- 現在お取り扱いが
できません - ほしい本に追加する
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
2 件中 1 件~ 2 件を表示 |
紙の本
テレビを消して
2003/07/02 14:55
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぼこにゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ナンシー関の訃報に触れ、私はまっさきに「長渕剛に殺られたのか?」と思ったことである。最近いくらかまともになったフシはあるが実際あの頃の長渕氏はイザとなれば人を殺しかねないマガマガしき重圧をたたえ、しかも割とたやすくイザとなりそうな気配もただよわせていた。しかしもちろん心の底ではそんな筈はないと分かっていて、それは「いくら長渕でも人は殺さんだろう」というよりは「たぶん長渕はナンシー関のコラムは読まないだろう」という私見に基づくものであった。
ナンシー関がいたらなぁ、としばしば思う。たとえばダウンタウン松本の携帯電話のコマーシャル(菊川怜の競艇に匹敵するくらい下手で恥ずかしいやつ。H15年7月1日現在まだやっている)をうっかり最後まで見てしまった後に残る、叫びたいほどの気色悪さと忸怩たる思いのないまぜになった理不尽な不快を(私が恥じ入る筋合いもないが、たぶん松本が恥ずかしがっていないせいで見ている方が恥ずかしくなるのだ)、あの人はどう表現しただろう、とか。
大多数の人が胸にうっすらとわだかまらせている煙のごとき情念を、的確に抽出し具体化するというのは、基本的かつ有効な笑いの手段である。読者より数段高い視点を保ちながらも揺るぎ無い共感を取り付ける、というのは実はけっこう至難の業で、視点が高すぎると独り善がりだし、低すぎてはそもそも商売にならない。ナンシー関は当代随一のお笑い芸人であり、内気な現代人(私のことだが)にとってこの人のコラムと消しゴム版画は、以前のひょうきん族とかオールナイトニッポンに並ぶ心のバイブルですらあったのだ。
そうした事情で、最近めっきりテレビが物足りなくなった。画面から一方的に送られる情報に対し、自分一人で(ナンシー関抜きで)対処しなければならないという事態に直面してみると、テレビはそれほど面白くない。いや、もっともナンシー関が世に出て十数年だから、私も年をとったのだ。もうテレビを消して、一人で生きて行かなくてはならない(泣)。かつてトラヴァースやミルン(メアリー・ポピンズ及びくまのプーさんの作者)がそうしたように、また『悔恨の日』でデクスターがモース主任警部を葬ったように、ナンシー関は我々を置き去りにしてしまったのだ。まったく罪なお人である。
2 件中 1 件~ 2 件を表示 |