇家や公家の窮状も良く描かれている。
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応仁の乱以降、室町幕府は力を失い、群雄が割拠し、世は乱れた。古来、神々に礼を尽くして地上の平安を守ることを務めとしてきた京都朝廷は、衰微を極めた。弘治三年(一五五七)、後奈良天皇は後事を若き関白・近衛前嗣に託し、崩御。前嗣の奔走が始まる。幕府再建による朝権回復を目論む前嗣は、都を逐われた将軍・足利義輝と結び、都を支配する三好長慶を除こうと計画。これを阻もうとする長慶の権臣・松永久秀の秘められた思惑とは?『信長燃ゆ』『関ヶ原連判状』へと続く、壮大な安部龍太郎の戦国三部作第一弾、待望の文庫化。
2009.9.23読了
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近衛前久の若き日々の姿を描く。
従兄弟であり13代将軍足利義輝と共に公武一体での国の建て直し目論む前嗣(前久の若き日の名)
朝廷の仕来たりや歴史、宗教、あらゆる知識を網羅していないと書けない作品だと思った。
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戦国時代に朝廷を守ろうと奮闘した左大臣・近衛前嗣についてのお話で、「信長燃ゆ」「関ヶ原連判状」と続く、戦国三部作の第1弾となっております。
幕府と朝廷の権威を守ろうと頑張る中、既成の世の中を壊して新しい世の中にしようとしていた松永久秀との知恵比べがなかなか面白いです。
ただ、本のタイトルにもありますが、当時の朝廷では「神」ということに関わり深く、お祈りや縁起、呪いなども登場し、朝廷のしきたりもいっぱい出てきますので、分からないことが多く、読むのは結構大変でした。
↓ ブログにも書いています。
http://fuji2000.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/post_bdee.html
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織田信長が台頭する前の京都。関白・近衛前嗣と将軍・足利義輝は兄弟同然に育った従兄弟。前嗣のライバル西園寺公朝、後奈良帝の祥子内親王(前嗣の恋人)、跋扈する三好長慶・松永弾正らの脇役を配し、これまた妖怪の世界が出てくる伝奇小説。やや冗長でした。
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本作の主人公としての近衛前嗣…面白い!!朝廷をリードする近衛家の後継者で、若くして関白に任じられた貴公子であるが、朝廷や幕府の明日を考えて「自ら動く」人物である。能書家で笛の演奏が得意で、学識が在る他方で、縁が在る薩摩の島津家から献上された短筒を愛用する射撃の名手でもあり、鷹狩りや乗馬も得意だ…こんな近衛前嗣が、躍動する物語である…
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剣豪将軍・足利義輝と三好長慶、松永久秀との争い。
織田信長が桶狭間の戦いで今川義元を討つ以前の話だが、
政の中心地である京の都ではどのような権力闘争があったのか、
そのような視点から物語る作品はなかったように思う。
主人公は近衛前久、本作では前嗣であるが、朝廷を軸として、
戦国時代のみならず、日本を通時的に読み解くうえで、
たいへん勉強になるものだった。目から鱗が落ちるとはまさにこのことだ。
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戦国時代の知識が乏しい自分にとって近衛前嗣という人物も初見に等しいのですが、なかなか面白い作品でした。
それにしても、こんなに将軍が軽視された時代があったとは驚きです。
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「神々に告ぐ(上)」(安倍龍太郎)を読んだ。
『近衛前嗣』がいかなる人物なのか全くの白紙状態のまま読み始めたのだけれど、これはまたなんとも興味深い公家さんだ。戦国の世をどう生きていくのかこの先が楽しみ。
なお、前嗣の前に立ちはだかる『松永久秀』は私の妻がご贔屓の武将なのである。
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足利義輝、三好長慶の話はあまり知らなかったので面白かった。飯盛山に登ったとき、三好長慶を大河にというポスターがあったことを思い出した。
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先日柳広司さんの風神雷神を感動しながら読み終え、なんか風神雷神に似た表紙の小説持ってたよな~と思い探してみたらこちらでした。
関白近衛前嗣が主人公の小説。
後奈良天皇が崩御されてからは苦労の連続で、公卿同士の権力闘争がどろどろとしている感じで暗い。
その中で天皇朝廷の為に奔走し続ける前嗣。
こんなに朝廷や天皇に権威しかないのは驚いた。
貧乏公卿が多く簡単に徳川家康に思い通りに操られていたというのは知識としてはあったが、当時の公卿は本当に苦労していたんだなと感じた。
小豆坊と天狗飛丸とのエピソードぐらいしか楽しい感じはなく下巻もさらに暗くならないか心配ではある。
2022/2
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#読了 近衛前久のことはずっと気になっていたし、歴史の流れも全然知らなかったのでその点は新鮮で楽しめた。けれど、まさか金縛りの術とかテレパシーとか出てくるとは思わなくてびっくりしてしまった。