- 現在お取り扱いが
できません - ほしい本に追加する
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
9 件中 1 件~ 9 件を表示 |
紙の本
苦笑い、そんなエッセイ
2003/04/12 23:34
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:北祭 - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんだか、タイトルからして「おちゃらけ」と言おうか、そのテロリストのような風貌からはちょっと想像しにくい茶目っ気たっぷりの向井万起男氏のエッセイ。万起男氏は、あの宇宙飛行士・向井千秋の旦那だけれど、ただの身内のレベルじゃありません。筋金入りの「宇宙飛行士オタク」なのです。なんと理想的な夫婦!?
忘れもしない、2003年2月のスペースシャトル・コロンビア号の事故。あのコロンビア号こそ、かつて向井千秋が乗った船であった…その衝撃から本エッセイは始まります。あの恐るべき事故をきっかけに、万起男氏は1989年のチャレンジャー号打ち上げ失敗という壮絶な事故の犠牲となった宇宙飛行士の未亡人ローナの話を聴き、人前で初めて涙を流し続けたと告白します。人前では涙を流さないと決めている…なんてハードボイルド決め込んでいても、オイオイ泣いてしまうあたり、実に万起男氏らしいエピソードです。
とんちき話も盛り沢山です。
例えば、今は国際化の時代、英語は必須などとよくいわれます。ところが、万起男氏がヨーロッパ中に出張する女房に電話をして、田舎ホテルのフロントに英語で話し掛けると相手が電話を切ってしまうというんです。また掛けると今度は出ない。実は相手は英語が分からず恐がっているというんです。こうなると根競べでやっと向こうが折れて電話に出たら、「チアキ・ムカイ」を連呼するのだとか。国際化の時代を皮肉りつつも、とんちき話に仕上げてくれるのが味なところ。
また、万起男氏の座右の銘は「健康に留意する」。まあ、病理医だからな、などと考えるのは時期尚早。今度は、100歳近くまで生きた松永安左右衛門とインタビュアーとのやりとりを取り上げます…
「松永さんのように長生きしていると、ご友人や知人が亡くなられてゆくので寂しいお気持ちになるでしょうね?」
「君、馬鹿なことを言っちゃいけないよ。こんなに楽しいことはないんだよ」
「はぁ?」
「知ってるヤツが死んだということを風の便りに聞くことほど楽しいことはないんだ。いいかい、君…」
このインタビューで座右の銘を決めるとは、まったく医師とは思えぬブラックぶり。でも、この松永氏のコメント、深いかも。
もちろん、もう文庫になっている『君について行こう』でおなじみの妻・向井千秋との「ちょっとおかしな夫婦のトーク」ネタも充実です。現役宇宙飛行士の妻に向かって、無邪気に「宇宙飛行士オタクぶり」を発揮する万起男氏を見ていると、ついこちらも苦笑いが出てしまいます。
この夫婦の鍵カッコ付きの会話が、なんといっても万起男氏の売りです。漫才でも見ているような生な感覚にあふれているのですが、それはどうしてなのか? 本エッセイで発覚するのですが、万起男氏は学生の頃からの「演劇マニア」だったのです。なるほど、脚本を書くような感覚で文を綴っているからこそ生まれてくる魅力なのかもしれません。
紙の本
ユニークな病理医さんが綴る面白エッセイ。
2003/08/23 19:44
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:吉田くに - この投稿者のレビュー一覧を見る
常にハードボイルドでかっこいい人生を送ろうと努力している向井
万起男さんによるエッセイ。マキオさんはオカッパ頭にヒゲを生やし、
外見から既に独特の雰囲気を放っている。宇宙飛行士・向井千秋さんの
ご亭主だ。人相を誤解され、テロリストと怪しまれた事も幾度かあると
いうから失礼と思いつつも笑ってしまう。
何といっても、一つ一つの話のテーマや内容がユニークだ。
特に大リーグに関する話の熱の入りようはぶっ飛んでいる。
自称“日本屈指の大リーグ通”と名乗るだけあって、知識の豊富さは
勿論、「そこまでは誰もやりゃあしないよ!」と言いたくなる程著者自
らが様々なデータ分析までしでかしている。大リーグ好きな方は是非、
マキオさんに挑んでみるといいと思う。
だが一人で大リーグ熱を帯びて読者を無視し暴走しているわけでは
ない。マキオさんは様々な話の中で実に多くの本を評価し、紹介して
くれている。ユニークなものの見方や考え方、語彙の巧みさはおそらく
マキオさん自身の膨大な読書量からきているのであろう。本人はそのつ
もりはなくとも、さりげなく光る読書のすすめの連鎖はやはり病理医な
らではの緻密な技術を以てしての事なのであろうか。それとも天性の才
能なのだろうか。それにしても豊富な知識の量には驚くばかりである。
病理医という仕事はあまり日本で知られておらず、国内における人数
も少ないという。だが需要は高まりつつあるのが現状だ。
私も知らなかったのだが病理医とは患者と直接接する事がないにしても
遺体を解剖したり患者から採取された臓器や組織を細かく見ては診断す
るのが仕事だ。当然未知のウイルスや病原菌に接する事もあるのだろう
から、病理医自身の命はいつも危険と隣り合わせなのである。
そんな危険と日々戦いながらもユニークな発想を持つマキオさん。
時にはホロリとさせながらも大いに笑わせてくれる本書は、ありきたり
のものの考え方には満足しない、新発想を求める方に最適といえるだろう。
9 件中 1 件~ 9 件を表示 |