- 現在お取り扱いが
できません - ほしい本に追加する
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
紙の本
スーパーマン榊医師
2004/07/24 11:30
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:13オミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
解離性同一性障害(多重人格)の原因が幼児期以降の虐待であると説いておきながら、その原因に本書は踏み込めないでいる。確かに過去を変えることはできない。しかし、もし患者に通院で治療を施しても、あるいは入院で完治したと見えてもいずれ帰る家族との関係が修復されない限り治療に効果はないし完治しえないのではないだろうか? 亡き岐戸医師を継ぐ榊医師は、家族にまで踏み込まなければならなかったはず。それがないので、本書では榊医師に岐戸医師を越える素地が見当たらなかった。
弓と居合が出てくる。両方とも精神統一のために集中力が非常に必要だそうだ。伏線となる話の登場人物江間遥子の弓と本線の登場人物広瀬由起の居合。これらは治療の一助の域を出ないが、人生のブレを本筋に戻すということを暗示していた。江間は病気ではないが大人になれ切れていない感がある。田舎に戻って兄と弓を射るが全く話にならないほどの醜態を晒す。広瀬は多重人格で未だに人格の統合が図られていない。その苦しみから出ようともがく。
それにしても榊医師の強靭な精神力には恐れ入る。まずは、少女・亜左美に散々病院内で振り回される。それもつかの間、広瀬由起の多重人格に勝手に触れさせられる。それによって亜左美も多重人格ではないのかという確信を強める。彼の過去には苦い経験があり、患者に自殺され自身の家庭も崩壊している。はっきり言って榊医師のほうがおかしくなってもおかしくはない状況だ。にもかかわらず、亜左美も広瀬由起も見捨てないという真摯な姿勢はいったいどこからくるのだろうか? 多重人格は幼児期の虐待に原因があると述べているが、榊医師の幼児期以降の成育過程を明らかにすることで、もしかしたらその強靭な精神力の源がわかるかも知れない。そこに多重人格治療のカギがあると見るのはうがちすぎだろうか?
真面目に人に相対するということの大切さを本書は説いている。実は現実の世の中はこんなに他人に真摯に対応しない。いい加減である。相手の辛さはわからないし、自分の生活が大切だ。相手の中に一歩足を踏み入れることができない。もし、それが出来ていれば虐待はなかったろうし多重人格も生まれない。そうすれば、女性患者のストーカー行為も生まれずに自殺もなかったのではないだろうか? 元を断たねば負の連鎖を断ち切るのは難しい。
多重人格をキワモノとは見ずに描いた本書は非常にレベルが高い。著者の多島氏には、キワモノと見られがちなモノを題材に真っ向から取り組む力があるような気がする。今後もそういうものを期待したい。
紙の本
リアルな多重人格
2003/02/05 00:02
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のらねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
従来通用していた「精神分裂症」という病名が「統合失調症」と改められたのが昨年2002年八月、この作品が上梓されたのは、それより前の2000年。病名をどのように変えようとも、実際に罹患している患者さんの苦悩が和らぐこともなかろうと思わないでもないのだが、幾分かでも世間的な偏見が軽減されるならば、改称の意味もあるか。
この作品では、博物館の収蔵品の真贋をめぐる話と、ある精神科医が、日本では症例が少なく馴染みがない、乖離性同一性障害(「多重人格」という俗称のほうが通りがいいか)をめぐる話と、二つの「事実への探求」のエピソードが交互に語られる。むろん、その二つの大筋は、終盤近くになって一種の合流をはたすわけだが、物語全体の比重からいえば、「乖離性同一性障害」周辺の話に重きが置かれている。そして、どちらのパートについても、専門的な細部についても丹念に取材してあるようで、かなりのリアリティを感じさせる出来となっている。
自分が担当する患者について、主人公の精神医は医療スタッフから「境界例ではなく、乖離性同一性障害ではないか?」という示唆を受けるのだが、日本での症例が極めて少ないこともあって、容易に従来の診断を覆そうとしない。それ以前の部分で、実際の精神科の医療現場の現実を丹念に書いているからこそ、そうした、診療の場で慎重をならざるをえない態度に真実味が増す。
多重人格、という、ともすればファンタジックな粉飾で語られがちな題材に真っ正面から取り組み、しかも位負けしなかった、かなり読み応えのある作品です。
紙の本
おもしろいです。
2001/01/15 16:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まんも - この投稿者のレビュー一覧を見る
とても厚い本ですが一気に読みました。境界性人格障害や解離性同一性障害について、とても詳しく丁寧に書かれていると思います。