サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

e-hon連携キャンペーン ~5/31

hontoレビュー

モザイク みんなのレビュー

文庫

予約購入について
  • 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
  • ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
  • ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
  • 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。

みんなのレビュー74件

みんなの評価3.5

評価内訳

2 件中 1 件~ 2 件を表示

紙の本

結局、このままランディは小説の世界から逃げていく?それって敵前逃亡と同じじゃない。立松和平みたいに盗作なんかなかったように振舞う作家だっている。もう癒しのエッセイを卒業してもいいんじゃあない?

2003/12/17 19:36

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

読書界を震撼させた『コンセント』『アンテナ』続く、盗作騒動で絶版になるかもしれないといわれた三部作の最後の作品。三部作といっても、どれも完全に独立した作品で、共通するのは描かれているのが現代精神ということだけ。『コンセント』では引きこもり、『アンテナ』では風俗、『モザイク』では携帯電話とネットワークを現代の精神的な病理(無論、田口はそれを病気とは全く考えていず、むしろ現代の様々な事象と自然に受け入れている)と結びつけ、時にエロティックに、時にユーモラスに、そして時に残酷に現代の姿を見せてくれる。

なんと言っても、佐藤ミミがいい。生まれてすぐ父を亡くし、数年を経ずして母を事故で失う。祖父母のもとで育てられ、祖父から古武道を叩き込まれ、高校卒業後自衛隊に入り、射撃の腕を認められながら祖母の看病のために退官。看護婦の瀬田さんを見ていてその道の勉強を始め、二十五歳で都立精神医療センターに勤務。

不思議な体術で患者たちをいなし、上司の川島に気に入られていたところを、自衛隊時代の彼女を知る有吉に引き抜かれ、精神障害のある人間を施設に送り込む移送屋という職業に就いている。そして渋谷で彼女の前から失踪したのが、移送中の少年・正也。冒頭のバットを振り回す活劇シーンは映画にピッタリだろう。

渋谷で見失った少年をさがす佐藤ミミ、行方の鍵を握る救世主救済委員会が発する「渋谷の底が割れる」というメッセージ。「神の父で幸せを」と手をかざす男との出会いに始まり、携帯電話から流れるメッセージ、渋谷の街で携帯を片手に同じ行動をする若者達の描写はSF的で、大友克洋のアキラを思わせる。何気ない光景の底から顔を見せる真実の姿はP・K・ディックの世界。

これが『スカートの中の秘密の生活』などの痛快エッセイを書く人の文とは思えない。いや、描く世界は同じ。しかし文体が違う。無論、明快さは変わらない。視線も変わらない。でもホットで軽いエッセイにたいし、クールで固い文章、それがいい。『アンテナ』ではあまりのおかしさに笑ってしまい、家族から顰蹙をかったけれど、それは対象自体のおかしさであって文章ではない。その使い分けの見事さ。本当にこの人の作品は熱い。現代が血を流す様がヒシヒシと伝わる。田口を読まずして21世紀は語れない、嫉妬でこの人を潰して、作家にモザイクをかけてはいけないのだ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

ボーダーライン

2004/04/13 17:41

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:川内イオ - この投稿者のレビュー一覧を見る

「何が本当かなんて誰にもわかならい」

ある精神科医が、ビール片手の赤ら顔で私に言った。

例えば幻聴を「幻」だと定義しているのは「まとも」な人間。
しかし、誰かが何かを囁いている、という現象は
聞こえている者にとっては確かなことなんだよ。
「異常」と「正常」に明確な線引きはないし、できない。
人間、誰しも絶対に人に言えない「異常性」があるでしょ。
「常識」に囚われてたら、彼らのことを理解なんてできないよ。


『モザイク』は、日本を覆う閉塞感とそれにリンクするように
漂う無力感、そしてそれを突破する可能性を描いた物語である。

日本の法律の網目を補完する「移送屋」。
この国では精神を患う者がいても、犯罪を起こして逮捕されるか、
自主的に病院に出向かせることでしか入院させることはできない。

移送屋は、家族の依頼を受け患者を説得し、
合意のもとで精神病院に送致する。

移送屋のミミは、ある時十四歳の少年の移送を引き受ける。
少年の発する言葉は、「異常」だ。
しかし、ミミは彼の存在を拒絶しない。
ミミを認め、移送に合意した少年はしかし、
「渋谷の底が抜ける」という言葉を残して姿を消す。

そして、少年を追うミミは「救世主救済委員会」という
謎の団体にたどり着く。


この物語は、決して「オカルト」ではない。
『モザイク』が提示しているのは、「常識」とは何か、
「正常」とは何か、「現実世界」とは何か、という
「まとも」な人間たちへの問いだ。

精神科医は続けた。

僕らは、向こうの世界を覗くのが仕事だ。
だけど、向こうの世界から帰ってこられなくなる人間もいる。
そういう人間の中には、姿を消してしまう者もいる。
業界から姿を消すんじゃない、物理的にいなくなる、失踪するんだ。
向こうの世界とこっちの世界を自由に行き来できるのが、
ユタやシャーマンと呼ばれる人間なんだよ。

笑いながら話す精神科医に私は思わず聞いた。

「ということは、幻聴という診断がついた精神疾患をもつ人間は、
本当に“神様”の詔を聞いている可能性もある、ということですか」

精神科医は、それには答えずただニコニコしていた。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

2 件中 1 件~ 2 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。