紙の本
論文でも書いてやろうかという気にさせる
2007/08/30 05:04
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BCKT - この投稿者のレビュー一覧を見る
第1回講義 日常生活と論文
第2回講義 問題の立て方
第3回講義 資料の集め方
第4回講義 論文の組み立て方
著者は1949年(横浜市)生まれ。神奈川県立湘南高等学校卒業後,東大で学部と院を修了。本書刊行当時は共立女子大学文芸学部(教授,54歳)。専門は19世紀のフランス小説。『馬車が買いたい!』(90年)で第13回サントリー学芸賞,『子供より古書が大事と思いたい』(96年)で第12回講談社エッセイ賞,『職業別パリ風俗』(?年)で第51回読売文学賞,『愛書狂』(98年)でゲスナー賞(金賞)を受賞。受賞作だらけだ。羨ましい・・・。
数多くの受賞歴からして,こうしたテーマの著作には最適の著者で,本書は標準的な論文作成の手引きとなっている。でも,「東大でも京大でも,早慶でも,大学生に論文の書き方を教えるというのは,動物に芸当を教えるよりも困難になりつつあるのです」(21頁)とか,「論文指導をする先生ご自身が,良い問いを見つけたことのない人,あるいはそうした経験の少ない人である」(37頁)とか,「文部科学省は大学教員の業績にはいちいちうるさいことを言って,紀要論文何点とか,学会発表論文何点などと調査してくるくせに,肝心の紀要論文や学術雑誌を一堂に集めて集中管理し,後世の研究者の便宜をはかるなどということには関心を持っていません」(116頁)とか言っていて,学生らに対してだけでなく大学教員や政府行政官に対しても手厳しい。でもやはり標準的で,しかも無理やりなことは言ってない。なんだか新しく問いを立てて,論文でも書いてやろうかという気にさせる。でも,実際はそんなに簡単なことではないんだけどね。
本書を読めば卒論がすらすら書けるというのではない(だろう)けれど,とまっている筆(PC入力?)が動き出すかもしれません。という意味で,誠実な著者の姿勢に敬意を表しつつ,本書をお薦めいたします。(790字)
紙の本
バーバラ・ミントにも対抗できる!
2003/06/04 01:43
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:平野雅史 - この投稿者のレビュー一覧を見る
非常に示唆に富んだ論文ハウツーものだ。ロジカルシンキング、ロジカルコミュニケーションを取り扱う類書は巷に溢れかえっているが、本書のとっつき易さと読みやすさ、コストパフォーマンスを考えれば、「考える技術・書く技術」(ダイヤモンド社)や「実戦!問題解決法」(小学館)の対抗馬にもなり得る。
論文の書き方や論理的コミュニケーションを取り扱った類書と本書を大きく差別化する点は、問いの立て方に関する詳細な記述にある。多くの類書は、文章表現としての論理展開のハウツーを展開するが、起点となる問いの立て方、問題設定の方法論には触れないことが多い。問題設定の方法論について、本書では多数のページを割き、かつ平易で判り易い事例を用いながら説いているから、頼もしい。
また、本書のレトリックや取り上げる事例も面白い。「ピンク映画」や「わが国でのカフェの生い立ち」など、ちょっぴりエロティシズムを絡めながら進む筆者の語り口はページが進む。
大学教授である著者らしく、講義仕立ての構成となっている。第一回講義「日常生活と論文」、第二回「問題の立て方」、第三回「資料の集め方」、第四回「論文の組み立て方」と進む。
本書で示す書き方講座は、無論、ビジネス・レポートにも応用可能である。特に「問いの立て方」は、新規事業アイデアなどを求められる企画マンにも参考になると思う。学生だけではなく、考えること、書くことを求められるビジネス・パーソンにとっても非常に役立つ。
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鹿島茂という人はエッセイの面白い教授で私は好きなのですが、その一端を教えてくれる本。私も論文書いて学校を出ましたが、今思うと一発芸。これ、先に読んでおけばよかったなぁ。大学の卒論くらいならこれを読んでおけば結構手がかりになる気がします。
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学部生・院生必読の一冊だと思います。
問いの立て方から批判的考察、資料の集め方など、説得力・信頼性のある論文を書くためにはどうすれば良いかがとても明解に書かれています。
特に、問題を縦軸と横軸に視点をずらして検証するということは、当たり前のようで、文字にされると改めてその重要性を感じます。
詳しくは本文に譲りますが、「連鎖式」「並列式」の2つの論文の書き方は、自分もこれから意識し続けていこうと思います。
ただ、どうしても例が長い。もう少しコンパクトに例を提示してもらえれば読みやすくなるのに、あまりに例が冗長になってしまうのは、著者の性格もあるのでしょうか。内容があるだけに、それが個人的にはもったいない。
でも、それを差し引いても、やはり必読の一冊だと思います。ぜひ、手にとってみてください。
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観点:勝てる論文とは何か?+それが備えるべき性質とは何か?
タイトルの勝つためには不要
→日常生活、ビジネスで生かすという意味でかかれているからか?
