無頼船 みんなのレビュー

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投稿者：SlowBird　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

おれたちゃ無頼船、紳士な無頼船（「嵐を呼ぶ男」の節で）
船乗りは海の上で紳士でなくてはならない。三つのＣがある。Clean Shave、Clean Shoes、Clean Handだ。ひげと靴と手はきれいにしておかなくてはならない。司廚長(Chief Stuard)を飯炊きなどと呼ぶことは断じて許されない。艦長(Captain)の命令は絶対だ。甲板で喧嘩などすれば、海に落ちても救助されずに陸まで泳ぐ羽目になっても文句は言えない。
やっかいごとに巻き込まれるのは懲り懲りという艦長は、幼い頃に母に捨てられたところを拾われ、水産大学を出て義父の独航船に乗った。今は199トンの貨物船孤北丸で、行き場を失った者達を船員にしている、彼らクルーを見捨てることができない男だ。それでなお、絶望の淵にいる者に手を差し伸べているのだから、面倒に巻き込まれるのは必須だ。
船は気仙沼、青森、稚内、小樽、新潟と日本列島をぐるぐる回る。海軍の最新鋭艦に乗るエリート将校でもなく、暴れ回って黄金と美女を手に入れる海賊でもない、土着海洋冒険小説。海の中上健次。そこにまた妙な居候（？）が住みつく。居酒屋で泥酔して甲板員と喧嘩したはずが船倉に寝ていた男、艦長と同じに母に捨てられた少年、売春組織から逃げ出したヤンキー娘ジェーンは尻の位置が高い。
男達はジェーンを抱けるなら死んでもいいとさえ思う。国後島の海峡では、ロシヤの警備艇が公海上で日本の漁船の拿捕を強行する。船の沈没を偽装する船舶保険詐欺(Paper Pirats)。恋人を奪われた上に売りとばされて漁船で自殺しようとする若者。そしていつのまにか巨悪の尾を掴んでしまう。さらに消息の知れなかった母から助けを求められる。どうすんのよ。
はっきり言って、かなりアリエナ〜イ状況です。幾度も命を捨てる覚悟をする。守ろうとするものに、それだけの価値を見い出している。クルーもジェーンも少年もどん底に突き落とされる。酔っ払いは、眼力はあるが行動は軽薄だと言われる。素敵な野郎どもによる、笑いと涙の痛快アクション。無頼船に明日はあるのか。