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北京ヴァイオリン みんなのレビュー
- チェン カイコー (協同脚本), シュエ シャオルー (協同脚本), 立原 えりか (著)
- 税込価格:1,100円(10pt)
- 出版社:愛育社
- 発行年月:2003.4
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紙の本
読者の心のツボを捉えた語りのすばらしさ
2004/10/15 23:19
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投稿者:まざあぐうす - この投稿者のレビュー一覧を見る
チェン・カイコー監督の映画『北京ヴァイオリン』の脚本を立原えりかさんが小説として書き下ろした作品である。
天才的なヴァイオリンの腕前を持ちながら、十三歳の少年チュンは、中国北部の田舎の村で父親のリウと貧しく暮らしていた。チュンの母親は、チュンが二歳の頃に亡くなったと聞かされている。チュンは、母親の形見であるヴァイオリンを上手に弾くようになった。ヴァイオリンの名手として、結婚の祝いに、子供の誕生日に、亡くなった人の霊を慰めるために、料理店の開店祝いに、運河に浮かべる船のためにと、村中の引っ張りだこだ。
父親のリウは、チュンに正式なヴァイオリンの教育を受けさせ一流のヴァイオリニストにしたいと願っている。そのために、料理人として村の食堂で働きながら、必死でお金を貯めていた。
二人はコンクール出場のため北京へとやって来る。惜しくも結果は、五位に終わった。しかし、息子の才能を信じて疑わないリウは、ヴァイオリンの個人授業を受けさせるため北京に移り住むことにする。
チュンは、有名ではないけれど情熱的でユニークなチアン先生や有名なヴァイオリニストを育て、自らも名誉欲の強いユイ教授との出会いを通して、ヴァイオリンのプロの世界を垣間見る。
ヴァイオリンを弾きながら、村の人々の喜ぶ姿を見るのがチュンの幸せであった。ヴァイオリニストとして成功することのみが息子の幸せと信じて、献身的に尽くす父親のリウと自分がヴァイオリンに託す思いのはざまで揺れ動くチュン。
チュンの出生の秘密も明かされた。
才能だけでなく、ヴァイオリンの練習を受ける財力と過酷な競争社会の中で勝ち抜く強さがないと一流にはなれないクラシック界。チュンが最後に選んだヴァイオリンの道は…。
リウとチュンの二人が貧しいことに悲壮感が漂わない。むしろ、貧しさがゆえに音楽が心の滋養となる村の暮らしを美しいとすら思えた。古いセーターをほどき、毛糸を足してチュンのために編み直すリウの姿に、清貧という言葉を思った。
そして、音楽というものの本質をしみじみとした思いの中で考えさせられた。難産で陣痛に苦しむ食堂のおかみさんのそばでチュンがヴァイオリンを弾き始めると、すぐに産声が上がった。
音楽とは、人間に生きる勇気を与えるものなのかもしれない。また、幸せについても…。少年であるチュンに、幸せの本質、音楽の本質を教えられたような気がしている。
父親リウの息子を思う気持ちに胸を打たれ、息子のチュンの父親への情愛に切なさを感じた。そして、チュンの音楽に対する純粋な思いに心が洗われるような思いを味わった。魅惑的な美女リリと少年リウとの心温まる関わりが、物語に色香を添えている。
読み終えて、じわじわと感動の波が心に寄せてくるのを感じる。内容もさることながら、立原えりかさんの読者の心のツボを捉えた語りのすばらしさを感じている。立原えりかさんの言葉を通して、スクリーンでは味わえない感動に浸っている。
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