コーパスについて、資料について有益な示唆がある。
p.173 ウォーラーステインが第2章で~の部分が唐突。
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・ 考えるためには、まず問題を立てることができなければならない。
・ 論文は必ず問いから始まらなければいけません。そして、それの答えをこれこれこういう理由だから、こうなんだとはっきり証明するかたちで結論へと導く、これが論文というものです。ですから問いのない論文というのは存在しない。
・ 論文でも・生活の中の思考でも、自分で問いを発見しない限り、なにものもスタートしないということです。
・ 未知に対する問いがなければ論文でない。
・ よい論文とは「?」で始まり、「!」で終わる。
「第2回講義 問題の立て方」
・ 独創的と呼ばれている論文を分類してみると、意外なことですが、それは基本的に2種類しかないということに気づくと思います。ひとつは今までにたくさんの人が問題をたてながら未解決なところにもう一度問題をたてる論文。ひとつは、いまだかって誰も問題を立てたことの無いところに問題を立てようとする論文。この二つ以外に問題の立て方はないのです。
・ 問いは、比較からしか生まれない:「これはあれとは違う、どこがどう違うのだろう、またそれはなぜなのだ」というような問いは、比較することによってはじめて生まれるということです。比較でしか、差異への意識は生まれてこないのです。
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去年だかいつかに一度、そして今回含めて二度読みました。
論文作成の参考のためと言えど、新書を二度読むというのはかなり稀なことです。
この鹿島茂さんというのは共立女子大の教授で、僕は丸谷才一さんの『思考のレッスン』の解説をしていたのが縁で知りました。
丸谷さん同様、仮説というのを非常に重要視していて、とにかく「論文といえども読む気が削がれるようなものは良くない」という姿勢を強くお持ちのようです。
そういう姿勢の著者ですから、当然この本も読みやすく、そしてわかりやすい。
そして好感も持てる。
だから僕はこうして二度も読んだわけです。
しかしいざ実際に論文に活かそうとすると、これが思いのほか難しい。
というのも、鹿島さんの専攻が仏文学で、この本もそうした人文学的な色彩が強いから。
自分のように、各企業に足を運び、ヒアリングを基に論文を作成していこうとする場合は(参考文献はあまりない)、ヒアリングを論文の上でどう位置づければいいのかといった疑問が解消しないんです。
そういう意味で、この本は論文を書く上での姿勢など、基本的な部分において重要な示唆を与えてくれるにとどまったものであると言えるかもしれません(あー俺も人文系の学部に行きたい・・)。
あとこの本は編集者の意図が色濃いのも特徴的です。あとがきにも出てきますが、そもそもこの新書は編集者の大口敦子さんがかなりプッシュして出来上がったものらしいですから。
ところどころでの「ビジネスの企画書作成にも役に立つ」といった無理やり感溢れた記述に商業的な事情が垣間見えて、少し萎えます。
まあ、でも、面白いです。
(2007年08月17日)
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単なる論文の書き方だけでなく、読み物として楽しめました。
本書は、最初から最後まで退屈せずに勉強できたので、非常に良本だと思います。
仕様書など、文書を書く機会は多いので、ちゃんと役立てばよいのだけれど・・・
プレゼンテーションの作り方に関しても参考になると思います。
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[ 内容 ]
二十五年間にわたり、文章と考え方の指導をしてきた教授による徹底指南。
論文も仕事も、勝利をつかむための極意は問いを立てることにありとして、「カフェと喫茶店の違い」「牛丼と宅急便の関係」「司馬遼太郎と山田風太郎」など奇想天外な例証を次々に挙げつつ思考のレッスンを展開する。
点のとれる論文、会議に通る企画書、銀行をウンと言わせるプレゼンテーション案を書きたい諸氏は必読。
[ 目次 ]
第1回講義 日常生活と論文(どうせなら、日常生活に応用のきく論文の書き方はないものだろうか;自分の頭で考えることの楽しさ ほか)
第2回講義 問題の立て方(論文指導とは問題の立て方を教えること;良い問いというのは二種類のみ ほか)
第3回講義 資料の集め方(宿題タイム;資料を集める、どこで参考文献を探すか ほか)
第4回講義 論文の組み立て方(序論を書く;本論を書く ほか)
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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実践的な知識を得ようと思って手に取った本だが、もっと基本の思考の方法から書かれていて非常に参考になった。
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論文、あるいはプレゼンテーションのいろはをまとめた本、といったところ。理想の論文というのはどういうものかを最低限知るためには最適な一冊だと思う。けれど、理屈はわかっても実際書くとなると難しいもんです。
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文章かくの苦手です。
もちろん「論文」なんて。
という人におススメの1冊。大学生(特に卒論書く前の人)に読んで欲しいです!
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非常に有益な本だった。少なくとも文系学生は読んで損のない本だと言えると思う。
余談だが、本書を通じて、著者の専門分野である文学研究に対しても知見も深まった。
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タイトルからすると、学生用の本のイメージを抱きがちだが、そんなことはない。
出版やテレビに関わる人にとって、かなり有益な本。
仮説の立て方、資料収集の方法(1次資料と2次資料の違いなどの説明も)、構成の立て方などなど、参考になる話が非常に多い。
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「論文」を書く必要はない方でも、良い文章を書くために、一度読んでみることをお勧めします。他人に話せる面白ネタも少なからずあります。