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ポストコロニアル理性批判 消え去りゆく現在の歴史のために みんなのレビュー
- G.C.スピヴァク (著), 上村 忠男 (訳), 本橋 哲也 (訳)
- 税込価格:6,050円(55pt)
- 出版社:月曜社
- 発行年月:2003.4
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紙の本
排除されしものたちの声に耳を傾ける、反帝国的抵抗の書
2003/05/13 19:30
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:小林浩 - この投稿者のレビュー一覧を見る
サイード、バーバと並び、アメリカにおけるポストコロニアル研究の第一人者と目されるスピヴァクの思想的中核をなす主著の、待望の完訳である。植民地時代以後の社会を規定する特徴的な文化的思想的ドミナント(支配的潮流)の検証を通じ、グローバリゼーションにおける帝国主義と現地主義(地域主義)の連環の磁場をあばくとともに、マルクス主義的フェミニズムに基づく戦略から、世界の表象と読解と実践的再構成を説く力作である。本書は四つのパートに分かれる。第一章「哲学」のポイントは、スピヴァク特有のマルクス再読解にある。鍵になるのは、サバルタン(グラムシ)の現在への分析と、アジア的生産様式の再評価(アミン)である。サバルタンの現在は男性中心主義を乗り越えを示唆し、アジア的生産様式の再評価は欧米中心主義の超克を指す。男性中心主義や欧米中心主義は、スピヴァクの言うところの「ネイティヴ・インフォーマント(現地生まれの情報提供者)」の視点を排除する点で、根本的に帝国主義そのものなのである。第二章「文学」においてはさらにこのネイティヴ・インフォーマントに着目しつつ、近現代文学における帝国主義への容認と拒否をさぐる。ブロンテからクッツェーまで、7人の作家と作品が徴候的読解にさらされている。
本書の議論の一大頂点と言えるのが第三章「歴史」である。ここではかつてのスピヴァクの代表論文『サバルタンは語ることができるか』における議論が再審され、更新される。サバルタンは語ることができないと結論したことは「得策ではなかった」と彼女は告白する。そもそもこんにち「サバルタン」とはいかなる「従属的存在者」なのか、議論が整理され、より多くの説明がなされている。第四章「文化」では、ポストモダニズムにおける女性のトランスナショナルな表象がいかに帝国主義に裏打ちされているかを暴く。一例として挙げられるのが、服飾デザイナーの川久保玲(コム・デ・ギャルソン)なのだが、80年代を濃密に経験した世代の日本人ならば、スピヴァクとは異なる観点から川久保玲を論じることができるはずだ。付録には「脱構築の仕事へのとりかかり方」という、デリダの「脱構築」の射程を論じたテクストが収録されている。本書での彼女の言葉遣いはけっして平明なものではないけれども、論旨は明晰であり、勘どころで明示的な議論の整理を避けるようなことはしていない。基調となる「抵抗の論理」を念頭に、丹念に読み進めたい好著である。
連載書評コラム「小林浩の人文レジ前」2003年5月13日分より。
(小林浩/人文書コーディネーター・「本」のメルマガ編集同人)
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